(別表2) 関連研究プロジェクト
1.地球温暖化研究プログラム
(1)過去の気候変化シグナルの検出とその要因推定
気候モデルによる20世紀気候再現実験の出力データを活用した、陸域降水量の長期変化の要因推定研究を継続する。大気中の水蒸気収支式に基づく解析手法をグローバルに援用し、緯度帯ごとの長期降水変化の発生メカニズムの解明を目指す。また、複数の気候モデルによる様々な数値実験のデータ解析を通して、自然起源の気候変動要因に対する気候応答の不確実性に関する知見を得る。
(2)太平洋小島嶼国に対する温暖化の影響評価
太平洋の島嶼国を対象として、今までに得た地形発達、降水量変動、地下水貯留量、水使用量、社会経済に関するデータに基づき、島嶼国における環境収容力と居住可能性を評価する。さらに、気候モデルの出力を用いて、温暖化をはじめとする環境変動の影響を評価し、適切な適応策を提案する。
(3)温暖化に対するサンゴ礁の変化の検出とモニタリング
熱帯・亜熱帯域においては、サンゴ礁とそれに隣接する陸域の土地利用変化の解析を継続し、土地利用の変化に基づく陸域負荷の変化と温暖化による水温上昇の複合ストレスがサンゴ礁に与える影響を明らかにする。温帯の分布北限域においては、緯度勾配に沿ったサンゴの種構成の変化を明らかにし、温暖化の検出の指標種を特定する。その指標種を用いて、過去と現在の出現記録を比較し、温暖化によるサンゴ種の変化や北上の可能性を検討する。
(4)日本における土壌炭素蓄積機構の定量的解明と温暖化影響の実験的評価
黒ボク土を初めとする日本特有の土壌における炭素蓄積機構の解明及び炭素貯留の持続性を検討に資するため、放射性炭素同位体をトレーサーに土壌画分毎の炭素量と滞留時間(分解率)のデータ収集を継続する。加えて、日本の代表的な土壌を数地点選定し、これら土壌に堆積する土壌炭素画分の温暖化影響を評価するための、土壌の室内培養実験を行う予定である。培養実験前後での、土壌炭素画分の組成および画分毎の滞留時間の変化を調べ、土壌有機炭素の分解特性を検討する。
(5)統合評価モデルによる温暖化影響評価・適応政策に関する研究
統合評価モデルAIM/Impact[Policy]に、適応策の有り無し別の影響関数を実装し、適応策を任意に選択し、時間的に変化する適応策レベルを系列的に設定できるような仕様を検討する。また、多様な空間スケールでの影響評価研究に適した気候シナリオ開発手法について検討する。
2.循環型社会研究プログラム
(1)特定地域における産業間連携・地域資源活用によるエネルギー・資源の有効利用の実証
地域循環圏の拠点施設について、首都圏の主要な施設を調査し、循環技術の資源エネルギー転換関数として整備するとともに地域循環圏形成などの将来政策シナリオ・シミュレーションを実施している。資源循環拠点形成にとっての規模の経済、地域内の多様な施設の集積効果、社会政策の効果および、地域循環特性の定量的な分析を進めるとともに、地域循環圏とその拠点形成のガイドダインシステムの構築を進める。また、資源循環プロセスの評価に当たって、非循環型との相対的な資源の節約効果を評価する従来型のLCA手法の枠組みを越えて、循環利用工程を含めて資源の有効利用度を測る方式を検討する。
(2)資源作物由来液状廃棄物のコベネフィット型処理システムの開発
アジアの温暖地域で生産が活発な資源作物(サトウキビ、アブラヤシ等)由来液状廃棄物(廃液)の適正処理法の開発を行い、温室効果ガス発生抑制、エネルギー回収等を達成するコベネフィット型処理技術の確立を目指す。高有機物濃度対応型のメタン発酵槽による糖蜜系廃液の処理試験を行い、流入有機物負荷や阻害物質(硫化物、カチオン類)の濃度変化が、廃液処理性能や保持汚泥の性状に及ぼす影響を評価する。また、処理廃液の液肥としての利用に関する効果の検証と環境への影響評価(主に温室効果ガスの発生状況の把握)を行う。
3.環境リスク研究プログラム
(1)エピジェネティクス作用を包括したトキシコゲノミクスによる環境化学物質の影響評価法開発のための研究
種々の環境化学物質について、胎児期曝露の影響が成長後に現れるなどの後発影響や、経世代影響の存在が疑われているが、そのメカニズムや曝露と影響の因果関係は多くの場合不明である。最近、基本的な生命現象として、また、後発・経世代影響のメカニズムとして、「エピジェネティクス作用」による遺伝子機能の修飾の重要性が明らかにされつつある。本研究では、環境化学物質のエピジェネティクス作用について、標的となる曝露時期・臓器及び遺伝子を実験動物で明らかにし、またその後発・経世代影響への関与を検討する。さらにヒトへの応用のため、影響のメカニズムについて検討し、環境化学物質のエピジェネティクス作用を評価するための科学的基盤を明らかにする。
4.アジア自然共生研究プログラム
(1)九州北部地域における光化学越境大気汚染の実態解明のための前駆体観測とモデル解析
春季に高濃度の越境光化学オゾンが発生する長崎県福江島において、光化学オゾン前駆体である非メタン炭化水素類(NMHC)、NOx及び二次生成粒子の長期連続・集中観測を実施する。これによって、中国や韓国から九州北部に輸送されるオゾン前駆体の実態を把握するとともに、汚染イベント時の光化学反応履歴を解析する。また、モデル計算によって光化学大気汚染の3次元構造、オゾン・NMHC・NOy・粒子状物質の越境輸送と発生源地域別寄与率などを把握する。これまでに福江島においてNMHCとNOx、オゾンの観測を立ち上げると共にモデルの整備・数カ月分のシミュレーション計算を行った。平成22年度は、NMHCとNOx、オゾンの通年測定、および春の集中観測(AMSによる粒子観測)を行い、モデルシミュレーション結果も使用して、春季の光化学オゾン前駆物質の動態と二次粒子生成を詳細に解析する。更に、NMHCとNOyの発生源地域別寄与率の季節変動を把握するとともに、中国・韓国における排出インベントリの妥当性を評価する。
