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(別紙1) 重点研究分野の平成17年度事業計画

重点研究分野 平成17年度事業計画
1.地球温暖化を始めとする地球環境問題への取り組み
(1)温室効果ガスの排出源・吸収源評価と個別対策の効果評価に関する研究
  温室効果ガスの変動要因の一つである陸域生態系や海洋による二酸化炭素の吸収・放出を推定するとともに、それら吸収源の増強や排出抑制に関する研究を行う。具体的には、
1)  グローバルな陸域・海洋吸収の評価を目的として大気中の酸素/窒素比や炭素同位体比を波照間・落石の定点、日豪の定期船舶、航空機などにより観測する。
2)  西シベリアで地域(Regional)規模での二酸化炭素吸収を評価することを目的とし、多点での大気中二酸化炭素やメタンの連続観測を行う。また、航空機やタワーでの炭素収支の直接観測を行う。
3)  森林におけるフラックス測定や遠隔計測による炭素貯留量の測定を行い、森林の炭素吸収量を評価する。また、チベット高原において、寒冷で日射の大きい草原生態系で炭素収支を評価する観測研究を行う。
4)  日米・日豪の定期船舶による僂O2の測定や、EUとの共同観測により、海洋吸収量変動の年々・偏差・地域的特性の要因解明を行う。
5)  運輸部門について、交通需要の地域特性や燃料供給のライフサイクルを考慮した対策効果の評価手法と有効な対策の普及促進策に関する研究を行う。
6)  建築物における空調・照明等自動コントロールシステムに関する技術開発を行う。
(2)地球温暖化に伴う地球環境変動の将来見通しに関する観測・解析・モデリングと影響評価に関する研究
  世界規模の経済発展や温暖化の緩和・適応対策が、地球規模の気候変動及びその社会・経済的影響をどの程度軽減できるかを排出モデル、気候モデル、影響モデルを統合して評価する。排出モデルでは、環境要素モデル、世界エンドユースモデル、環境政策評価モデル、戦略的データベースの開発・拡張を行い、日本およびアジア主要国における長期的な温暖化対策と短期的な国内環境問題や経済発展を両立させるための政策評価を行う。また、世界の気候安定化を目標に、2050年を対象に日本の温室効果ガス排出量を大幅に削減するための対策について、シナリオアプローチやモデル分析を用いた検討を行う。気候モデルについては、20世紀の気候再現実験および将来の温暖化予測実験結果を解析するとともに、補足的な実験を行う。温暖化予測実験については、高解像度気候モデル等の結果を用いて、豪雨などの極端な気象現象に関する将来予測とメカニズムの解明を行う。影響モデルでは、水資源・農業影響モデルの精緻化を進め途上国へ適用する。影響プロセスモデルについては、水需給モデルの開発に着手し、中国を対象とした解析を試みる。また、日本・アジア太平洋地域を主対象として、濃度安定化等の温暖化抑制目標とそれを実現するための経済効率的な排出経路、および同目標下での影響・リスクを総合的に解析・評価するための統合評価モデルを開発する。
(3)京都議定書及び第二約束期間への我が国及びアジア諸国の対応可能性の政策研究
  2012年以降の地球温暖化対策のあり方を検証する。現在の京都議定書の排出量抑制義務に続く2012年以降の新たな義務に関して、過去の年度において実施した研究を元に作成された3つの将来シナリオを対象として、各シナリオにそれぞれ最も適合すると考えられる国際制度を作成する。そして、各国際制度ごとに、主要国の排出削減量やコスト、排出削減を実際に行うことになると想定される国内主体等について定性的・定量的シミュレーションを行う。他方、主要国の同課題に対する態度を分析するためのデータとして、EUにおける将来枠組みの議論、米国の気候変動政策の動向、今年5月から開催される公式会合における将来枠組みの議論、等について常に最新の情報を収集する。最後に、上記研究の成果を包括し、最も国際合意が得られそうなもの等の観点からオプションを評価し、国際制度のパッケージをデザインする。
(4)オゾン層変動及び影響の解明と対策効果の監視・評価に関する研究
  極域オゾン層を中心に、衛星観測、地上モニタリング等により得られた観測データ、あるいはその他の種々の観測データを活用した解析的研究を進める。具体的には、ILAS-Uデータを用いた2003年南極オゾンホール内の化学的なオゾン分解速度の決定とILASデータを用いた北極域(1997年)でのオゾン分解速度との比較、南半球極域でのガス状硝酸濃度の時系列変化の導出ならびに極成層圏雲量との関係の解析、ILAS-IIのトレーサー分子データを利用した南極極渦内での大気下降速度の見積もり、地上分光観測による微量成分導出結果と衛星観測との比較、等を行う。
  成層圏化学気候モデルに大気球面効果を導入し、オゾンホール生成および継続期における化学−放射−力学過程の相互作用の影響を明らかにする。更に、化学気候モデルに臭素化学反応系を導入し、モデルのチューニングを行った後、CO2漸増条件下での成層圏オゾンの長期変動の数値実験を行い、将来のオゾン層変動を予測する。これと平行して、臭素系オゾン破壊反応を導入した3次元化学輸送モデル(CTM)を用いて、オゾン層破壊に対するハロン等の臭素化合物による反応の寄与を見積もる。さらに、CTMと時間閾値解析法を組み合わせて、極渦内でのオゾン破壊量の推定や極渦内でのオゾン破壊が中緯度のオゾン層変動に及ぼした影響を明らかにする。
  紫外線の人の健康に対する影響評価研究として、気象庁から公表されている札幌、つくば、鹿児島、那覇におけるオゾン量 及び紫外線量観測値、ならびに国内20数地点で実施中の帯域別紫外線計による観測値の解析により、成層圏オゾン層変動が紫外線地表到達量に及ぼす影響を定量・評価を引き続き進めていくとともに健康影響調査への活用を図る。併せて、対流圏オゾン、大気汚染物質等の影響評価も行う。紫外線が植物の遺伝子発現にどのような影響を与えるのかをDNAマイクロアレイを用いて調べる。
2.廃棄物の総合管理と環境低負荷型・循環社会の構築
(1)環境低負荷型・循環型社会への転換支援のためのシステム分析手法と基盤整備に関する研究
  循環資源に関するマテリアルフローと経済活動全体についての産業連関表との結合、マテリアルフロー勘定の枠組みの検討、資源の循環的利用促進の効果分析における指標利用に関する実証研究を進める。LCA研究については、容器包装のうち、その他プラスチックの事例研究を進め、企業・消費者・政府等の取組につながる知見としてまとめる。また、個別リサイクル法に共通する課題の整理等を踏まえ、3R促進のための制度・技術の共通的・基本的な要件をまとめる。地域レベルでの資源循環については、循環スケールと経済・社会・環境上のパラメータとの関係を検討して、地域循環指標を提示する。さらに、リサイクル製品の安全性について、長期的安全性の視点から、評価手法の開発と試験システム標準化に向けた研究を進める。
(2)廃棄物の資源化・適正処理技術及びシステムに関する研究
  熱処理プロセスからの環境負荷物質の生成・排出、抑制・除去及び安全に関する技術的知見を集約し、総合的視点にもとづいて評価を行う。また、有機性廃棄物の循環システムについて、回収プロセスの特性や循環資源の安全性の評価を行い、地域の有機性廃棄物排出構造や需要構造を踏まえて最適化する手法を提案する。さらに、最終処分場の容量増加あるいは再生に必要な技術の評価と実地調査を行うとともに、海面最終処分場の環境影響を評価し、環境負荷低減技術の評価手法を検討する。加えて、処分場の安定化反応に関する物理的・化学的指標と微生物指標との比較評価を行い、安定化診断システムを構築するとともに、処分場観測井における監視記録を基にした簡易評価スキームを構築する。
(3)廃棄物処理に係るリスク制御に関する研究
  資源化や処理処分の場に流入する有害物質を総合的に判断する予測・評価手法として、化学分析手法とバイオアッセイ手法を活用した研究を推進し、実試料適用を踏まえて試料前処理との組み合わせについて提案を行う。また、リサイクル施設におけるダイオキシン類縁化合物の評価にバイオアッセイを適用し、多角的にモニタリングを試みる。有機臭素化合物については、LC-MSによる分析法を開発するとともに、光分解・生体内代謝挙動についてバイオアッセイによる毒性評価などを行う。不揮発性有機化学物質の分析システムに関して、LC/MSスクリーニング分析法の開発、高分子量物質の分子量・官能基情報の検索法の開発を進める。さらに、PCBについて、金属ナトリウム法をはじめ各種分解法による分解メカニズム研究を進めるとともに、PCB以外の残留性有機汚染物質を含む廃棄物への応用を意識して、分解挙動の基礎試験を進める。
(4)汚染環境の浄化技術に関する研究
  公共用水域への汚濁負荷削減と資源循環利用の両立を図るため、液状廃棄物としての生活系排水、小規模事業場排水及び汚染環境の場を対象とした生物処理工学、生態工学の各種要素技術の開発を行うとともに、これらの要素技術を汚染環境の場に応じて適正に組合せシステム化することにより、国内外を対象として資源循環型の環境保全・再生システムを導入するための研究を実施する。すなわち、廃棄物に関連するさまざまな環境媒体を修復するための有機汚濁浄化システム、リン資源回収型高度処理浄化システム、分子生物学的手法を導入した適正管理型浄化システム、植栽・土壌を活用した浄化システム及び土壌・地下水の硝酸汚染を防止する生物物理化学的窒素除去システム等について、技術開発を進めつつ、性能解析評価、環境・経済影響解析評価に基づく適用現場に応じたシステムの最適化、実証試験、維持管理手法の整備等の検討を行う。
3.化学物質等の環境リスクの評価と管理
(1)内分泌かく乱化学物質のリスク評価と管理に関する研究
  内分泌かく乱化学物質の分析技術に関して、液体クロマトグラフ核磁気共鳴分光法等の新規技術および選択的濃縮剤の開発、高感度・迅速な各種in vitroアッセイシステムによる多数化学物質のスクリーニングを行う。環境中の汚染実態の解明として、東京湾及び霞ヶ浦における環境ホルモンの分析とデータのとりまとめを行う。野生生物への影響に関して、巻貝の雄性化、メダカの雌性化及び鳥における甲状腺過形成の現状調査などを行う。人への影響に関する検討として、脳神経機能への影響を画像診断する高感度機能イメージング手法、超高磁場MRI装置の基本的測定システムの確立、胎児期等に甲状腺ホルモンが不足した実験動物を用いた行動試験等の検討を行う。さらに、動物の生殖機能、特にステロイド代謝系への影響評価、ならびにストレス関連ホルモン分泌動態に係る内分泌疫学研究を行う。分解処理については、環境における生分解についての知見を集積するとともに、植物による内分泌かく乱化学物質の不活性化や微生物を用いた分解とそのメカニズムの解明を行う。内分泌かく乱化学物質等の管理と評価のための統合情報システムについては、大気グリッド−河川流域複合の多媒体環境動態モデルの構築を行うと共に、地理統計的手法の検討を行う。
(2)ダイオキシン類のリスク評価と管理に関する研究
  ダイオキシン類の簡易・迅速な計測手法について、簡易なサンプリング法、クリーンアップ法や低分解能質量分析法、生物検定法の評価を行なうとともに、リアルタイムモニタリング手法の検討を行う。ダイオキシン類、多環芳香族炭化水素類の複合曝露モデルとしてディーゼル排気曝露装置を用い、ディーゼル排気の経気道曝露によるそれら化合物の体内への取り込み量と酸化ストレスとの関係を実験動物を用いて検討する。コプラナーPCBが有する非ダイオキシン様の毒性の実体とそのメカニズムの解明に関する研究を行う。さらに、培養細胞系における生体防御反応におけるシグナル伝達経路と転写因子の役割について検討する。臭素化ダイオキシン類について、環境試料の分析法の検討、人体試料及び底質コア試料中の臭素化ダイオキシン類及び臭素化ジフェニルエーテルの分析を行う。地球規模のダイオキシンの移動・分布等について、太平洋をフィールドとした生物蓄積についての検討を行なう。ダイオキシン類及びPOPsの環境運命予測に関する研究として、グリッド型多媒体運命予測モデルに、地域内における輸送特性と長距離輸送モデルを組み込むことについて基礎的検討を行う。
(3)化学物質の環境動態の解明とモニタリング手法の開発に関する研究
  加速器MSのガスイオン化源の改良を行い、感度の長期安定性とメモリー効果の低減を図り、地球温暖化関連物質や環境汚染物質の成分別の14-Cの高精度・高スループット測定を実現する。高沸点や揮発性に乏しい化学物質などを選択性良く同定できる液体クロマトグラフMS-MSの応用をすすめ、医薬品等への適用に関する検討を行う。また、急速に発展しているナノテクノロジーやマイクロ化学などの成果を環境計測に取り込む基礎的な検討を行い、測定法の簡易化、高頻度時空間測定、汚染物質バイオセンサー開発、パーソナルモニターなど、先導的な環境計測技術の検討を行う。
  個別分析手法の精度管理の手法のみならず、環境モニタリング手法とその精度管理に係る研究を実施し、環境保全・改善に有効に利用できるモニタリングデータの収集・処理に関する基礎的な検討を行う。特に、ダイオキシンなどの極微量な有害化学物質のモニタリング手法の最適化・標準化などに関する基盤的な検討を行う。
  大気中の低分子量有機ハロゲン化合物、環境残留性有機汚染物質(POPs)など、地球規模で環境に影響を及ぼしている環境汚染物質の汚染実態把握、挙動解明を行い、長期的な変動を予測する。国内外で水土壌圏に対して重篤な環境汚染を引き起こしているヒ素やホウ素に関して、その環境動態を明らかにし、その対策を検討する。また、世界的に希少な長寿命湖沼の底質を利用した古環境解析研究を、特に東北アジアを中心として、加速器MS、ICP同位体MSなど先端的な計測手法を活用して実施する。
(4)化学物質のリスク評価と管理に関する研究
  空間・時間変動を考慮した曝露評価手法の開発について、PRTR物質を中心に空間分布の詳細な推定を行うとともに、塩素系農薬の経年的インベントリーを利用して、過去の環境中濃度の経年変動の推算を行なう。また、小児に対する体内動態モデルを作成し成人に対するモデルとの統合を行ない、成長に伴う化学物質の体内濃度の変動を予測する手法を開発する。多媒体モデル、河川、内湾、湖沼等の簡易モデルの改良・検証を継続し、一般に利用可能とする。感受性要因を考慮した健康リスク評価手法を開発するため、感受性を決定する遺伝子多型の解析を進めるとともに、化学物質の代謝との関連を解析する。バイオアッセイの測定結果をモニタリング指標として活用するために、体内で化学物質が示す変異原性と発がん性の定量的な関係を求める実験を行う。有害大気汚染物質等を対象に、作用機構を考慮した複合曝露評価手法の検討を行う。収集した生物影響データを生物種毎に整理・解析し、甲殻類と藻類について構造活性相関手法の開発を試みる。住民に分かりやすいリスク情報の加工方法を検討し、データベースを構築・提供する。PRTRの報告結果を国民に理解しやすいように解析し、公表する。
(5)環境有害因子の健康影響の発生メカニズムの解明とその検出手法の開発に関する研究
  重金属、有機塩素系化合物、大気汚染ガス、放射線及び電磁波等の健康影響について、遺伝子から肉眼的影響や行動影響までの多彩な指標を用い、量・反応関係に基づいた影響評価とそのメカニズムの解明をめざす。また、その成果を疫学における野外調査へと応用する技術を確立する。中でも、これら因子の単独あるいは複合曝露条件下において、T細胞を起点とした免疫・アレルギー影響、神経・行動影響、呼吸器・循環器影響、次世代影響、発癌、酸化ストレスなどに着目して、その毒性発現のメカニズムを動物個体レベル、細胞レベルで検討を行う。化学物質過敏状態に関する特別研究、トキシコゲノミクスを利用した健康・生態影響評価法に関する特別研究、ナノテクノロジーを活用した健康影響の把握手法に関する研究を実施する。また、今年度からグリーンケミストリーを利用した有害物質の代謝物の分析に関する研究を実施する。
4.多様な自然環境の保全と持続可能な利用
(1)生物多様性の減少機構の解明と保全に関する研究
  微生物、底生動物、昆虫類、植物等の各生物系統における多様性の実態を把握するとともに各生物系統の多様性に及ぼす環境ストレスの影響の生理学的・生態学的・分子生物学的メカニズムを解明する。特に、日本において絶滅が危惧されている藻類の分布・生育状況を調査するとともに、分子系統解析を行う。また、微細藻類の多様性を把握するために不可欠な分類学的研究をアジア地域において展開する。発生工学的手法を用いた鳥類の個体増殖による多様性維持を目指して、生殖幹細胞を用いた生殖巣キメラ個体による新規手法の開発を行う。
  流域ないし地域スケールでの生物多様性の変動を予測できる二次元空間モデルの開発を行う。野生生物の地理的分布の文献・フィールド調査を行い、地図情報化する。流域を構成するさまざまな単位(ほぼ均一な局所生態系)の成立要因や種多様性との関連性を明らかにし、種多様性や分布を推定する手法を開発する。土地改変や気候変動の歴史的情報から野生生物の分布変化を把握する手法を開発する。
  侵入生物の侵入経路、現在の分布、在来生物へのインパクトなどの情報のデータベース化と地図情報化を行い、分布拡大の原因を分析する。さらに、遺伝的撹乱の実態調査を行う。また、遺伝子組換え生物の生態系影響評価手法を開発するため、分子生物学的手法による安全性検査手法の開発、モデル実験生態系の設計、並びに組換え遺伝子の自然界への侵入拡大の調査を行う。遺伝子組換え大豆とツルマメの交配により生じる雑種の性質を調べるとともに、組換えナタネの環境中での分布、生育状況を調査する。
  多種生物競争系の解析を行うための個体ベースモデルを構築し、森林生態系における多種共存メカニズムを明らかにする。とくに、繁殖様式の種間変異、空間的変動、時間的変動が多種共存に与える影響を理論的に分析する。また、食物網の進化を説明する数学モデルを構築し、多種共存メカニズムとしての食物連鎖の役割を明らかにする。これらの結果を用いて、生息地の縮小・分断化や侵入生物・遺伝子組替え生物の生物多様性への長期影響を評価する。
(2)生態系の構造と機能及びその管理手法に関する研究
  霞ヶ浦の植生回復事業の実施されている湖岸とその参照の低湿地において、生態系レベルでの生物多様性と水草帯の機能について研究を行う。水草帯の成立条件の資料収集及びデータベース化、生態系レベルでの多様性と水草帯の機能の相互関係について研究し、水草帯の機能評価をするための基盤作りを行う。湿地、干潟の構成要素を典型的な景観単位にタイプ分けし、それぞれのタイプにおける物理化学的性質の測定と一次生産、分解活性などの物質循環機能の定量化を行い相互関係の解析を行う。リモートセンシング手法を利用し干潟・湿地生態系の各物質循環機能の空間的な不均一性を明らかにする。
  熱帯域においては、マレーシア半島部にモデルサイトを設置し、マレーシアの研究機関との協力で森林、農耕地などを対象に炭素蓄積機能、集水域保全機能、多様性保全機能などのエコロジカルサービスを評価するための研究をおこない、リスクアセスメントなどの生態系管理手法の開発を行う。
  メコン川流域生態系の長期モニタリング手法の確立を目指して、メコン川流域諸国の研究機関・大学のキャパシテイーアップためのトレーニングを行うとともに、モニタリングサイト、頻度、項目について検討を進める。
  チベット高原草地生態系における炭素循環機能を調査解析する。
5.環境の総合管理(都市域の環境対策、広域的環境問題等)
(1)浮遊粒子状物質等の都市大気汚染に関する研究
  浮遊粒子状物質等の都市大気汚染の発生源特性の把握、測定方法の開発、環境大気中での挙動の解明を行う。さらに地域濃度分布及び人への曝露量の予測、動物曝露実験による閾値の推定を行い曝露量と健康影響の関係を把握する。これらの結果を基に健康リスクを評価し発生源対策シナリオについて検討する。
  平成17年度には、大気環境中ナノ粒子の粒径分布や、形態、組成の把握に関する研究、沿道大気汚染の実態把握と対策研究、沿道曝露評価モデルの感度解析研究と対策効果評価研究、広域・都市大気汚染モデル活用研究等を重点的に実施する。研究を進めるにあたっては、地方自治体環境・公害研究機関との共同研究、並びに所内のプロジェクトや国内外の国公立研究機関、大学、民間との研究協力を行う。
(2)酸性雨等の長距離越境大気汚染とその影響に関する研究
  中国をはじめとする東アジア地域で発生する酸性雨原因物質、大陸性エアロゾルなどによる酸性雨・広域大気汚染の実態を明らかにするため、中国環境科学研究院等と共同し、また東アジア地域のライダーネットワーク観測を活用し、中国等北東アジア地域における大気汚染物質、大陸性エアロゾル等の空間分布観測を実施する。また、国内では沖縄辺戸岬の大気・エアロゾル観測ステーションにおけるエアロゾルの観測、日本各地における鉛同位体比測定を行う。これらに基づき、気流解析、大気汚染物質輸送モデルによる解析を進める。さらに次世代型ソース・リセプターマトリックスの精緻化と検証を行う。
(3)流域圏の総合的環境管理に関する研究
  衛星データと同期させることで植生の季節変化が考慮された地表流・土中水・地下水流を統合化したグリッド型水循環・熱収支モデルを長江流域と黄河流域を含む中国の南北にわたる広領域に拡張する.まず,個別的に,水不足傾向の華北地域については持続的な農業に関わる水資源管理の検討を行い,水資源が豊富で水災害ポテンシャルの高い華南地域については洪水制御機能に関わる水資源管理の検討を行う.次に,水資源の偏在に伴う不均衡による持続性への脅威を軽減させるための長江流域から黄河流域への大規模導水計画が地域的な水・熱循環プロセスに及ぼす影響,各々の流域の水資源利用から決まる導水量の評価等についての検討を行う。
(4)湖沼・海域環境の保全に関する研究
  河川・湖沼・海域の統一的な有機物指標による評価方法の確立を図るため、湖沼を含む流域圏を対象とし、溶存有機物(DOM)の特性や水生生物への影響に関する科学的知見を集積し、有機炭素を指標とした水質管理手法の枠組みを構築する。平成17年度は、湖水DOMの基礎的な特性(3次元蛍光特性、金属錯化能、分子量、糖類組成,アミノ酸組成,安定同位体比等)を微生物利用性や分解性の観点から評価する。
  沿岸海域の保全のため、瀬戸内海のフェリー航路を利用して栄養塩・植物プランクトンを継続的に計測し、これに基づいて海洋環境を持続的に評価して保全対策の基礎とする。特に、陸水域改変の増大によって海域へのケイ素流下量が減少してしまうことによる海洋生態系の変質に重点を置く。また、有明海のノリ問題に関連して浅海域環境管理手法を確立するため、植物プランクトン、ベントス、栄養塩の挙動を観測・評価する。
  また、サンゴ礁の水中画像によるモニタリングと流動モデルによってサンゴ卵・幼生の輸送を明らかにし、石西礁湖自然再生推進事業の一助とする。
(5)地下水汚染機構の解明とその予測に関する研究
  ガソリンやトリクロロエチレンなどの有機化合物類による地下水汚染現場を対象とするモニタリング調査結果の解析を行い、自然浄化機構の進行の証左とその解明を試みる。それらを組み込んだ科学的自然減衰(MNA)をわが国においても導入すべく手法の確立と実証サイトでの適用を試みる。
(6)土壌劣化、土壌汚染の機構解明とその予測に関する研究
  近年、使用量が増大しつつあるAg、In、Sn、Sb、Biなど、いわゆる次世代技術利用金属(以下「金属」と言う)の環境影響評価を行う。すなわち、国内外の様々な環境下での「金属」の溶出機構と環境(特に土壌)中動態の解明、生物相への影響評価とその解析手法の開発、地下水汚染の可能性予測、汚染地の浄化と再利用方法の確立などを目指して、以下の項目を詳細に検討する: 1)「金属」を含む材料の降雨暴露による溶出特性の解明(樹種、pHの影響など)、2)国内外の様々な土壌に埋め立てられた「金属」の溶出特性の解明(土壌型、有機物、pH、酸化還元条件の影響など)、3)「金属」が使用された実製品の廃棄に伴う汚染機構と汚染後の「金属」動態の解明、4)「金属」の生物影響(微生物増殖活性や群集構造への影響、植物への影響や吸収と植物の遺伝的特性との関係など)の解明、5)規格化を目指した「金属」の簡易溶出試験法の開発、6)結果の総括とデータベース化、及び種々の評価軸をもとにした「金属」の総合的影響評価、などである。
  また、有機塩素系や農薬などの有害化学物質による土壌、地下水汚染の機構解明と除去技術の開発を目的として、これらの有害化学物質を可溶化することのできる有機物が共存した場合の汚染挙動の変化を検討する。
6.開発途上国の環境問題
(1)途上国の環境汚染対策に関する研究
  開発途上国においては工業化・都市化の進展に伴い、かつて我が国が経験した大気汚染や水質汚濁などさまざまな環境汚染とそれに伴う健康被害に直面している。瀋陽市(13年度:石炭による都市暖房と自動車)、撫順市(14年度:都市暖房と工場排煙)、鉄嶺市(15年度:都市暖房のみ)で実施した大気汚染の実態調査、個人曝露評価と児童の肺機能を中心とした健康影響調査を16年度に再度瀋陽市で実施した。今年度は、報告書をとりまとめる。中国における石炭燃焼(特に民生用)からの SO2排出の低減のため、乾式選炭技術の開発と現地化バイオブリケット技術の普及促進、最近の自動車増加に対応して新しい低公害燃料であるバイオディーゼルの開発など、途上国に適した環境改善技術を検討する。
(2)途上国の経済発展と環境保全の関わりに関する研究
  アジア主要国を対象とした環境経済統合モデルと戦略的データベースを統合し、アジアの経済発展と環境問題との関連を分析するとともに、途上国の技術、制度、管理などに関するイノベーション・オプションを収集し、アジア地域においてイノベーションが環境対策に与える効果を推計する。また、アジア地域の経済発展と環境の関係を一貫して分析し、アジア地域の政策担当者が活用するための戦略的データベースを改良する。叙述シナリオ、社会・経済シナリオ、環境シナリオをベースに、戦略的データベースを活用して、持続可能な発展に向けた将来シナリオを構築する。
7.環境問題の解明・対策のための監視観測
(1)地球環境モニタリング
  温室効果気体のモニタリングに関しては、波照間・落石での従来の観測を継続しつつ、同位体・酸素濃度・HCFC・黒色炭素濃度などの観測研究のプラットフォームとしての利用に供する。シベリアにおけるフラスコサンプリングによる二酸化炭素高度分布観測を継続すると共に、連続測定機器による観測を併用し、地上での補助的な観測も合わせて時系列データ密度を高める。データをInverse Model に提供し、陸域二酸化炭素吸収の評価に利用する。苫小牧でのフラックス計測結果を取りまとめると共に、苫小牧の台風被害に伴う代替観測地の選定と機能再建を行う。土壌呼吸・林内上の二酸化炭素高度分布測定・同位体測定・タワー上からのスペクトル画像など観測研究のプラットフォームとして利用に供する。海洋表層水の二酸化炭素吸収については従来の貨物船の航路変更に伴い機材の撤収と新たな船舶への搭載を行う。ミリ波分光による成層圏オゾンの観測を継続する。有害紫外線のネットワーク観測を継続する。GEMS/Waterの観測を継続すると共にメコン川など国際河川のモニタリングを共同して行う。モニタリング全体としてはデータ解析を一層すすめ、その結果を公表する。
(2)衛星観測プロジェクト
  平成8年11月より平成9年6月まで運用観測を行った「改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)」および平成15年4月より10月まで運用観測を行ったILAS-IIの観測データの処理、保存およびアルゴリズムの改訂と検証済み処理結果(データプロダクト)の登録研究者/一般ユーザへの提供を行う。
  平成19年度に打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)プロジェクトにおける国立環境研究所分担の事業として、センサ開発への仕様要求検討、地上や航空機等による模擬観測実験、データ解析手法の開発、データの検証実験の検討、データ解析モデルによる温室効果ガスの放出/吸収分布の推定方法の開発などの研究を行う。

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