(別表4) 基盤的な調査・研究
(1)全球水資源モデルとの統合を目的とした水需要モデル及び貿易モデルの開発と長期シナリオ分析への適用
将来の世界の水需給の逼迫等を統合的に分析し、人間の経済活動と自然の水利用の競合を全球規模で評価したりするための基盤ツールとなる全球水資源モデル(自然の水循環と人間の水利用を統合的に扱うことのできるモデル)を改良・拡張することを目的としている。平成22年度は、部門別の工業用水需要モデル、生活用水需要予測モデル、農作物別の国際貿易モデルを開発する。
(2)気候変動緩和・適応型社会に向けた地域内人口分布シナリオの構築に関する研究
経済状況や地域性、施策等が人口移動率に及ぼした影響を分析し、将来移動率の設定可能な幅とそのための施策を明らかにする。また、中長期的な温暖化への対応を適用例として、地域内人口分布を反映したCO2排出量と温暖化影響を推計するモデルを開発・適用する。これらを踏まえて、実現可能性が高く気候変動の緩和・適応の観点から望ましい人口分布シナリオを構築する。平成22年度は、(1)過去の国勢調査メッシュデータの整理と、コホート要因法を用いた移動率の算出、(2)メッシュサイズでの再生可能エネルギーポテンシャルデータの整備と人口分布に基づく評価モデルの開発を行う。
(3)「多次元分離分析法による有機ハロゲン系化合物等の微量有機汚染物質の網羅分析」
化学物質による環境汚染の広がりに対応するために、有機ハロゲン系化合物等を高精細に分離しながら網羅的かつ選択的に検出することで物質の検索と同定を容易にする方法と、選択した物質を一斉に高感度・高精度・迅速に定量する方法を開発する。
高精細な分離には極めて高い分離能が得られるGCxGC法を、網羅的かつ選択的高感度検出には最新鋭のMS/MSとHRTOFMSを用い、これらを組合わせた世界最先端・最高の次世代分析を開拓する。
平成22年度は、高濃度に有機ハロゲン化合物が含有される可能性のある試料(底質,汚染土壌,生物など)を選定し,その粗抽出液(あるいは簡単な前処理液)について,GCxGC-MS/MSによるニュートラルロススキャンにより,フッ素,塩素,臭素化合物をそれぞれ測定すると同時に,物質の検索を実施する。また,環境試料を前年度にMRM法により既知物質(ダイオキシン類やその他のPOPs類,PAH類など)を一斉定量し,開発した手法の適用範囲について検討し,その改良を続ける。
(4)人工組織ナノデバイスセンサー複合体を活用した多角的健康影響評価システムの開発
これまで、①人工の擬似マトリックスを開発することで、細胞接着性を欠くセンサー上でも人工組織の構築を可能にし、②細胞培養液に浸した状態でもナノ構造体センサーが安定動作できる絶縁技術を達成することで、人工組織とこの組織が発信する信号を検出するセンサーとが機能的に繋がったチップ(バイオナノ協調体)を創製する研究を行った。このチップの開発により、環境汚染物質で組織傷害が顕在化する様子を、オンタイムで連続測定できるようになった。今後は、バイオアッセイに適用すべく、a)バイオナノ協調体の信頼性を増すために構造を再検討し、b)バイオナノ協調体を装着する微小流体デバイス及び周辺機器とのシステム統合を図り、c)実用化レベルにブラッシュアップすることで、動物実験系を一部代替でき、既存・新規を問わず広範な環境化学物質の毒性を、多角的に評価できるシステムを構築する。
(5)胚様体を用いた発生分化毒性学に最適化したマトリックスの開発
マウス及びヒトES細胞から作製した胚様体を、神経及び血管内皮細胞に、効率良く分化誘導、機能成熟させるための細胞外マトリックスを開発する。この際、胚様体から遊走する細胞の分化誘導過程が毒性研究に応用出来る様に、マトリックスを設計する。
(6)熱中症予防情報提供業務
平成21年度に実施した、①熱中症関連ホームページの統一と充実(英語ホームページの作成)、②気象予報情報を用いる熱中症の予防情報(WBGT(湿球黒球温度)の推定値)の提供、③その基となる気象予報情報からWBGTの推定方法の精度向上を図るための検討、④気象庁の協力を得た、WBGT観測機器の設置と連続観測、⑤ホームページよりモニタリングデータのリアルタイム公開を行うためのシステム、のさらなる充実を図る。
(7)オゾン層変動の再現性と将来予測精度の評価に関する研究
国際的なオゾン層の科学アセスメントに対応したオゾン層の長期変動予測の数値実験を進めると共に、オゾン層の変化と対流圏気候の変化との間の相互作用を理解するための数値モデルの改良にも取り組む。過去から将来にわたる150年間程度の間のオゾン層の長期変動に対するハロゲンガス濃度、温室効果ガス濃度、および太陽変動の影響を、これらの因子を固定した実験や異なるシナリオ下での実験を行って明らかにする。また、オゾン層変動(成層圏)と気候変動(対流圏)の相互作用を調べる観点で現行の数値モデルが抱えている問題点を是正するために、モデルの大気循環場や放射場に関する部分の改良を行う。
(8)次世代大気モニタリング用多波長高スペクトル分解ライダーの開発
エアロゾルの種別(ダスト、海塩、煤、水溶性粒子)毎の高度分布の抽出を主眼として、昼夜自動連続で測定可能な多波長高スペクトル分解ライダーを開発する。開発するライダーは、2波長(532,355nm)の消散係数、3波長の後方散乱係数及び2波長(1064、532nm)の偏光解消度を測定できる。これらの測定パラメタ全てを同時活用し、エアロゾル種の識別・推定を行う。平成22年度は消散係数、後方散乱係数、偏光解消度を自動抽出する手法の開発を行う。
(9)ディーゼル車排ガス中に含まれるニトロ化合物のリアルタイム計測手法の開発
ディーゼル車排ガスから多く排出される粒子状物質や窒素酸化物の排出量を低減するための取り組みがなされているが、その取り組みで却って、人体に有害と考えられるニトロ有機化合物が生成している可能性が示唆されている。その生成はエンジンの稼働状況・運転条件に大きく依存すると考えられるため、ディーゼル車排ガス中のニトロ有機化合物の多種類をリアルタイムに測定する装置として、高質量分解能陽子移動反応−飛行時間型質量分析計の開発を行い、ニトロ有機化合物の排出特性(種類・(全)量・性状)を把握する。
(10)貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価に関する研究
閉鎖性海域における最大の水環境問題である貧酸素水塊の発生機構と底生生物に与える影響について現場調査と実験室内により評価・検証し、貧酸素水塊の時空間的分布を再現する非定常流動・生態系モデルの精緻化を図り、栄養塩・有機炭素等の陸起源負荷流入による貧酸素水塊発生を定量的に解析出来るツールの作製を目指す。
(11)都市沿岸海域の底質環境劣化の機構とその底生生物影響評価に関する研究
都市沿岸海域では貧酸素水塊よる底質環境の劣化が進行し、底生生物の生息に甚大な影響を与えている。これを受け、本研究では、貧酸素水塊の形成に伴い底質環境中に発生し、生物に高い毒性を示す硫化物に着目して研究を展開する。すなわち、硫化物の形成・水柱への供給過程と、底生生物におよぼす影響を、現場調査・室内実験、および数値シミュレーションにより明らかにし、底質環境の改善に資することを目指す。
(12)窒素飽和状態にある森林域からの窒素流出量の定量評価および将来予測と削減シナリオの構築
1980年代より窒素飽和状態にある筑波山森林域を主な対象に、(1)集水域単位での物質収支調査を行い、窒素飽和状態が持続していることが、森林域からの窒素流出負荷量に及ぼす影響を評価する。(2)窒素飽和と林内環境、土壌中窒素動態の関係を観測や実験により定量評価し、林内環境改善による窒素飽和改善シナリオを構築する。(3)窒素循環に係る森林生態系モデルの開発と統合的利用を行い、森林管理の適正化が窒素飽和とその流域環境への影響を緩和し得るかを示す。
(13)湖沼における有機物の循環と微生物生態系との相互作用に関する研究
湖沼において有機物と微生物生態系の相互作用を解明するため、長期モニタリングデータの解析から、湖沼流域における有機物の循環と溶存有機物の難分解性化メカニズムを明らかにする。また、流域河川流出モデルと湖沼生態系モデルを組み合わせて、湖内の特定地点において、流域の個々の特定発生源や湖水域毎の内部生産源からの寄与を定量的に評価する。
(14)青海・チベット・モンゴル高原における草原生態系の炭素動態に関する研究
地球全体の気候システムに影響を及ぼす青海・チベット高原とモンゴル高原の草原生態系について、炭素蓄積量と炭素収支の変化、それらの変化に及ぼす気候・人為的影響を明らかにする。既存データの収集・解析を行い、炭素蓄積量の空間パターンと生態系の二酸化炭素収支の時間変動に及ぼす気候変化と人為的影響を明らかにし、二つの草原の炭素蓄積量の変化を予測する。
(15)高温・オゾン適応のためのイネの分子マーカーの探索と診断アレイの開発
高温やオゾンがイネの収量・品質に及ぼす影響の品種間差を、幼苗の分子マーカーの検査により判定する手法を確立する。また、高温やオゾンで処理した穂及び種子を用いて遺伝子発現等の分子マーカーを探索し、高温・オゾン影響履歴の検出手法を開発する。さらに、暴露実験で採取したイネ葉を用いて、イネ・オゾンストレス診断アレイの有効性を評価するとともに、オゾンの収量影響にかかわる遺伝子を同定する。
(16)生物多様性の保全を考慮した土地利用デザインのための評価モデルの開発
日本全国スケールを対象に土地利用変化に対する広域的な生物多様性の応答を予測するモデルを構築し、これにもとづいて生物多様性の保全を目的として土地利用を再デザインする場合の最適な資源配分の算出ツールを開発する。平成22年度は、多数の生物種についての広域的な既存分布情報の収集および整備を推進するとともに、最適資源配分算出ツールの骨格部分の開発を行う。
(17)遺伝子組換えセイヨウアブラナのこぼれ落ちおよび拡散に関するモニタリング
遺伝子組換え(GM)セイヨウアブラナの生育が既に確認されている種子輸送道路沿いで、GM個体の出現状況を長期わたってモニタリングする。主要輸送道沿い3ヵ所で比較調査を行い、GM個体の増減、GMの世代更新の有無、場所による侵入圧の違いを明らかにし、種子こぼれ落ちの防除指針について考察する。
(18)オイル産生緑藻類Botryococcus高アルカリ株の高度利用技術
ボトリオコッカスの単位面積あたりのオイル生産効率を向上することを目的として、新規有用機能をもつボトリオコッカス等の有用株の選定と評価、オイル産生藻類に関する情報の統合的なデータベースを管理する情報センターの構築、 得られたボトリオコッカス等有用株の突然変異誘起及び遺伝子組換えによる高増殖活性、広環境適応性、高オイル生産性、高CO2利用性等高機能性変異株の作成を行う。
(19)グローバルな森林炭素監視システムの開発に関する研究
2013年以降の次期枠組みに関連して重要となっている森林減少・劣化を国際的に監視するシステムを我が国が先駆的に提案することに向けて、PALSAR等の全天候型リモートセンシング情報を活用して森林減少や森林劣化を定量的に把握する手法を開発する。特に、テストサイトにおける森林減少の把握、バイオマス量の時間変動を把握する研究を実施する。
(20)廃棄アスベストのリスク管理に関する研究(別表3に再掲)
石綿含有廃棄物の処理過程での曝露リスク低減を目的とし、石綿処理過程での各媒体の石綿を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で並行分析して結果を比較すると共に、共同分析でのばらつきの要因解析や実試料を用いた標準観察試料の作成等、精度管理手法確立のための検討を行う。また、曝露リスク管理方策の検討では、廃棄物処理設における石綿飛散調査、搬入物の石綿含有の調査を行うと共に、バグフィルタからの石綿再飛散の実験的検討を行う。
(21)資源循環に係る基盤的技術の開発(別表3に再掲)
資源の循環利用および環境保全等に寄与する技術を幅広くとらえ、現行技術および将来有望と見込まれる新規技術の調査研究を、研究会組織を設けて継続実施し、中期計画内における到達点として公開シンポジウム等の情報発信を行う。また、平成21年度に異種分野に調査範囲を拡大したことを踏まえ、優れた研究開発を行っている機関との将来的連携と具体的導入の手法を検討する。
(22)二次生成有機エアロゾルの環境動態と毒性に関する研究
健康影響が懸念される二次生成有機エアロゾル(SOA)について、毒性スクリーニング、化学組成分析を行う。またシミュレーションと大気観測を行い、SOAの動態を解明し、リスク対策に資する基礎データを得る。平成22年度はベンゼン、トルエンやアルファピネンなど大気中に放出される典型的な揮発性有機化合物の酸化反応で生成するSOAの毒性スクリーニングおよび化学組成分析を行う。同時にエアロゾル質量分析計を用いたSOA分析手法の開発や有機エアロゾルのシミュレーションの改良を行う。
(23)発生工学を用いた鳥類人工繁殖手法
鳥類体細胞を始原生殖細胞とするため生殖巣キメラ個体からの子孫個体作出法の開発を目指す。実験鳥類の始原生殖細胞の大量培養と共に、培養体細胞との電気融合条件を決定して融合始原生殖細胞の創出を行い、体細胞からのiPS細胞作製を試行する。並行して、絶滅危惧鳥類細胞(始原生殖細胞及び体細胞)を用いた生殖巣キメラ個体の作成のため、モデル実験鳥類個体を用いた実験系の開発を行う。
(24)「子どもの健康と環境に関する全国調査」の総括的な管理・運営
平成22年度より「子どもの健康と環境に関する全国調査」の総括的な管理・運営を開始する。具体的には、平成22年度内に予定されている調査対象者のリクルート開始に向けて、リクルートに関わる調査手順書案の作成、データ及び生体試料等の集積・保管・管理体制の整備のほか、ユニットセンターにおける業務の支援、調査対象者とのコミュニケーション体制の整備、広報活動などを含め、コアセンターとしての体制、機能の整備を進める。
