(別表3) 環境研究の基盤整備
1.地球環境の戦略的モニタリングの実施、地球環境データベースの整備、地球環境研究支援
地球環境研究の基盤整備に資するため、人工衛星を利用した温室効果ガスの観測を含む戦略的かつ先端的な地球環境モニタリング事業を実施するとともに、これらにより収集される観測データ等を、地球環境研究に係わるデータベースとして整備、広く提供・発信する。また、国内外における連携による統合的・効率的な地球環境研究の推進を支援する。更に、研究者の相互理解促進、研究情報・成果の流通、地球環境問題に対する国民的理解向上のための研究成果の普及を図る。
具体的には、シベリア域を含む極東アジアやオセアニア、太平洋での大気・海洋における温室効果ガス等濃度、海洋及び陸域生態系における二酸化炭素フラックスのモニタリングに加え、衛星利用による温室効果ガス濃度の分布等のモニタリングを実施する。また気候変動による生態系への影響を、高山帯植生やサンゴの移動などによりモニタリングする。これらの成果をデータベース化し、広く提供・発信を行うための基盤を整備・拡充する。さらに地上観測及び衛星利用の二酸化炭素濃度データに基づく全球の地域別二酸化炭素収支プロダクトの一般ユーザへの発信を開始する。また、グローバルカーボンプロジェクト、アジアフラックスを始めとする国内外の研究プログラムや研究ネットワークに積極的に参画し、スーパーコンピュータ利用支援なども含め地球環境研究の中核的拠点としての機能を果たす。さらに、各種媒体を通じて気候政策にかかる基盤的情報の提供を行うとともに、研究成果の普及を促進する。
2.資源循環・廃棄物に係る情報研究基盤の戦略的整備
5年、10年といった中長期視点から戦略的に構築する必要があると考えられる我が国やアジア圏における資源循環・廃棄物研究の情報基盤の内容を議論し、今後数年の方向性を見定める。また、国際資源フロー、廃棄物処理時系列データ、アジア廃棄物データ、物質管理方策データなどの情報集積を進め、優先順位の高いデータベースについて、コンテンツの構成等の設計を行う。
3.生態影響試験に関する標準機関(レファレンス・ラボラトリー)、環境リスクに関する化学物質データベース
生態影響試験に関する標準機関(レファレンス・ラボラトリー)としての機能を整備し、生態影響試験法の精度管理を検討するほか、試験用水生生物の維持と提供を行う。特に、法規制上位置付けられている試験用生物(メダカ、ミジンコ、ユスリカ等)については、効率的な飼育体制を整備し、試験機関への提供を行う。必要に応じてクロスチェック等の試験結果の比較を行い、標準試験法の整備を行う。
また、化学物質の環境リスク評価の推進に向けた基盤整備のため、環境リスクに関する最新の研究動向や社会情勢を踏まえて、関係機関等と連携し、環境リスクに着目した化学物質に関するデータベース等を構築し提供するために必要な更新を行う。
4.「子どもの健康と環境に関する全国調査」の総括的な管理・運営
「子どもの健康と環境に関する全国調査」は、環境省の作成する基本計画に基づく全国規模の新規出生コホート調査であり、国環研は、研究実施の中心機関であるコアセンターとして、調査の総括的な管理・運営を行う。
平成24年度においては、前年度に引き続き参加者の募集、データ及び生体試料等の集積・保管業務を行うとともに、出生した子どもについて質問票等による追跡調査を行う。これらの調査を適切に実施するために、調査対象者とのコミュニケーション、広報活動などを進める。
5.環境標準物質及び分析用標準物質の作製、並びに環境測定等に関する標準機関(レファレンス・ラボラトリー)
環境標準物質の頒布状況などの解析から、カドミウム汚染玄米が最も早急に整備すべき試料であることが明らかとなりその完成を目指すほか、PFORSを対象とした標準物質の作製計画をまとめる。また、一般環境大気質成分を対象とした常時監視測定法の精度管理に資する知的基盤業務を推進する。
6.環境試料の長期保存(スペシメンバンキング)
引き続き、タイムカプセル事業との継続性に配慮しつつ、東日本大震災の環境影響実態解明への貢献も視野にいれて、沿岸汚染の監視のための二枚貝試料の収集保存等を継続する。また、先導プログラムとも連携しつつ保存試料からの環境情報読み出し計測手法に関する研究とともに、実試料の分析も推進する。
7.環境微生物及び絶滅危惧藻類の収集・系統保存・提供
環境微生物保存株及び絶滅危惧藻類について、その収集・保存・管理・提供と株情報の整備を行う。また環境研究に資する重要株やタイプ株等の寄託を受入れるとともに、以下に取り組む。
① 凍結保存が困難とされてきたハプト藻や珪藻等の保存株を対象として、生存率向上のための条件検討と生存検査の精度向上に取り組み、10株を凍結保存に移行する。
② 環境省レッドデータブックで絶滅危惧I類に指定されている淡水産紅藻シマチスジノリを対象として、凍結保存条件の検討を行い、凍結保存に移行する(10株)。
③ 有毒性シアノバクテリアCylindrospermopsis raciborskiiを対象として、種の識別が可能なDNAバーコーディング情報を整備する。
④ 前年度に新たに受け入れた42株の環境微生物保存株について、顕微鏡画像やDNA情報等の付加情報の収集を行い、データベースへの登録、ウェブ上への公開を順次進める。
8.絶滅の危機に瀕する野生生物種の細胞・遺伝子保存
絶滅の危機に瀕する鳥類等の体細胞、生殖細胞及び遺伝子の長期保存について以下を行う。
① 種の保存法により保護増殖事業計画が策定されている鳥類14種のなかで試料収集を実施していないアホウドリ、イヌワシ、オオトラツグミおよびエトピリカについて試料収集を開始する。
② 種の保存法により保護増殖事業計画が策定されている哺乳類4種のなかで試料収集体制が構築出来ていないイリオモテヤマネコについて試料収集体制構築に向けた情報収集を行う。 アジア地域に分布している絶滅危惧種の中で特に緊急性の高い種(アジア地域に分布するサイ、オラウータン、コウノトリ等)について現地研究者と連携して試料収集を行う。
③ ヤンバルクイナの全ゲノム解析をすすめ、2,000遺伝子について塩基配列を決定する。
④ 大規模地震等が発生した場合に保存試料損失を防ぐため、関連機関(環境省・生物多様性センター、各地の環境省・野生生物保護センター等)と連携した試料の分散保存を開始する。
9.生物多様性・生態系情報の基盤整備
生物多様性や生態系の評価・予測・保全・再生に向けた情報基盤整備を推進するため、以下を行う。
① 霞ヶ浦データベースについては、データの更新作業を行うとともに、英語版のウェブサイトを整備する。摩周湖の長期観測データについて、データベースの作成に着手する。
② 侵入生物データベースについては、外来生物法で指定される特定外来生物および要注意外来生物全種の情報を整備・拡充する。また、外来生物関連情報を掲載した国内外のウェブ上情報源データベースおよび最新報道情報データベースを構築して公開する。さらに環境省の外来生物法見直しにともなう「ブラックリスト(重点対策指定種)」作成のための情報整備を実施し、データベース化を進める。
③ 国立環境研究所で保存している野生生物種の細胞と絶滅危惧藻類について、データを整備し、検索閲覧システムの作成に着手する。
④ 生物分布の推定や多様性の評価に使うための土地利用データベースの整備に着手する。
⑤ 造礁サンゴ分布データベースを構築するため、報告書や論文等から日本の造礁サンゴ分布の情報収集を開始する。
10.地域環境変動の長期モニタリングの実施、共同観測拠点の基盤整備
東アジアの大気環境変動を長期的な視点で監視・観測するために、沖縄辺戸・長崎福江において粒子状物質などの長期的な大気質モニタリングを行う。
