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2005年5月11日掲載 |
| 二、三十年前は、スギ花粉を吸入してもペットのふけやダニと違い、アレルギー症状は引き起こさないものと考えられていました。しかし今年のように春先にスギ花粉が飛ぶようになると、花粉症のヒトが多くなります。 昔から日本に生育しているスギの花粉に対して、なぜ我々の体はこのように過敏に反応するようになってしまったのでしょう。スギの花粉自体は20−30ミクロンという大きさで、大部分は鼻でキャッチされ、肺までは到達しません。では、鼻の中でなにが起きているのでしょうか? いろいろな可能性が考えられますが、一つには、スギ花粉がきれいな状態では鼻にアレルギー症状を誘発するようには働かないが、花粉が都市部で浮遊する間に大気中のいろいろな化学物質を表面に吸着して汚れいていると、鼻でアレルギー反応を起こしやすくなるという説があります。 よく問題になるディーゼル車からの排出粒子は平均0.2−0.4ミクロンで、大気中で花粉の表面に吸着することは可能です。実際、スギの木から飛散した直後の花粉と都市部で採取した花粉とでは、電子顕微鏡で観察すると都市部のほうのスギ花粉の表面に、小さなゴミのようなものが多数付着しているという報告があります。 二つめの可能性は、鼻腔内の環境が外気や体質により変わり、発症に関与しているのではないかというものです。 大気中の化学物質の中には、吸入すると鼻汁中の成分を変化させるもののあることが明らかになっています。 花粉自体は、非常に堅固な殻で覆われており壊れにくくなっています。水に湿らせても簡単には壊れません。ただし、透明な膜がでて膨張する様子は観察されます。 しかしながら、アレルギー性鼻炎のヒトの鼻水・鼻汁に花粉をつけると大変壊れやすくなり、また花粉の中の蛋白質が溶出しやすくなることがわかりました(下図)。鼻水の中にスギ花粉を壊しやすくするものがあると考えられます。 スギ花粉症の症状は、スギ花粉の中にあるアレルゲン作用を有する蛋白質が鼻腔内で溶出することが引き金となって、免疫の機構が活発に働くことにより見られる症状です。 鼻腔内の粘膜の含量、組成などの変化がスギ花粉の壊れやすさや発症に関係しているのかもしれませんが、科学的には今のところ、そのしくみは不明です。 スギ花粉による蛋白質の溶出量
【環境健康研究領域 生体防御研究室長 藤巻秀和】 |
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