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 本環境標準物質(CRM)は、ホタテ及びそれに類似したマトリックスを持つ物質中のトリブチルスズ [TBT: Sn(C4H9)3+ ]、 トリフェニルスズ [TPT: Sn(C6H5)3+ ] 及び 全スズの分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の校正に使われることを目的として、国立環境研究所(NIES)において研究開発された標準物質である。

認証値

化合物 単位 質量分率 分析方法
TBT [Sn(C4H9)3+ ] mg/kg 0.404 ± 0.027 GC-MS, LC-MS
TPT [Sn(C6H5)3+ ] mg/kg 0.0170 ± 0.0017 GC-MS, LC-MS
Sn mg/kg 0.179 ± 0.021 ICP-MS, ID-ICP-MS, INAA

GC-MS, ガスクロマトグラフ質量分析法; ICP-MS, 誘導結合プラズマ質量分析法; ID-ICP-MS, 同位体希釈誘導結合プラズマ質量分析法; INAA, 機器中性子放射化分析法; LC-MS, 液体クロマトグラフ質量分析法。
認証値に付けた不確かさは包含係数k=2の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間に相当する。
認証値はすべて乾燥重量当たりの値である。

1.認証値と参考値の決定法

 本標準物質の認証値及び参考値は、21機関から報告された分析値を用いて統計的に決定された。決定された特性値のうち、以下の基準を満たす値を認証値とした:1)特性値決定に使用された分析値を用いて算出された相対標準偏差が5 %以下;2)特性値決定に使用された分析値の数が6以上;3)特性値決定に使用された分析法の種類が2以上。認証値に付けた不確かさは包含係数k=2の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間に相当する。スズ以外の元素の特性値を参考値とした。認証値及び参考値はすべて乾燥重量当たりの値である。

参考値

元素 単位 質量分率 分析方法
Na % 0.561 ICP-AES, INAA
Mg % 0.179 ICP-AES, INAA, XRF
P % 0.956 ICP-AES, XRF
K % 1.65 ICP-AES, INAA, XRF
Fe mg/kg 10.8 ICP-AES, ICP-MS
Cu mg/kg 0.889 ICP-AES, ICP-MS
Zn mg/kg 56.1 ICP-AES, ICP-MS, INAA
As mg/kg 3.76 AS, F-AAS, HR-ICP-MS, ICP-MS, INAA, MIP-MS, XRF
Br mg/kg 43.7 INAA, XRF

AS, 吸光光度法; F-AAS, ファーネス原子吸光分析法; HR-ICP-MS, 高分解能誘導結合プラズマ質量分析法; ICP-AES, 誘導結合プラズマ発光分光分析法; ICP-MS, 誘導結合プラズマ質量分析法; INAA, 機器中性子放射化分析法; MIP-MS, マイクロ波プラズマ質量分析法; XRF, 蛍光X線分析法。
参考値はすべて乾燥重量当たりの値である。

2.形状等

 本標準物質は、真空パック詰めの凍結乾燥したホタテ貝柱粉末(20 g)である。

3.均質性

 1380パックより無作為に抽出した10パックを対象として、TBT・TPT及び多元素分析を行った。TBT・TPTの定量にはLC-MSを、多元素の定量にはICP-AESもしくはICP-MSを用いた。一元配置分散分析により算出されたそれぞれの化合物及び元素の瓶間標準偏差は1 %以下であり、併行標準偏差と比較して十分に小さかった。よって、本試料は標準物質として十分に均質であることが確認された。

4.保管及び使用上の注意事項

  1. 本物質は配布時のパックのまま冷凍(-20 ℃以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  2. 本物質は分取前にパックごと軽く振って混和させること。
  3. 本物質の1分析あたりの推奨使用量は少なくとも1 gとする。
  4. 本物質を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  5. 本物質を研究目的以外に使用しないこと。物質の廃棄の際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を遵守すること。
  6. 本物質の認証値及び参考値はすべて乾燥重量あたりで決定されている。定量の際には、成分分析用試料を分取したパックから水分含量測定用試料を分取し、85 ℃で4時間乾燥して水分含量補正を行う必要がある。なお、NIESにおいて測定した水分含量は2-5 %であった。この値は保存期間及び環境により変動するので、必ず毎分析時に上述の方法で水分含量を測定し補正すること。
  7. 本標準物質はKを1.65 %、Pを0.956 %、Naを0.561 %、Mgを0.179 %含んでいるので、分析時に留意すること。

5.有効期限

本標準物質の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として、2020年11月とする。有効期限内に特性値の変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

  • 国立環境研究所ホームページ

6.分析協力機関

 本標準物質の認証値及び参考値は、次の21機関の分析値をもとに決定された。 国立環境研究所、いであ(株)、(公大)大阪府立大学、神奈川県産業技術センター、(株)カネカテクノリサーチ、(株)環境管理センター、(株)環境研究センター、グリーンブルー(株)、(国)群馬大学、(株)島津テクノリサーチ、千葉工業大学、(国)東京大学、東京都市大学、(地独)東京都立産業技術研究センター、(株)ニッテクリサーチ、日本原子力研究所、(財)日本食品分析センター、日本電信電話(株)、三浦工業(株)、ムラタ計測器サービス(株)、(株)リガク

7.参考文献

 Analysis of triorganotin compounds in water samples by hydrophilic interaction liquid chromatography-electrospray ionization-mass spectrometry

 Journal of Chromatography A, 1217(2010)4344-4346

 Tomoharu Sano, Hiroo Takagi, Kimiyo Nagano, Masataka Nishikawa