(別紙1) 重点研究分野の研究の方向
1.地球温暖化を始めとする地球環境問題への取り組み
重点研究分野
(1)温室効果ガスの排出源・吸収源評価と個別対策の効果評価に関する研究
平成16年度事業計画
温室効果ガスの変動要因の一つである陸域生態系や海洋による二酸化炭素の吸収・放出を推定するとともに、それら吸収源の増強や排出抑制に関する研究を行う。具体的には、
- グローバルな陸域・海洋吸収の評価を目的とした酸素/窒素比観測、炭素同位体比観測
- 亜大陸規模での二酸化炭素吸収評価を目的とした大気観測、草原生態系の炭素吸収を評価する観測研究
- 地域規模の二酸化炭素変動収支を明らかにするための観測とモデル開発
- 海洋吸収量変動の年々偏差の解明
- 鉄散布による海洋吸収量の増加実験
- 運輸部門について、交通需要の地域特性や燃料供給のライフサイクルを考慮した対策効果の評価手法と有効な対策の普及促進策に関する研究
- 建築物における空調・照明灯自動コントロールシステムに関する技術開発
重点研究分野
(2)地球温暖化に伴う地球環境変動の将来見通しに関する観測・解析・モデリングと影響評価に関する研究
平成16年度事業計画
主要な社会経済モデル及び温室効果ガス排出モデルを開発・統合するため、特に地域環境モデル、世界エンドユースモデルの開発及び環境−経済モデルの拡張を行い、アジア主要国における温室効果ガス削減ポテンシャルの推計、温暖化対策の経済影響、副次的影響の分析を行い、基本モデルのアジア主要国への移転を進めるとともに、アジアのイノベーションポテンシャルを検討し、戦略的データベースを適用して、イノベーションが温暖化抑制に果たす役割を分析する。また、過去100年程度の気候再現実験を引き続き行い、モデルの気候再現性や各種外部強制の気候変動に関するインパクトについて、その不確実性も含めて定量的に評価する。100年〜200年程度の温暖化実験を行い、温暖化に伴う降水特性変化の把握とその機構解明に取り組むとともに、高解像度モデルによる気候再現実験、温暖化実験に関してその一端を担うとともに、極端な気象現象を含んだ気候変化シナリオによる温暖化影響評価実験に着手する。さらに、昨年度途上国共同研究を通じて配布した影響評価モデルパッケージの利用を進めるとともに、適用を含めた評価を行うためにモデルの改良を行う。水資源影響モデルの精緻化を進め途上国へ適用する。影響プロセスモデルについては韓国、中国に移転する。また、適応策の物的被害、経済評価などの多面的評価を行うとともに、濃度安定化政策のための統合評価モデルを開発する。
重点研究分野
(3)京都議定書及び第二約束期間への我が国及びアジア諸国の対応可能性の政策研究
平成16年度事業計画
2012年以降の地球温暖化対策のあり方を検証する。現在の京都議定書の排出量抑制義務に続く2012年以降の新たな義務に関して、昨年度行った2012 年以降に関する論文のレビュー分析の結果を用いて複数のオプションを作成し、各オプションに関して特長や想定される交渉過程を含めたシナリオを作成する。他方、主要国の同課題に対する態度を分析するためのデータとして、ロシアの京都議定書批准動向、EU域内排出量取引、わが国の温暖化対策大綱の見直し、米国の大統領選挙を含めた気候変動政策に影響を及ぼす政治経済的情勢、等の動向について常に最新の情報を収集する。さらに、陸域炭素管理オプションに関する包括的な将来予測を行い、京都議定書の第2約束期間以降の政策立案に資する包括的な知見を得る。最後に、上記研究の成果を包括し、最も国際合意が得られそうなもの等の観点からオプションを評価し、国際制度のパッケージをデザインする。
重点研究分野
(4)オゾン層変動及び影響の解明と対策効果の監視・評価に関する研究
平成16年度事業計画
極域オゾン層を中心に、衛星観測、地上モニタリング等により得られた観測データ、あるいはその他の種々の観測データを活用した解析的研究を進める。具体的には、ILAS/ILAS-IIデータを用いたMatch Techniqueによるオゾン破壊量の定量化−特に南極オゾンホール内のオゾン破壊解析のためのMatch解析手法の改良とオゾン破壊速度に見積もり−、ガス状硝酸濃度の時系列変化の導出ならびに硝酸濃度とオゾン量の関係の解析、極成層圏雲の発生メカニズムの解明とオゾン破壊への影響評価、地上分光観測による微量成分導出結果と衛星観測との比較等を行う。 また、地上モニタリングデータを活用して、オゾンの季節変動、長期トレンドを解析する。
成層圏化学気候モデルを用いた研究として、CO2漸増条件下での成層圏オゾンの長期変動の数値実験結果から変動幅の評価や変動要因の解析を行う。また、重力波効果のパラメタリゼーション等を通した、化学気候モデルの改良も進める。更に、臭素系のオゾン破壊反応系を導入した化学輸送モデルを用いて、オゾン破壊に対する臭素系反応の寄与の評価や低緯度帯におけるオゾン低濃度領域の年々変動原因の解明を行う。光化学トラジェクトリーモデル結果とILASデータ及び地上観測データとの比較による極渦内でのオゾン破壊量の推定、及び時間閾値解析法を用いた極渦内外の物質輸送量の見積もりを行う。
紫外線の人の健康に対する影響評価研究として、気象庁から公表されている札幌、つくば、鹿児島、那覇におけるオゾン量及び紫外線量観測値、ならびに国内20数地点で実施中の帯域別紫外線計による観測値の解析により、成層圏オゾン層変動が紫外線地表到達量に及ぼす影響を定量・評価を引き続き進めていくとともに健康影響調査への活用を図る。併せて、対流圏オゾン、大気汚染物質等の影響評価も行う。
2.廃棄物の総合管理と環境低負荷型・循環社会の構築
重点研究分野
(1)環境低負荷型・循環型社会への転換支援のためのシステム分析手法と基盤整備に関する研究
平成16年度事業計画
経済活動に伴う物質フローを、経済分析との整合性やミクロからマクロにわたるスケール横断性を考慮しながら、 資源制約等の長期的問題、資源貿易の背後に隠れたフローやリサイクル目的の輸出入等の国際的問題を視野に入れて分析するための手法、 これに付随する環境影響の現状や各主体の取り組み促進による低減効果を産業部門や製品のライフサイクルに着目して定量化する手法について研究を推進するとともに、 これらの手法の適用に必要な基礎情報整備やこれらを利用した事例研究を廃棄物・循環資源関連部門を中心に行う。 また、地域レベルにおける廃棄物・循環資源の移動と再利用を規定する諸要因の検討、物質循環性・環境負荷ならびに経済効果からみた地域適合性の診断手法の検討、耐久財関連の循環資源の適正管理手法に関する検討を行う。 さらに、リサイクル製品の利用形態に応じた安全性評価手法などに関する検討を行う。
重点研究分野
(2)廃棄物の資源化・適正処理技術及びシステムに関する研究
平成16年度事業計画
熱処理プロセスからの環境負荷物質の排出特性及び高効率処理等を含めた実態の把握を進めることでプロセス評価・データベース化への展開を図るとともに、そのための基礎となる物質の物理化学性状値について高疎水性物質を中心にデータ蓄積を進める。また、有機性廃棄物の循環システムの物質収支、環境及び経済的な評価手法の検討を進めるとともに、各種循環資源化要素技術のベンチ及びプラントスケールでの実験的検討を継続する。さらに、最終処分場用地確保と容量増加に必要な技術を評価するために実地調査を行うとともに、海面最終処分場のリスク管理や環境影響上の特性を評価する。加えて、処分場の安定化状態や不適正処分場の修復の必要性を診断する診断指標の検討を進め、既存また新規の安定化・修復技術を実験的に評価する。
重点研究分野
(3)廃棄物処理に係るリスク制御に関する研究
平成16年度事業計画
資源化や処理処分の場に流入する有害物質を総合的に判断する予測・評価手法として、化学分析手法とバイオアッセイ手法を活用した研究を推進する。残留性有機汚染物質や重金属類で廃棄物に関連する物質を主たる対象とする。難分解性化学物質の分解技術として、熱水分解、紫外線分解や触媒分解などを取り上げ、PCBなどの残留性有機汚染物質を含む廃棄物への応用研究を行う。環境汚染を招く恐れのある不法投棄の抑制と監視のための管理方策について、建設系廃棄物を対象に物流解析を基に検討を行う。また、長期的な全地球的資源制約を念頭におき、より一層の資源循環利用をはかるため、関連する資源循環・廃棄物管理システムのリスク管理に資する基盤情報として廃棄過程の重金属類の物質移動情報を収集整備する。
重点研究分野
(4)汚染環境の浄化技術に関する研究
平成16年度事業計画
公共用水域への汚濁負荷削減と資源循環利用の両立を図るため、液状廃棄物としての生活系排水、小規模事業場排水及び汚染環境の場を対象とした生物処理工学、生態工学の各種要素技術の開発を行うとともに、 これらの要素技術を汚染環境の場に応じて適正組合せシステム化することによる国内外を対象とした資源循環型の汚染環境保全・再生システム創りの基盤・応用化の技術開発・実証化と適正評価の研究を実施する。 すなわち、廃棄物に関連するさまざまな環境媒体を修復するための有機汚濁浄化システム、リン資源回収型高度処理浄化システム、分子生物学的手法を導入した適正管理型浄化システム、 植栽・土壌を活用した浄化システム及び土壌・地下水の硝酸汚染を防止する生物物理化学的窒素除去システムの技術開発と同時に厨芥ディスポーザー処理システム、浄化槽システムの性能解析評価と環境・経済影響解析評価に基づく実証化システム構築の検討を行う。
3.化学物質等の環境リスクの評価と管理
重点研究分野
(1)内分泌かく乱化学物質のリスク評価と管理に関する研究
平成16年度事業計画
内分泌かく乱化学物質の分析技術に関して、液体クロマトグラフ核磁気共鳴分光法等の新規技術および選択的濃縮剤の開発、高感度・迅速な各種in vitroアッセイシステムによる多数化学物質のスクリーニングを行う。環境中の汚染実態の解明として、東京湾及び霞ヶ浦における環境ホルモンの分析とデータのとりまとめを行う。野生生物への影響に関して、巻貝の雄性化、メダカの雌性化及び鳥における甲状腺過形成の現状調査などを行う。人への影響に関する検討として、脳神経機能への影響を画像診断する高感度機能イメージング手法、超高磁場MRI装置の基本的測定システムの確立、胎児期等に甲状腺ホルモンが不足した実験動物を用いた行動試験等の検討を行う。さらに、動物の生殖機能、特にステロイド代謝系への影響評価、ならびにストレス関連ホルモン分泌動態に係る内分泌疫学研究を行う。分解処理については、環境における生分解についての知見を集積するとともに、植物による内分泌かく乱化学物質の不活性化や微生物を用いた分解とそのメカニズムの解明を行う。内分泌かく乱化学物質等の管理と評価のための統合情報システムについては、大気グリッド−河川流域複合の多媒体環境動態モデルの構築を行うと共に、地理統計的手法の検討を行う。
重点研究分野
(2)ダイオキシン類のリスク評価と管理に関する研究
平成16年度事業計画
ダイオキシン類の簡易・迅速な計測手法について、簡易なサンプリング法、クリーンアップ法や低分解能質量分析法、生物検定法の評価を行なうとともに、リアルタイムモニタリング手法の検討を行う。ダイオキシン類、多環芳香族炭化水素類の複合曝露モデルとしてディーゼル排気曝露装置を用い、ディーゼル排気の経気道曝露によるそれら化合物の体内への取り込み量と酸化ストレスとの関係を実験動物を用いて検討する。コプラナーPCBが有する非ダイオキシン様の毒性の実体とそのメカニズムの解明に関する研究を行う。さらに、培養細胞系における生体防御反応におけるシグナル伝達経路と転写因子の役割について検討する。臭素化ダイオキシン類について、環境試料の分析法の検討、人体試料及び底質コア試料中の臭素化ダイオキシン類及び臭素化ジフェニルエーテルの分析を行う。地球規模のダイオキシンの移動・分布等について、太平洋をフィールドとした生物蓄積についての検討を行なう。ダイオキシン類及びPOPsの環境運命予測に関する研究として、グリッド型多媒体運命予測モデルに、地域内における輸送特性と長距離輸送モデルを組み込むことについて基礎的検討を行う。
重点研究分野
(3)化学物質の環境動態の解明とモニタリング手法の開発に関する研究
平成16年度事業計画
加速器MSのガスイオン化源の改良を行い、感度の長期安定性とメモリー効果の低減を図り、地球温暖化関連物質や環境汚染物質の成分別の14-Cの高精度・高スループット測定を実現する。高沸点や揮発性に乏しい化学物質などを選択性良く同定できる液体クロマトグラフMS-MSの応用をすすめ、医薬品等への適用に関する検討を行う。また、急速に発展しているナノテクノロジーやマイクロ化学などの成果を環境計測に取り込む基礎的な検討を行い、測定法の簡易化、高頻度時空間測定、汚染物質バイオセンサー開発、パーソナルモニターなど、先導的な環境計測技術の検討を行う。
個別分析手法の精度管理の手法のみならず、環境モニタリング手法とその精度管理に係る研究を実施し、環境保全・改善に有効に利用できるモニタリングデータの収集・処理に関する基礎的な検討を行う。特に、ダイオキシンなどの極微量な有害化学物質のモニタリング手法の最適化・標準化などに関する基盤的な検討を行う。
大気中の低分子量有機ハロゲン化合物、環境残留性有機汚染物質(POPs)など、地球規模で環境に影響を及ぼしている環境汚染物質の汚染実態把握、挙動解明を行い、長期的な変動を予測する。国内外で水土壌圏に対して重篤な環境汚染を引き起こしているヒ素やホウ素に関して、その環境動態を明らかにし、その対策を検討する。また、世界的に希少な長寿命湖沼の底質を利用した古環境解析研究を、特に東北アジアを中心として、加速器MS、ICP同位体MSなど先端的な計測手法を活用して実施する。
重点研究分野
(4)化学物質のリスク評価と管理に関する研究
平成16年度事業計画
空間・時間変動を考慮した曝露評価手法の開発について、PRTR物質を中心に空間分布の詳細な推定を行うとともに、時間変動予測モデルの開発に向けてPOPsの経年的インベントリーを作成する。 また、体内に取り込んだ化学物質の動態モデルを作成し、時間変動予測モデルとの統合を検討する。開発した河川、内湾モデルなどの改良・検証を行うとともに、具体的な物質群に適用して曝露可能性に基づく優先順位付けを行う。 感受性要因を考慮した健康リスク評価手法を開発するため、感受性を決定する遺伝子多型の解析を進めるとともに、化学物質に対する感受性との関連を解析する。 バイオアッセイの測定結果をモニタリング指標として活用するために、体内で化学物質が示す変異原性と発がん性の定量的な関係を求める実験を行う。有害大気汚染物質を対象に、作用機構を考慮した複合曝露評価手法の検討を行う。 収集した生物影響データを生物種毎に整理・解析し、甲殻類と藻類について構造活性相関手法の開発を試みる。住民に分かりやすいリスク情報の加工方法を検討し、データベースを構築・提供する。 PRTRの報告結果を国民に理解しやすいように解析し、公表する。
重点研究分野
(5)環境有害因子の健康影響の発生メカニズムの解明とその検出手法の開発に関する研究
平成16年度事業計画
重金属、有機塩素系化合物、大気汚染ガス、放射線及び電磁波の健康影響に関して、遺伝子から行動影響までの指標を用いて量・反応関係に基づきそのメカニズムを解明し、その成果を疫学における野外調査へと応用する技術を確立する。中でも、これら因子の単独あるいは複合曝露条件下において、T細胞を起点とした免疫機能、脳行動、発がん、酸化的ストレス、次世代影響などに着目して、その毒性発現のメカニズムの検討を行うと共に、肺のガス交換機能のモデル細胞系など実験動物に代わるアッセイ法の開発を行う。また、昨年度から開始した化学物質過敏状態に関する特別研究、ナノテクノロジーを活用した健康影響の把握手法に関する研究を実施する。
4.多様な自然環境の保全と持続可能な利用
重点研究分野
(1)生物多様性の減少機構の解明と保全に関する研究
平成16年度事業計画
微生物、底生動物、昆虫類、植物等の各生物系統における多様性の実態を把握するとともに各生物系統の多様性に及ぼす環境ストレスの影響の生理学的・生態学的・分子生物学的メカニズムを解明する。特に日本において絶滅が危惧されている藻類の分布・生育状況を調査するとともに、微生物多様性を把握するために不可欠な分類学的研究をアジア地域において展開する。発生工学的手法を用いた鳥類、ほ乳類の個体増殖による多様性維持を目指して、生殖幹細胞を用いた生殖巣キメラ個体による新規手法の開発を行う。森林の樹木の多種共存メカニズム解明のために開発したモデルをベースに、現場調査でのモデルの検証を行うと同時に、生物多様性変動機構解明のための食物網モデルのさらなる解析を進める。これまでに蓄積された野生生物の分布情報を用いて置換不能度を計算し、保全の重要地点を抽出するとともに、動物地理区分と保全を目的とした地理区分との比較検討を行う。流域スケールで生息適地を評価するモデルから生物多様性を保全することを目標としたモデルへの発展を図るとともに、ため池の生物多様性保全に不可欠な保全地区の設定手法の開発並びに河川形状の変遷に伴う水魚類多様性減少に対する景観要因の解析を行う。生息適地分布モデルを適用して侵入生物の生態リスク評価手法を開発するとともに、侵入生物の分布拡大パターンの解析を行う。組み換え大豆とツルマメの遺伝子移行に関する圃場実験を実施するとともに、環境中での標的微生物の機能を解析するためにmRNAによるモニタリング手法の開発を行う。
重点研究分野
(2)生態系の構造と機能及びその管理手法に関する研究
平成16年度事業計画
霞ヶ浦の植生回復事業の実施されている湖岸とその参照の低湿地において、生態系レベルでの生物多様性と水草帯の機能について研究を行う。水草帯の成立条件の資料収集及びデータベース化、生態系レベルでの多様性と水草帯の機能の相互関係について研究し、水草帯の機能評価をするための基盤作りを行う。湿地、干潟の構成要素を典型的な景観単位にタイプ分けし、それぞれのタイプにおける物理化学的性質の測定と一次生産、分解活性などの物質循環機能の定量化を行い相互関係の解析を行う。 リモートセンシング手法を利用し干潟・湿地生態系の各物質循環機能の空間的な不均一性を明らかにする。熱帯域においては、マレーシア半島部にモデルサイトを設置し、マレーシアの研究機関との協力で森林、農耕地などを対象に炭素蓄積機能、集水域保全機能、多様性保全機能などのエコロジカルサービスを評価するための研究をおこない、リスクアセスメントなどの生態系管理手法の開発を行う。
5.環境の総合管理(都市域の環境対策、広域的環境問題等)
重点研究分野
(1)浮遊粒子状物質等の都市大気汚染に案する研究
平成16年度事業計画
浮遊粒子状物質等の都市大気汚染の発生源特性の把握、測定方法の開発、環境大気中での挙動の解明を行う。さらに地域濃度分布及び人への曝露量の予測、動物曝露実験による閾値の推定を行い曝露量と健康影響の関係を把握する。 これらの結果を基に健康リスクを評価し発生源対策シナリオについて検討する。
平成16年度には、大気環境中ナノ粒子の研究や、沿道大気汚染対策研究、広域・都市大気汚染モデル開発研究を重点的に実施する。
研究を進めるにあたっては、地方自治体環境・公害研究機関との共同研究、中国都市大気汚染特別研究、中国北東地域黄砂研究、開発途上国健康影響評価研究などの所内のプロジェクトや国内外の国公立研究機関、大学、民間、並びにJCAP2プロジェクト等の外部との研究協力を行う。
重点研究分野
(2)酸性雨等の長距離越境大気汚染とその影響に関する研究
平成16年度事業計画
中国における酸性雨原因物質の空間分布や広域光化学大気汚染の実態を明らかにするため、中国環境科学研究院と共同で中国における大気汚染物質等の観測を実施する。 また、日本各地における鉛同位体比測定を含む大気汚染物質連続観測やライダー観測、化学成分に着目したエアロゾルの観測を進めるとともに、奥日光地域等の森林地域におけるオゾンや過酸化物の濃度およびそのフラックスの測定を行う。 これらに基づき、気流解析、大陸起源汚染物質の輸送の解析、モデルによる検討を進める。さらに重金属等の発生源インベントリー作成、次世代型ソース・リセプターマトリックスの精緻化と検証を行う。
重点研究分野
(3)流域圏の総合的環境管理に関する研究
平成16年度事業計画
長江流域からの汚濁負荷量の予測手法の開発をすすめるとともに,その基礎となる河川における汚濁負荷動態ならびに大都市における負荷発生量に関する観測とデータベース化を行う.さらに,三峡ダム湖の水質モデルを開発するため,ダム湖における水質連続観測を行う。陸棚域(日本EEZ内)において観測されたProrocentrum dentatum 赤潮と中国沿岸域で報告されている同種赤潮との直接的な関係を検討するために,有光層・密度躍層上層における藻類維持機構について航海調査や大型培養実験系を通じて把握するとともに、流動モデル解析によって長江淡水と粒子状物質の陸棚域への時空間的な輸送・拡散動態を把握し,本赤潮種の発生起源・消長、本種優占海域の食物連鎖への影響を明らかにしていく。
重点研究分野
(4)湖沼・海域環境の保全に関する研究
平成16年度事業計画
河川・湖沼・海域の統一的な有機物指標による評価方法の確立を図るため、湖沼を含む流域圏を対象とし、溶存有機物の特性や水生生物への影響に関する科学的知見を集積し、有機炭素を指標とした水質管理手法の枠組みを構築する。平成16年度は、三次元流動モデルと実測データの比較検討により霞ヶ浦における難分解性溶存有機物(DOM)の季節的・場所的変動を明らかにする。また、DOMの基礎的な特性(3次元蛍光特性、金属錯化能、トリハロメタン生成能、分子量、糖類組成,アミノ酸組成,構造解析(13C−NMR)等)を微生物利用性や分解性の観点から評価する。
沿岸海域の保全のため、瀬戸内海のフェリー航路を利用して栄養塩・植物プランクトンを継続的に計測し、これに基づいて海洋環境を持続的に評価して保全対策の基礎とする。 特に、陸水域改変の増大によって海域へのケイ素流下量が減少してしまうことによる海洋生態系の変質に重点を置く。 また、有明海のノリ問題に関連して浅海域環境管理手法を確立するため、植物プランクトン、ベントス、栄養塩の挙動を観測・評価する。
また、サンゴ礁の水中画像によるモニタリングと流動モデルによってサンゴ卵・幼生の輸送を明らかにし、石西礁湖自然再生推進事業の一助とする。
重点研究分野
(5)地下水汚染機構の解明とその予測に関する研究
平成16年度事業計画
ガソリンやトリクロロエチレンなどの有機化合物類による地下水汚染現場を対象とするモニタリング調査結果の解析を行い、自然浄化機構の進行の証左とその解明を試みる。 それらを組み込んだ科学的自然減衰がわが国においても導入すべく、その方法論的な確立を目指す。
重点研究分野
(6)土壌劣化、土壌汚染の機構解明とその予測に関する研究
平成16年度事業計画
次世代技術利用金属(Ag、In、Sn、Sb、及びBi)の土壌中動態を明らかにする目的で、大型ライシメーター試験や小型土壌カラム試験を利用して、 1)金属の天然賦存量と存在形態、2)金属の移動特性、3)金属の存在形態の経時的変化、4)それらの項目と土壌種や土壌環境因子との関連性、などを検討する。また、これら金属の土壌微生物への影響についても培養試験などを用いて検討する。さらに、製品や廃棄物からの金属の溶出特性を明らかにするために、金属の降雨暴露実験を実施する。以上の結果を総合し、次世代技術利用金属の土壌負荷機構と土壌中動態の解明、ならびに土壌生態系に対する影響評価を行う。
有機塩素系や農薬などの有害化学物質による土壌、地下水汚染の機構解明と除去技術の開発を目的として、これらの有害化学物質を可溶化することのできる有機物が共存した場合の汚染挙動の変化を検討する。
6.開発途上国の環境問題
重点研究分野
(1)途上国の環境汚染対策に関する研究
平成16年度事業計画
開発途上国においては工業化・都市化の進展に伴い、かつて我が国が経験した大気汚染や水質汚濁などさまざまな環境汚染とそれに伴う健康被害に直面している。そこで、瀋陽市(13年度:石炭による都市暖房と自動車)、撫順市(14年度:都市暖房と工場排煙)、鉄嶺市(15年度:都市暖房のみ)で実施した大気汚染の実態調査、個人曝露評価と児童の肺機能を中心とした健康影響調査を16年度に再度瀋陽市で実施し、都市間の比較とともに、3年前の結果と比較し大気汚染の改善対策を検討する。さらに、中国における石炭燃焼(特に民生用)からのSO2排出の低減のため、乾式選炭技術の開発と現地化バイオブリケット技術の普及促進、最近の自動車増加に対応して新しい低公害燃料であるバイオディーゼルの開発など、途上国に適した環境改善技術を検討する。
重点研究分野
(2)途上国の経済発展と環境保全の関わりに関する研究
平成16年度事業計画
アジア主要国に適用できる本格的な環境?経済統合モデルを用いて、アジアの経済発展と環境問題との関連を分析するとともに、途上国に適用可能なイノベーションの情報を収集し、アジア地域においてイノベーションが環境対策に与える効果を推計する。 また、アジア地域の経済発展と環境の関係を一貫して分析し、分析結果をアジア地域の政策担当者が活用するための戦略的データ・ベースを改良する。 叙述シナリオ、社会・経済シナリオ、環境シナリオをベースに、戦略的データベースと環境−経済モデルを統合して、持続可能な発展に向けた将来シナリオを構築する。
7.環境問題の解明・対策のための監視観測
重点研究分野
(1)地球環境モニタリング
平成16年度事業計画
温室効果気体のモニタリングに関しては、波照間・落石での従来の観測を継続しつつ、同位体・酸素濃度・HCFC濃度などの観測研究のプラットフォームとしての利用に供する。シベリアにおけるフラスコサンプリングによる二酸化炭素高度分布観測を継続すると共に、連続測定機器による観測を併用し、地上での補助的な観測も合わせて時系列データ密度を高める。データをInverse Model に提供し、陸域二酸化炭素吸収の評価に利用する。苫小牧でのフラックス計測を継続すると共に、土壌呼吸・林内上の二酸化炭素高度分布測定・同位体測定・タワー上からのスペクトル画像など観測研究のプラットフォームとして利用に供する。海洋表層水の二酸化炭素吸収については従来の貨物船の航路変更に伴い機材の撤収と新たな船舶への搭載を行う。ミリ波分光による成層圏オゾンの観測を継続する。有害紫外線のネットワーク観測を継続する。GEMS/Waterの観測を継続すると共にメコン川など国際河川のモニタリングの検討を行う。 モニタリング全体としてはデータ解析を一層すすめ、その結果を公表する。
重点研究分野
(2)衛星観測プロジェクト
平成16年度事業計画
平成8年11月より平成9年6月まで運用観測を行った「改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)」の検証済み処理結果(データプロダクト)の一般ユーザへの提供を継続して行う。平成14年12月に打ち上げられ、平成15年4月から10月まで定常観測を行ったILAS-IIの観測データの再処理、保存、提供およびアルゴリズムの改訂を行う。 この際、ILASに係る処理アルゴリズム検討結果及び再処理データを活用する。平成19年度に打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)プロジェクトにおける国立環境研究所分担の事業として、センサ開発への仕様要求検討、地上や航空機等による模擬観測実験、データ解析手法の開発、データの検証実験の検討、データ解析モデルによる温室効果ガスの放出/吸収分布の推定などの研究を行う。
