(別表4) 基盤的な調査・研究
(1)中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究
持続可能な社会の在るべき姿(ビジョン)を描き、それを達成するための社会シナリオを作成することにより、今後の国際・国内環境政策に資することを目的とする。平成18年度は、持続可能性を評価する指標及び環境統合評価モデルを活用した分析枠組を開発するとともに、これらを用いて中長期を対象とした持続可能な社会像を環境及び社会経済の側面から定性的、定量的に分析、評価する方法を開発する。
(2)都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測
都市圏における微小粒子、二次生成汚染物質を対象にその動態の解明、大気質予測モデルによる将来予測、曝露実態の把握と健康影響予測等を行い、今後起こりうる都市の環境問題を未然に予測し、中長期的な環境政策立案に資することを目的とする。平成18年度は、車載計測や低公害実験施設を用いて、後処理付ディーゼル自動車の実使用条件下における排出特性評価を行うとともに二次粒子を含む微少粒子の大気動態計測とモデルシミュレーション、二次粒子生成モデル改良のためのチャンバー実験、排出インベントリの改良、二次生成物質や自動車排気に起因する高レベル曝露の実態把握を行う。
(3)身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究
「ラストワンマイル」と呼ばれる各家庭との接続部分に着目し、その身近な交通からの環境負荷低減を目指す。実現性の高い環境負荷削減策を検討するための基礎データを得るため、平成18年度は、センサスデータをもとに自家用車の利用目的別・距離帯別CO2排出量を明らかにするとともに、車載機器を用いて実使用条件下における走行状況を把握し、それをもとにシャシーダイナモ試験を行い、自動車の環境負荷を評価する。また、購買行動の違いによる環境負荷の違いについて分析する。
(4)残留性有機汚染物質の多次元分離分析法の開発に関する研究
ダイオキシン類、PCB代謝物、パーフルオロ化合物など、毒性、残留性の面から特に懸念される有機汚染物質を念頭におきながら、多成分同時、迅速、高分離、高精度をキーワードとする次世代分析手法の開発を目的として、多次元クロマトグラフィーと高分解能TOFMSの結合を柱とする新たな分析手法を開発する。平成18年度は、GCxGC/TOFMSシステムの構築を行い、水酸化PCBの異性体分離条件の検討並びにフライアッシュ中のダイオキシン迅速分析条件の検討を行う。また、フッ素加工製品の熱分解生成物に関する検索を進める。
(5)化学物質の動態解明のための同位体計測技術に関する研究
各種汚染物質の発生源探索や環境動態解明のための指標として用いることを目的とし、重金属等元素の同位体存在度及び有機化合物の放射性炭素同位体比の精密計測技術の開発、改良を行い、高精度な同位体分析システムを構築する。平成18年度はマルチコレクターICPMSによる鉛等の高精度同位体比測定条件の確立並びに応用を進めるとともに、室内じんのサンプリング方法の確立と構成成分のトレースキャラクタリゼーションに関する研究、アルデヒドの捕集並びに単離精製と14C分析に関する基礎検討を推進する。
(6)DNAチップを用いた有害化学物質の健康影響評価に関する手法の開発
有害化学物質や粒子状物質について、健康影響の評価を行うため、従来のDNAチップ上の遺伝子からこれまで蓄積されてきた毒性学的な知見や経験に基づき評価に関わる搭載遺伝子を選抜すること及びデータの整備を行い、簡便、安価であるが、同時に包括的で迅速かつ高感度に健康の影響を検知・予測することが可能な環境ストレスDNAチップの作製と手法を開発する。
(7)バイオナノ協調体による有害化学物質の生体影響の高感度・迅速評価技術の開発
上皮組織や血管内皮組織の構造と同等の人工組織を培養細胞から構築し、その人工組織から発せられる信号を検出するためのセンサーと一体化したチップをバイオナノ協調体として開発する。具体的には、1)人工上皮/内皮組織の構築、2)ナノ構造体センサーの開発、3)人工組織とナノ構造体を、擬似基底膜化合物をインターフェースとして、機能連関した状態で一体化させる。これにより、環境汚染物質で組織傷害が顕在化する様子のオンタイムな測定が可能になる。
(8)学童コホート調査の関東地区及び中京地区における同意確保調査
平成17年度から開始される局地的大気汚染の健康影響に関する学童コホート調査において調査対象者・保護者から調査協力への同意を得るために、協力小学校の協力を得て保護者への説明会を開催し、保護者に対して十分な説明を行い、学童コホート調査に対する理解を得るとともに、フリーダイヤルを設置して、保護者等からの問い合わせに対し適切に対応するなど、同意確保のための各種調査を実施する。平成18年度は平成17年度に引き続いて調査協力が得られるように、同意の継続確保のための各種調査を実施する。
(9)熱中症予防情報提供業務
平成18年度は、1) 熱中症関連ホームページの統一と充実、2) 気象予報情報を用いて熱中症の予防情報(WBGT(湿球黒球温度)の推定値)の提供、3) その基となる気象予報情報からWBGTの推定方法の精度向上を図るための検討、4) 気象庁の協力を得て、WBGT観測機器を全国数ヶ所に設置し連続観測を行うとともに、ホームページよりモニタリングデータのリアルタイム公開を行うためのシステムを構築する。
(10)成層圏オゾン層破壊の機構解明と将来予測に関する研究
オゾン層破壊に関わるプロセスの解明、これまでのオゾン層変動の要因の解析、将来のオゾン層変動の予測を目的とする。平成18年度は、ILAS・ILAS-U観測データ活用をした極成層圏雲存在下でのガス及びエアロゾル濃度の導出手法の開発やトレーサー相関法を用いた脱硝酸量の見積もり、並びに化学気候モデルを用いた今後のCO2等の微量ガス濃度の変化シナリオ下でのオゾンホールの長期変化の数値実験を行う。
(11)能動型と受動型リモートセンサーの複合利用による大気汚染エアロゾルと雲の気候影響研究
雲自体による放射強制力及び人為起源エアロゾルが間接・直接に引き起こす放射強制への影響を評価することを目的とする。平成18年度は、高スペクトル分解能ライダー等のリモートセンサーによる雲・エアロゾル観測手法の開発を行う。また衛星搭載センサーを利用したエアロゾル種別の判定手法の開発を行う。
(12)有機物リンケージに基づいた湖沼環境の評価と改善シナリオ作成
湖水有機物(溶存有機物[DOM]と粒子状有機物)等の化学組成(DOM分画分布、糖類組成、アミノ酸組成、分子量等)情報から続成状態(分解状態)や起源を評価する手法を開発する。湖水柱や底泥中においてDOMや難分解性DOMと微生物群集との連動関係(リンケージ)を重点的に評価して、湖水で難分解性DOMが蓄積する仕組みや主要発生源を明らかにし、流域発生源対策の適切なあり方を提言する。
(13)霞ヶ浦エコトーンにおける生物群集と物質循環に関する長期モニタリング
霞ヶ浦を対象に、湖沼と陸域の境界領域であるエコトーンに対して複合的にモニタリングを行い、湖のデータとあわせて、再生事業の影響、導水路工事前の状況を含めて湖全体の生物群集と物質循環のトレンドを明らかにする。
(14)有明海の環境保全に関する研究
有明海を対象として、1) 水質保全(赤潮発生機構・栄養塩動態等)並びに 2) 特産種の資源回復の観点から、環境と生物群集(とくにプランクトンと二枚貝)間の相互作用を明らかにし、有明海の再生を目指す。
(15)水稲葉枯れ症の発症要因の究明と軽減対策技術の開発
長崎県の北部高標高地帯の水田における水稲葉枯れ症の原因を明らかにするため、被害現地における酸性霧、エアロゾル等の大気環境の把握を連続的に行い、水稲葉枯れ症直後に現地での可視傷害の調査を行う。さらに、霧暴露チャンバーの試作と稲を用いた霧暴露予備実験を行う。
(16)衛星利用の温室効果ガス全球分布観測に関する先導的研究
2008年打上げ予定のGOSAT衛星運用終了(2013年頃)以降の衛星利用の温室効果ガス全球分布観測について、科学的・政策的要求を関連分野の研究者・行政関係者に対するヒアリング等を通して明らかにし,その要求を実現するための具体的な観測シナリオを複数策定する。その上でそのシナリオを実現する際に直面する技術課題の抽出を行う。
(17)廃棄アスベストのリスク管理に関する研究(別表3に再掲)
アスベスト廃棄物の熱処理による無害化処理を確認するため、分析が必要な各種試料に対し、高感度・高精度の透過型電子顕微鏡/電子線回折 / エネルギー分散型検出器(TEM / ED / EDS)を中心とした試験方法の開発に着手する。具体的には、熱処理から発生する排ガス及び熱処理物に適用しうる試験方法として、試料採取から前処理を経てTEMによる計数法の検討を行うとともに、熱処理過程におけるアスベスト繊維の物理形状、結晶構造、化学組成をX線回折及びTEM等で確認し、同時に熱変化を経たアスベスト繊維の毒性評価を行う。平成18年度はクロシドライト及びクリソタイルの熱処理物のin vitro細胞毒性試験を行う。
(18)資源循環に係る基盤的技術の開発(別表3に再掲)
廃棄物から各種有用マテリアルが選択的にかつ迅速・高収率で回収可能な技術的手段を広く調査しデータベース化する。要素技術開発としては、特に有機性廃棄物を対象として、高付加価値生理活性物質に適用できる高圧流体応用技術の操作因子等を実験により明確にする。
