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 本環境標準物質は、ブルーギル(Lepomis macrochirus)およびそれに類似したマトリックスを持つ物質中のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の妥当性確認に使うことを目的として国立研究開発法人国立環境研究所において研究開発された認証標準物質(CRM, Certified Reference Material)である。

1. 認証値の決定法

 本標準物質の認証値は、9機関から報告された分析値を用いて統計的に決定された以下の基準を満たす特性値である、1)特性値決定に使用された分析値を用いて算出された相対標準偏差が10 %未満、2)特性値決定に使用された分析値の数が8以上、3)特性値決定に使用された分析法の種類が2以上。認証値に付けた不確かさは包含係数 k=2 の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間に相当する。認証値は乾燥重量当たりの値である。

2. 参考値の決定法

 7機関から報告された分析値についてロバスト法でZスコアが2以上のものは棄却した。参考値は棄却後の平均値である。参考値はすべて乾燥重量当たりの値である。

NIES CRM No.32ブルーギルの認証値

化合物 質量分率 分析方法
単位 認証値 不確かさ
PFOS ng/g 43.9 5.6 LC-MS, LC-MS/MS
 LC-MS: 液体クロマトグラフ質量分析法, LC-MS/MS: 液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析法

NIES CRM No.32ブルーギルの参考値

元素 質量分率 分析方法
単位 参考値
Mg % 0.139 AAS, ICP-OES
P % 0.875 ICP-OES, モリブデン青吸光光度分析法
Ca % 0.106 ICP-OES
Mn mg/kg 0.881 ICP-MS, ICP-OES
Fe mg/kg 9.69 ICP-MS, ICP-OES
Cu mg/kg 1.06 ICP-MS, ICP-OES
Zn mg/kg 29.3 ICP-MS, ICP-OES
As mg/kg 0.563 ICP-MS
Se mg/kg 1.79 ICP-MS
Hg mg/kg 0.161 CVAAS, 加熱気化-金アマルガム-AAS
 AAS: 原子吸光分析法, CVAAS: 還元気化原子吸光法,
 ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法, ICP-OES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法

3. 形状等

 本物質は、黄土色の粉体である。

4. 原料および作製法

 本標準物質の原料は、2011年11月から2012年2月に琵琶湖で採取したブルーギルである。採取した200 kgのブルーギルの身の部分46 kgを国立環境研究所において、ホモジナイズ後、凍結乾燥し約8 kgの魚肉試料を得た。その試料をボールミルで粉砕し、106 µmのフルイにかけ、回転ブレンダーによる均質化を行い3.8 kg の最終原料を得た。その最終原料を597 本のガラス瓶に5 gずつ詰めた後、60Co照射(20 kGy)による滅菌処理を施した。一連の作業はPFOS汚染に細心の注意を払い ISO GUIDE 34 に準拠して行われた。

5. 均質性

 597本の瓶より10本を層別ランダム抽出し、PFOSの分析を行った。一元配置分散分析により算出されたPFOSの瓶間標準偏差は1 %以下であり併行標準偏差と比較して十分に小さく、標準物質として均質であることが確認された。

6. 保管及び使用上の注意事項

  1. 瓶開封の際は汚染に注意し、開封後はできるだけ速やかに使用することが望ましい。
  2. 本物質は配布時の瓶のまま冷凍(-20 ºC以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  3. 本物質は分取前に室温にもどし、瓶を軽く振って混和させること。
  4. 本物質の1分析あたりの使用量は0.2 g以上が望ましい。
  5. 本物質を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  6. 本物質を研究目的以外に使用しないこと。物質の廃棄の際は、廃棄物の処理および清掃に関する法律を遵守すること。
  7. 本物質の認証値および参考値はすべて乾燥重量当たりで決定されている。定量の際には、成分分析用試料を分取した瓶から水分含量測定用試料も分取する。国立環境研究所において85 ºC、4時間の乾燥条件下での平均水分含量は4 %( n=20)であった。水分含量は保存条件により変動するので、必ず毎分析時に測定し補正すること。

7. 有効期限

 本標準物質の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として2026年3月とする。有効期限内に特性値の変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

8. 分析協力機関

 本標準物質の認証値および参考値は、次の11機関の分析値をもとに決定された。
 国立研究開発法人国立環境研究所、いであ(株)、(株)カネカテクノリサーチ、(株)島津テクノリサーチ、(株)環境管理センター、(株)静環検査センター、東京大学、日鉄住金テクノロジー(株)、日本食品分析センター、公益財団法人ひょうご環境創造協会、ムラタ計測器サービス(株)

9. 作製協力機関

 原料採取および解体作業は、滋賀県漁業協同組合連合会と霞ヶ浦漁業協同組合の協力によって行われた。

付録

 本標準物質の使用に当たり有益な情報を付録として提供する。なお、ここに示す値は認証値ではない。

付録 表1 NIES CRM No.32のペルフルオロ化合物の含有量範囲

化合物 質量分率 分析方法
単位 含有量範囲
PFNA ng/g 1.19  -  2.04  LC-MS/MS
PFDA ng/g 12.3  -  15.3  LC-MS/MS
PFuDA ng/g 16.9  -  21.7  LC-MS/MS
PFdDA ng/g 7.1  -  12.6  LC-MS/MS
 5機関からの報告値をもとに算出した、乾燥重量あたりの含有量範囲を示す。

付録 図1 NIES CRM No.32のLC-MS/MSクロマトグラム例
 カラム: Ascentis Express C18  2.1 x 150 mm 5 µm,
 溶媒: 10 - 95 %アセトニトリル in 10 mM酢酸アンモニウム,
 流速: 0.3 mL / min, 温度: 50 ºC
 
 
 PFOA: ペルフルオロオクタン酸
 PFNA: ペルフルオロノナン酸
 PFDA: ペルフルオロデカン酸
 PFuDA: ペルフルオロウンデカン酸
 PFdDA: ペルフルオロドデカン酸
 PFTrDA: ペルフルオロトリデカン酸