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 本環境標準試料は、大気粉塵中の多元素分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の校正に使われることを目的として、国立環境研究所(NIES)において研究開発された標準物質である。

1.原料および作製法

 本環境標準試料の原料は1996年から2005年の10年間に北京市中心部のビルの換気フィルターに捕集された大気粉塵である。換気フィルターに機械的振動を与えることにより、3 kgの粉塵を得た。得られた粉塵を32 μmの篩にかけた後、均質化し、2 kgの試料を得た。その試料を1.5 g ずつ洗浄済みの褐色ガラス瓶1031本に詰め、Co-60照射(2.5 Mrad)による減菌処理を施した。本環境標準試料はISO GUIDE 34に準拠して作製された。

2.均質性

 全瓶より無作為に抽出した12瓶を対象として多元素分析を行った。元素成分の定量にはICP-AESを用いた。それぞれの元素の瓶間標準偏差は3 %以下であり、本試料は標準物質として十分に均質であることが確認された。

3.安定性

 瓶詰め後1年にわたる安定性試験の結果、試料中の各元素濃度の変動に有意な傾向は認められなかった。

4.認証値及び参考値

 17機関から報告された分析値を用い、少なくとも2種類の分析法による分析値が得られた元素に対して、ISO GUIDE 35に則して、認証値を決定した(表1)。認証値に付けた不確かさは包含係数k=2の拡張不確かさであり、95%の信頼区間に相当する。分析値数が3-9個であった元素や、各機関の分析値の平均値の相対標準偏差が6-10%であった元素については、参考値を与えた(表2)。認証値及び参考値はすべて受け取ったままの状態”as received”で決定されている。

表1 NIES CRM No. 28 都市大気粉塵の認証値

元素 単位 質量分率 分析方法
Na % 0.796 ± 0.065 AAS, ICP-AES, INAA, XRF
Mg % 1.40 ± 0.06 ICP-AES, ICP-MS, XRF
Al % 5.04 ± 0.10 ICP-AES, ICP-MS, INAA, XRF
K % 1.37 ± 0.06 AAS, ICP-AES, XRF
Ca % 6.69 ± 0.24 ICP-AES, ICP-MS, INAA, XRF
Ti % 0.292 ± 0.033 ICP-AES, ICP-MS, INAA, PIXE, XRF
Fe % 2.92 ± 0.17 ICP-AES, ICP-MS, INAA, XRF
Zn % 0.114 ± 0.010 ICP-AES, ICP-MS, INAA, PIXE, XRF
 
V mg/kg 73.2 ± 7.0 ICP-AES, ICP-MS, INAA
Mn mg/kg 686 ± 42 ICP-AES, ICP-MS, INAA, PIXE, XRF
Ni mg/kg 63.8 ± 3.4 AAS, ICP-AES, ICP-MS
Cu mg/kg 104 ± 12 ICP-AES, ICP-MS, PIXE, XRF
As mg/kg 90.2 ± 10.7 HG-AAS, HG-ICP-AES, ICP-AES, ICP-MS, INAA, XRF
Sr mg/kg 469 ± 16 ICP-AES, ICP-MS, XRF
Cd mg/kg 5.60 ± 0.43 ICP-AES, ICP-MS
Ba mg/kg 874 ± 65 ICP-AES, ICP-MS, INAA
Pb mg/kg 403 ± 32 ICP-AES, ICP-MS, XRF
U mg/kg 4.33 ± 0.26 ICP-MS, INAA

AAS:原子吸光分析法
HG-AAS:水素化物発生原子吸光法
HG-ICP-AES:水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光法
ICP-AES: 誘導結合プラズマ発光分析法
ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法
INAA: 機器中性子放射化分析法
PIXE: 粒子線励起X 線分光法
XRF: 蛍光X線分析法

表2 NIES CRM No. 28 都市大気粉塵の参考値

元素 単位 質量分率 分析方法
Si % 14.9 Gravimetry, PIXE, XRF
P % 0.145 ICP-AES, XRF
S % 3.91 ICP-AES, PIXE
Cl % 0.807 INAA, PIXE
 
Be mg/kg 5.09 ICP-AES, ICP-MS
Sc mg/kg 10.7 ICP-AES, INAA
Cr mg/kg 65.6 ICP-AES, ICP-MS, INAA, PIXE
Co mg/kg 22.0 ICP-AES, ICP-MS, INAA
Se mg/kg 14.4 HG-AAS, HR-ICP-MS, ICP-AES, ICP-MS, INAA
Rb mg/kg 64.1 ICP-MS, INAA, XRF
Y mg/kg 21.9 ICP-AES, ICP-MS
Mo mg/kg 28.4 ICP-AES, ICP-MS, INAA
Sn mg/kg 21.5 ICP-MS
Sb mg/kg 20.1 HG-ICP-AES, ICP-MS, INAA
La mg/kg 32.7 ICP-AES, ICP-MS, INAA
Th mg/kg 11.1 ICP-MS, INAA

HG-AAS: 水素化物発生原子吸光法
HG-ICP-AES:水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光法
HR-ICP-MS: 高分解能誘導結合プラズマ質量分析法
ICP-AES: 誘導結合プラズマ発光分析法
ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法
INAA:機器中性子放射化分析法
PIXE: 粒子線励起X 線分光法
XRF: 蛍光X線分析法

5.保管及び分析上の注意

  1. 本試料は配布時の瓶のままデシケーター内で室温(30℃以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  2. 本試料は分取前に瓶ごと軽く振って混和させること。
  3. 本試料の1分析あたりの使用量は、少なくとも0.02 gであることが望ましい。
  4. 本試料を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  5. 本試料を研究目的以外に使用しないこと。試料の廃棄の際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を遵守すること。

6.有効期限

 本環境標準試料の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として、2018年1月とする。有効期限内に元素含有量に変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

  • 国立環境研究所ホームページ

7.分析協力機関

 本環境標準試料の認証値及び参考値は、次の17機関の分析値をもとに決定された。 国立環境研究所、静岡県立大学、武蔵工業大学、Norwegian University of Science and Technology、University of Sheffield、中国原子能科学研究院、(株)環境管理センター、(株)島津テクノリサーチ、(株)住化分析センター、(株)地球科学研究所、(株)ニッテクリサーチ、グリーンブルー(株)、国土環境(現:いであ)(株)、(財)日本分析センター、内藤環境管理(株)、(財)日本環境衛生センター、ムラタ計測器サービス(株)

8.作製協力機関

 中国国家環境保護総局標準様品研究所、国際協力機構(JICA)日中友好環境保全センタープロジェクトフェーズⅢJICA専門家チーム

9.参考文献

1 Development and certification of the new NIES CRM 28: urban aerosols for the determination of multielements
Anal. Bioanal. Chem., 391: 1997-2003 (2008)
Ikuko Mori, Zijie Sun, Miyuki Ukachi, Kimiyo Nagano, Cameron W.McLead, Alan G. Cox, Masataka Nishikawa

付 録

本標準試料の使用にあたり有益な情報を付録として提供する。なお、ここに示す値は認証値ではない。

付録図表