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 本環境標準物質は、環境省告示第19号(平成15年3月)に準拠した1 mol/L塩酸溶出法による土壌中の多元素含有量分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の妥当性確認に使うことを目的として研究開発され、国立研究開発法人国立環境研究所において作製された認証標準物質(CRM, Certified Reference Material)である。本標準物質は、1瓶30 g入り2本一組となっている。

1. 認証値と参考値の決定法

 本標準物質の認証値および参考値は、7機関(10ラボ)から報告された分析値を用いて統計的に決定された。決定された特性値のうち以下の基準を満たす値を認証値とした、1)特性値決定に使用された分析値を用いて算出された相対標準偏差が10 %未満、2)特性値決定に使用された分析値の数が8以上、3)特性値決定に使用された分析法の種類が3以上。認証値に付けた不確かさは包含係数 k=2 の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間の半分の幅に相当する。参考値は、国立環境研究所の認証値の基準を満たさなかったため認証値としては取り扱わないが、認証値と同様に本標準物質の特性を表した値である。認証値および参考値はすべて受け取ったままの状態 ”as received” で決定されている。

認証値(1 mol/L HCl 溶出分析)

認証値、不確かさは質量分率で表されています。

元素 単位 認証値 不確かさ 分析方法
Al % 0.207 0.019 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Cd mg/kg 0.240 0.036 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Cr mg/kg 1.65 0.29 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Co mg/kg 2.77 0.26 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Cu mg/kg 59.3 4.1 AAS, ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Pb mg/kg 37.1 4.4 AAS, ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Mn mg/kg 193 28 AAS, ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Ni mg/kg 2.15 0.31 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
V mg/kg 4.80 0.58 ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
Zn mg/kg 85.7 8.3 AAS, ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
 Crは六価クロムではなく全クロムの値である。
 AAS: 原子吸光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法
 ICP-MS/MS: 誘導結合プラズマタンデム質量分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法

参考値(1 mol/L HCl 溶出分析)

参考値は質量分率で表されています。

元素 単位 参考値 分析方法
Fe % 0.18 AAS, ICP-MS, ICP-MS/MS, ICP-OES
As mg/kg 1.3 ICP-MS/MS, HG-AAS, HG-ICP-OES
Hg mg/kg 0.089 CVAAS, ICP-MS/MS
 AAS: 原子吸光分析法, CVAAS: 還元気化原子吸光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法
 ICP-MS/MS: 誘導結合プラズマタンデム質量分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法
 HG-AAS: 水素化物発生原子吸光分析法, HG-ICP-OES: 水素化物発生ICP-OES

2. 形状等

 本物質は、褐色瓶に入ったベージュ色微粉末の物質である。

3. 原料および作製法

1998年に国内で採取した埋立覆土を天日乾燥し一次原料とした。篩分操作(106 µm)後、回転ブレンダーによる均質化を行い、二次原料を得た。二次原料を褐色瓶404本に30 gずつ瓶詰めした後、60Co照射(21 kGy)による滅菌処理を施した。一連の作業はISO Guide 34に準拠して行われた。

4. 均質性

 本標準物質全瓶より層別ランダム抽出を行い、環境省告示第19号(平成15年3月)に準拠した1 mol/L塩酸溶出法による均質性評価を行った。一元配置分散分析により算出された瓶間標準偏差は1 %以下であり併行標準偏差と比較して十分に小さく、標準物質として均質であることが確認された。

5. 保管及び使用上の注意事項

  1. 瓶開封の際は汚染に注意し、開封後はできるだけ速やかに使用することが望ましい。
  2. 本物質は配布時の瓶のままデシケーター内で室温(30 ℃以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  3. 本物質は分取前に瓶を軽く振って混和させること。
  4. 本物質の1溶出分析あたりの最小使用量は、環境省告示第19号(平成15年3月)に準拠して、6 gとする。
  5. 本物質を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  6. 本物質を研究目的以外に使用しないこと。物質の廃棄の際は、廃棄物の処理および清掃に関する法律を遵守すること。
  7. 本物質の認証値及び参考値はすべて受け取ったままの状態 ”as received” で決定されている。国立環境研究所において105 ℃、4時間の乾燥条件下での平均水分含量は約1 %であった。
  8. ヒ素をICP-MSで測定する場合は、ネオジム、サマリウムの干渉に注意すること。

6. 有効期限

 本標準物質の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として2029年1月とする。有効期限内に特性値の変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

7. 分析協力機関

 本標準物質の認証値および参考値は、次の7機関の分析値をもとに決定された。
 国立研究開発法人国立環境研究所、いであ(株)、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所、 (株)環境管理センター、東京理科大学、日鉄住金テクノロジー(株)、ムラタ計測器サービス(株)

付録

 本標準物質の使用に当たり有益な情報を付録として提供する。なお、ここに示す値は認証値ではない。

付録 元素含有量(全分解法)
含有量は質量分率で表されている。

元素 単位 含有量 分析方法
Al % 8.3 XRF, ICP-OES
Fe % 2.2 XRF, ICP-MS, ICP-OES
Mn % 0.037 XRF, ICP-MS, ICP-OES
Zn % 0.019 ICP-MS, ICP-OES
As mg/kg 6.9 HG-AAS, HG-ICP-OES, ICP-MS/MS
Cd mg/kg 0.34 ICP-MS
Cr mg/kg 21 ICP-MS, ICP-OES
Co mg/kg 6.0 ICP-MS
Cu mg/kg 87 ICP-MS, ICP-OES
Pb mg/kg 53 ICP-MS, ICP-OES
Hg mg/kg 0.31 AFS, CVAAS, thermal decomposition-AAS
Ni mg/kg 8.7 ICP-MS
V mg/kg 45 ICP-MS, ICP-OES
 含有量は3機関からの報告値をもとに算出した値である。
 AFS: 原子蛍光分析法, CVAAS: 還元気化原子吸光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法
 ICP-MS/MS: 誘導結合プラズマタンデム質量分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法
 HG-AAS: 水素化物発生原子吸光分析法, HG-ICP-OES: 水素化物発生ICP-OES
 thermal decomposition-AAS: 加熱気化原子吸光分析法, XRF: 蛍光X線分析法