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 本環境標準物質は、国立環境研究所において作製された認証標準物質(CRM, Certified Reference Material)である。NIES CRM No.2池底質の後継CRMとして湖、河川底質中の多元素分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の妥当性確認に使うことを目的として研究開発された。
全分解法による認証値、参考値に加え、環境省水・大気環境局が定める「底質調査方法」(平成24年8月)に基づく湿式分解法による認証値、参考値も与えられている。

1.認証値と参考値の決定法

 本標準物質の認証値および参考値は、13機関(20ラボ)から報告された分析値を用いて統計的に決定された。決定された特性値のうち以下の基準を満たす値を認証値とした、1)特性値決定に使用された分析値を用いて算出された相対標準偏差が10 % 未満、2)特性値決定に使用された分析値の数が10以上、3)特性値決定に使用された分析法の種類が2以上。認証値に付けた不確かさは包含係数k =2の拡張不確かさであり、95 % の信頼区間に相当する。参考値は、国立環境研究所の認証値の基準を満たさなかったため認証値としては取り扱わないが、認証値と同様に本標準物質の特性を表した値である。認証値および参考値はすべて乾燥重量あたりである。

2.形状等

本物質は、暗い灰黄色微粉末の物質である。

NIES CRM No.31湖底質の認証値(全分解法)

元素 質量分率 分析方法
単位 認証値 不確かさ
Na % 0.882 0.063 AAS, ICP-OES, INAA, XRF
Al % 9.17 0.86 AAS, ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
Ca % 1.25 0.12 ICP-OES, ICP-MS, XRF
Ti % 0.442 0.044 ICP-OES, ICP-MS, XRF
Fe % 5.38 0.55 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
P mg/kg 925 60 AAS, ICP-OES, XRF 
V mg/kg 154 11 ICP-OES, ICP-MS, INAA
Cr mg/kg 43.3 3.0 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
Mn mg/kg 978 92 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
Ni mg/kg 25.3 2.8 ICP-OES, ICP-MS
Cu mg/kg 53.1 4.6 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
Zn mg/kg 121 13 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF 
Pb mg/kg 25.1 2.5  ICP-OES, ICP-MS

AAS: 原子吸光分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法, ID-ICP-MS: 同位体希釈-誘導結合プラズマ質量分析法, INAA: 機器的中性子放射化分析法, XRF: 蛍光X線分析法

NIES CRM No.31湖底質の参考値(全分解法)

元素 質量分率 分析方法
単位 参考値 不確かさ
Mg % 0.836 0.068 AAS, ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
K % 0.991 0.134 AAS, ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
Sc mg/kg 19.1  3.4 ICP-OES, ICP-MS, INAA
Co mg/kg 18.1  1.9 ICP-OES, ICP-MS, INAA
As mg/kg 13.9  1.5 ICP-MS, INAA
Sr mg/kg 125  14 ICP-OES, ICP-MS, XRF
Ba mg/kg 338  49 ICP-OES, ICP-MS, INAA, XRF
La mg/kg 20.4  2.2 ICP-OES, ICP-MS, INAA
Cd mg/kg 0.342  0.043 ICP-MS, ID-ICP-MS

NIES CRM No.31湖底質の認証値(底質調査方法による湿式分解法)

元素 質量分率 分析方法
単位 認証値 不確かさ
V mg/kg 133 23 ICP-OES, ICP-MS
Mn mg/kg 881 85 AAS, ICP-OES, ICP-MS
Ni mg/kg 22.2 2.3 ICP-OES, ICP-MS
Cu mg/kg 50.6 8.1 ICP-OES, ICP-MS
Zn mg/kg 110 13 AAS, ICP-OES, ICP-MS
Pb mg/kg 22.0 3.0 ICP-OES, ICP-MS

AAS: 原子吸光分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法

NIES CRM No.31湖底質の参考値(底質調査方法による湿式分解法)

元素 質量分率 分析方法
単位 参考値 不確かさ
Cr mg/kg 33.7 6.1 ICP-OES, ICP-MS
Cd mg/kg 0.285 0.067 ICP-OES, ICP-MS

3.原料および作製法

 本標準物質の原料は、1999年2月に茨城県霞ヶ浦で採取した湖底質である。採取した原料を国立環境研究所内で天日乾燥させたのちブロック状の塊となった原料を機械的に破砕した。ステンレス製篩(目開き2 mm)による篩分操作を行い、二次原料を得た。二次原料を105 ℃で一昼夜乾燥したのちアルミナボールミルで微粉砕し、ステンレス製篩(目開き212 µm)、さらにステンレス製篩(目開き75 µm)による篩分操作を行い、12.2 kgの最終原料を得た。最終原料はV字型混合器で均質化し、560本の褐色瓶に20 g ずつ詰められた後、60Co照射(20 kGy)による滅菌処理が施された。一連の作業はISO GUIDE 34に準拠して行われた。

4.均質性

 560本の瓶より 10本を層別ランダム抽出し、XRF法による多元素分析を行った。一元配置分散分析により算出されたそれぞれの元素の瓶間標準偏差は1 % 以下であり併行標準偏差と比較して十分に小さく、標準物質として均質であることが確認された。

5.保管及び使用上の注意事項

  1. 瓶開封の際は汚染に注意し、開封後はできるだけ速やかに使用することが望ましい。
  2. 本物質は配布時の瓶のままデシケーター内で室温(30 ℃ 以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  3. 物質は分取前に瓶を軽く振って混和させること。
  4. 本物質の1分析あたりの使用量は0.05 g 以上が望ましい。
  5. 本物質を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  6. 本物質を研究目的以外に使用しないこと。物質の廃棄の際は、廃棄物の処理および清掃に関する法 律を遵守すること。
  7. 本物質の認証値及び参考値はすべて乾燥重量あたりで決定されている。定量の際には、成分分析用試料を分取した瓶から水分含量測定用試料も分取する。国立環境研究所において105 ℃、4時間乾燥条件下で測定した水分含量は1 %未満であった。水分含量は保存条件により変動するので、必ず毎分析時に測定し補正すること。

6.有効期限

 本標準物質の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として2024年12月とする。有効期限内に特性値の変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

7.分析協力機関

 本標準物質の認証値および参考値は、次の13機関の分析値をもとに決定された。
国立環境研究所、いであ(株)、神奈川県産業技術センター、(株)環境管理センター、(株)環境研究センター、 (株)島津テクノリサーチ、中国原子能科学研究院、Elemental Analysis, Inc.、内藤環境管理(株)、(株)日鉄住金テクノロジー、(一般財団法人)日本環境衛生センター、(一般財団法人)日本食品分析センター、ムラタ計測器サービス(株)

付録

付録 図1 NIES CRM No. 31 「底質調査方法」(平成24年8月、pp115-118)に基づく湿式分解法の
                要約を以下に示す。


付録 表1 NIES CRM No. 31 湖底質中の炭素、窒素、ケイ素、硫黄の分析値

元素 単位 質量分率 分析方法
C % 3.22 EA
N % 0.373 EA
Si % 25.1 Gravimetry, XRF
S % 0.391 ICP-OES

EA: 元素分析法, XRF: 蛍光X線分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法