(別紙2) 重点特別研究プロジェクトの平成14年度事業計画
1.地球温暖化の影響評価と対策効果
重点特別研究プロジェクト
1−1 炭素循環と吸収源変動要因の解明
平成14年度事業計画
- グローバルな陸域・海洋吸収の評価を目的として、平成13年度に整備した酸素濃度自動分析装置の運用、太平洋上の船舶での大気サンプリングによる酸素/窒素比観測、炭素同位体比観測の充実を図る。同時に国際的データ統合に向けた同位体比測定の試料の調整や比較実験等を行う。
- 亜大陸規模での二酸化炭素吸収評価を目的として、トムスクのタワーにおいて、二酸化炭素・メタン・オゾン・ラドンの高度分布の自動測定を実施する。また、これを支援する観測として、航空機による高度分布の高頻度観測を行う。草原生態系の炭素収支を評価する観測研究を行う。
- 地域規模の二酸化炭素変動収支の観測研究として、苫小牧を中心とした森林の二酸化炭素収支の観測、土壌呼吸の自動観測、炭素同位体の変動、遠隔計測による樹高分布、スペクトル画像の航空機による観測や定点季節変動観測、スペクトルと樹木の光合成活性との関連などの研究を継続する。リモートセンシング画像、地理情報の蓄積の上に、モデルによる吸収量の推計を組み合わせて、北海道の広域炭素フラックスの季節変動を予測する研究を行う。北海道西部における航空機による大気観測を実施する。
- 京都議定書で評価される全炭素アカウンティングシステムに関する研究を継続する。
- 陸域炭素収支の管理に関する研究を開始する。
- 北太平洋海域の定期貨物船航路で1995年から継続中の大気・海洋二酸化炭素分圧観測データの解析を行い、海洋吸収量変動の年々偏差を解明する。さらに、海洋の二酸化炭素吸収機構と関係する海洋パラメータについて、空間変動と季節変動の要因を、観測データの解析を通して明らかにする。このことから、気候変動による海洋吸収の変化の手がかりを得る。
重点特別研究プロジェクト
1−2 統合評価モデルを用いた地球温暖化のシナリオ分析とアジアを中心とした総合的対策研究
平成14年度事業計画
京都議定書及びその後の世界規模の経済発展や環境対策が、地球規模の気候変動及びその社会的・環境的影響をどの程度軽減するか、さらにはアジア地域の経済発展と環境問題を踏まえてどのような総合的対策を図るべきかを明らかにするため、以下の研究を行う。
- 主要な社会経済モデル及び温室効果ガス排出モデルを開発・統合するため、特にバイオエネルギー、省エネ技術、環境負荷除去技術、リサイクル技術の導入可能性とそれらが地域・地球環境保全に与える影響を評価するためのモデリング技術を開発し、アジア主要国に適応するとともに、アジア主要国のシナリオを精緻化し、温暖化対策と他の環境対策との関係を分析する。また戦略的データベースを開発する。
- 各種温室効果気体および各種エアロゾルの濃度の空間分布の時間変化を、それらのソース排出データから導出する方法を検討し、数値実験を実施する。また、地域気候モデルの開発を継続する。さらに、全球気候モデルに、過去の排出シナリオデータを与えて、過去100年の気候の再現実験を実施する。
- IPCCにより開発された将来の社会経済シナリオと、その社会経済条件を前提とした気候シナリオを用いて、温暖化の水資源への影響を需要と供給の両面からモデル分析し、水資源問題が深刻化する地域を検出する。また、予測される温暖化影響を経済的に緩和するための適応対策のデータベース化と、対策データベースに基づく適応対策評価手法について、予備的検討を行う。
2.成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明
重点特別研究プロジェクト
平成14年度事業計画
平成14年度11月以降に打ち上げ予定の改良型大気周縁赤外分光計II型(ILAS-II)のデータ処理運用システムの開発・試験、運用準備、およびアルゴリズム並びに運用システムの改訂を行う。この際、ILASに係る処理アルゴリズム検討結果及び再処理データを活用する。また、環境省が担当する地上検証実験に係る準備、データ利用研究者の組織化を引き続き支援する。衛星打ち上げ後は、運用(ILAS-IIセンサー運用、データ処理)及びセンサー機器特性の評価を開始するとともに、衛星データ検証のための準備作業を開始する。平成18年度頃の打ち上げを想定している傾斜軌道衛星搭載太陽掩蔽法フーリエ変換分光計(SOFIS)のデータ処理運用システムのためのアルゴリズム検討を進め、また、環境省が担当する機器設計・開発のための支援を行う。
国立環境研究所(つくば)設置のミリ波オゾン分光計について、下部成層圏から上部成層圏までの連続観測を可能にするための広帯域化を完成する。陸別成層圏総合観測室におけるミリ波オゾン分光計観測の結果と衛星データとを引き続き相互比較すると共に、極渦の影響を含め、オゾン層変動について解析を進める。国立環境研究所(つくば)におけるオゾンレーザーレーダー観測によるオゾン鉛直分布の変動要因の解析を進める。
極渦崩壊時の微量気体成分の子午面混合、改良したMatch Techniqueによるオゾン破壊量の定量化、窒素酸化物の分配比の季節変化とオゾン量の関係、等の解析を引き続き行う。また、極渦活動度の評価手法を確立し、北極及び南極極渦活動度の年々変動、長期トレンドを解析する。
大気大循環モデルを用いた研究として、成層圏における全球のオゾン分布および気温や水蒸気の分布の数値再現実験を行い、観測データとの比較によるモデル精度の評価を行う。また、化学輸送モデルに臭素系のオゾン破壊反応系を導入し、極域下部成層圏での極渦崩壊前後のオゾン破壊速度に対する臭素系の反応の寄与を評価する。対流圏界面付近での不均一反応の個々のオゾン破壊サイクルへの寄与見積もりに関わる反応データを整備する。また、光化学トラジェクトリーモデル結果とILASデータ及び地上観測データとの比較による極渦内でのオゾン破壊量の推定、及び時間閾値解析法を用いた極渦内外の物質輸送量の見積もりを行う。
3.内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理
重点特別研究プロジェクト
3−1 内分泌かく乱化学物質の総合的対策に関する研究
平成14年度事業計画
- 内分泌撹乱化学物質の分析手法に関して、液体クロマトグラフ質量分析法、液体クロマトグラフ核磁気共鳴分光法を用いた未知の環境ホルモンの同定方法の開発を行う。また、内分泌攪乱作用の生物検定法をさらに拡充する。昨年度までに開発した高感度・迅速酵母エストロゲンアッセイシステム等を用い、内分泌撹乱作用が疑われる多数(300)の化学物質についてスクリーニングを行い、内分泌撹乱化学物質データベースへの基礎的準備を行う。
- 東京湾及び霞ヶ浦における環境ホルモンの分析、及び蓄積についてのデータのとりまとめを行う。
- 巻貝の雄性化、及びメダカの雌性化の現状を調査するとともに、内分泌撹乱物質の生物検定法への応用を検討する。
- 脳・神経系への影響については、実験動物において内分泌撹乱化学物質が脳神経機能に与える影響を画像診断するための高感度機能イメージング手法の開発を行い、また、ヒト脳の画像診断のための超高磁場MRI装置の基本的な測定システムを確立する。また、胎児期及び幼若期に甲状腺ホルモンが不足した実験動物を用いた行動試験、また、有機スズ化合物を投与した実験動物において脳神経障害の発現部位を抽出する手法を検討する。更に、生体機能への影響評価について、アレルギー性疾患を増悪しうるか否かを検討するため、内分泌撹乱化学物質を投与したマウスもしくは次世代動物にアレルゲンを曝露し、組織学的検討、サイトカインを含めた生化学的検討を加える。
- 分解処理技術については、植物による内分泌撹乱化学物質(ビスフェノールA)の不活性化とそのメカニズムの解明を行う。
- 内分泌撹乱化学物質等の管理と評価のための統合情報システムについては、(1)河川構造と水量等の河川情報データベースを作成し、GISシステム上に河川モデルを構築する。(2)これに基づき、PRTR排出量データ等を利用する河川濃度予測モデルを構築する。(3)上記にさらに大気グリッドを複合することにより、大気グリッド?河川流域を複合した、多媒体環境動態モデルの基本構造を構築し、定常モデルによるケーススタディーを実施する。
重点特別研究プロジェクト
3−2 ダイオキシン類の総合的対策の高度化に関する研究
平成14年度事業計画
- 簡易・迅速な計測手法については、低分解能質量分析法、生物検定法の評価を行う。
- ヒトにおけるダイオキシン類の曝露量の把握のため、ヒトの生体試料(血液、皮下脂肪、胎盤、羊水、胎脂等)中のダイオキシン類濃度の測定を行う。また、ダイオキシン類の曝露により鋭敏に動くと考えられるCYP1A1,1A2,1B1のリアルタイムRT-PCRによる測定法を確立する。更にダイオキシン類に対する感受性について、ARNT、ステロイドホルモン産生系の代謝酵素群の遺伝的多型、エストロゲン応答遺伝子の発現量の違いに着目して検討を行う。
- 内分泌かく乱作用を介したダイオキシン類の毒性メカニズムの解明のため、実験動物を用いて、(1)精子形成、受精、胎盤機能 、(2)脳の性分化と出生後の行動、甲状腺ホルモンへの作用、ならびに、 (3)T細胞機能等の免疫機能に及ぼす影響について検討する。
- 臭素化ダイオキシン類について、底質、生体試料に対する分析法の検討を行い、特に感度の向上と妨害物質の影響に関する基礎的検討を行う。また、底質コア試料中の臭素化ダイオキシン類及び、臭素化ダイオキシン類の主要な給源と予想される臭素化ジフェニルエーテルの分析を行い、現在の環境状況に関する基礎的理解を得る。
- 地球規模のダイオキシンの移動・分布等について、太平洋をフィールドとした生物蓄積についての検討を行う。
- ダイオキシン類及びPOPsの環境運命予測に関する研究として、ダイオキシン類に対するグリッド型多媒体運命予測モデルを構築し、これを用いて、地域内における輸送特性と物性特性の関連性について検討を行い、長距離輸送モデルの構造について基礎的検討を行う。
4.生物多様性の減少機構の解明と保全
重点特別研究プロジェクト
平成14年度事業計画
- 関東〜全国スケールで鳥類・淡水魚類・鱗翅目とトンボ目昆虫についてその分布情報を地形・植生・土地利用の情報とともに収集し、生息適地推定を行う。また、過去の航空写真などから植生/土地利用の情報をデジタル地図化する。
- 前年度に引き続き、流域,局所生態系で景観要素と生物群集の関係の調査解析を行い、生息環境の破壊・分断・護岸改修工事・富栄養化・外来魚などの人間活動が水生生物とその多様性に及ぼす影響を明らかにし、その生態学的なメカニズムの解明を行う。
- 森林の樹種の分布パターンと樹種ごとの優占度の違いがどのようなパラメータに依存するのかを調べる.また,国内の森林での調査データにもとづいて樹種の分布パターン等の解析を行い,モデルの出力と照らし合わせて,モデルの妥当性を検討する。
- 侵入種の情報収集を継続して行い、侵入種の特性を類型化する。侵入種の侵入・定着域における生物相・景観の変化を過去にさかのぼって解析する。また、野外で侵入種と在来近縁種の間での種間交雑・遺伝子浸透の実態を分子生物学的手法を用いて解析する。さらに、輸入生物資材の抜き取り調査で、寄生生物の侵入状況を明らかにする。
- 組換え体の挙動調査に用いるマーカー遺伝子(形態異常、発光、水銀化合物分解酵素遺伝子)を導入した組換え生物について、その生育、繁殖能などの性質やマーカーの安定性等を調べるとともに、マイクロアレイ法による組換え生物の評価法について検討する。
5.東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理
重点特別研究プロジェクト
平成14年度事業計画
- 国環研がウルムチに、中国科学院が北京に設置したEOS-TERR/MODISデータ受信局より構成される環境モニタリングネットワークに基づく東アジアにおける環境の変化が生物多様性と炭素収支に及ぼす影響を見積もることを目的として、土地利用・土地被覆変化の抽出方法,純一次生産量の推定方法,および温暖化影響の検出方法を開発する。
- 衛星モニタリングデータとGISを利用した土壌水分推定手法(陸面水文植生モデル)の検証のため、森林、草地、荒漠地、畑地及び水田の植生生態系において熱エネルギーと水の輸送現象の観測を行う。
- 植生を含む地表面での流れと土中水・地下水流を記述する水循環の統合化モデルと土砂動態モデルを結合させ、国内の試験流域に適用し,その検証を行う。
- 三峡ダム建設地点より約30km下流の葛州覇ダム湖において、水質・生態系調査を実施する予定である。特に、ダムに向かって懸濁物が沈降することによる湖水内で太陽光減衰率の変化、温度成層形成と水界生態系構造との関係について精査し、生態系モデルの基礎的知見を得る。
- 長江沿いの大都市からの汚濁負荷量モデルを開発し、東シナ海に流入する汚染・汚濁物質量を推定するとともに、東シナ海への伝搬過程を衛星データ及び船舶により計測する。
- 自然に近い状態の海岸と修復技術の適用海岸における生物の増殖速度を現地調査する。実験系での物質循環を測定結果と、現地調査による底生生物の存在量に基づき、現場における物質循環を推定する。さらに、現場の一次生産を基点とした炭素、酸素等の物質循環を調査する。
6.大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価
重点特別研究プロジェクト
平成14年度事業計画
平成14年度は平成13年度に行った研究レビューを基に各研究分野における研究の現状と問題点を把握し、重点的に実施すべき研究を行う。特に、測定機器の実験室およびフィールドにおける実証試験、特定の地域をターゲットとした事例研究を実施する。これとともに個別研究課題に関する基礎実験や解析手法開発、野外観測、実験装置の製作等を順次実施する。研究を進めるにあたっては、国立環境研究所内の関連研究プロジェクトや国内外の国公立研究機関、大学、民間、並びにJCAP2プロジェクト等、外部との研究協力を行う。
- 発生源把握および対策シナリオ評価に関する研究
・ シャーシダイナモ設備による実験および走行モード調査等を実施する。
・ 車載計測等の手法を用いて、実走行状態での発生源特性を把握する。
・ 交通・物流データをもとにDEP排出量の地域分布推計を行う。
・ 発生源対策シナリオに関する基礎的な検討を行う。 - 環境動態把握および予測評価に関する研究
・ 広域・都市大気汚染の動態把握のための観測・調査・解析を実施する。
・ 複雑な道路構造地域における風洞実験、現地調査、モデル解析を実施する。
・ 広域・都市数値モデル解析、大気汚染データのトレンド解析を行う。
・ 大気汚染データの国際比較・解析を行う。 - 測定法の確立とモニタリングに関する研究
・ 有機炭素成分と元素状炭素成分測定方法を確立し発生源と環境の測定を行う。
・ 既存の大気環境測定装置の比較・実証試験を行う。
・ ガス状成分、粒子状物質計測モバイル型モニタリングシステムを環境調査に利用する。 - 疫学・曝露評価に関する研究
・ 地理情報システムを利用し大気環境濃度を把握する。
・ PM/DEP曝露量に関するマクロ推計モデルの各構成要素の設計を行う。 - 毒性・影響評価に関する研究
・ 正常および病態モデル動物を用いた微小粒子状物質曝露が呼吸-循環機能におよぼす影響の解析と生理学、病理学、生化学、免疫学的機構の検討を行う。
・ DEPによる感染性肺傷害の増悪メカニズムの解明に関する研究を行う。
・ エンジン運転条件等による排出微小粒子状物質の毒性スクリーニング手法を検討する。
・ デイーゼル粒子状物質曝露装置の検討を行う。
・ DE(ディーゼル排気)がアレルギー喘息の増悪作用等に及ぼす影響を調査する。
