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Ⅳ 平成22年度終了特別研究
2.エピジェネティクス作用を包括したトキシコゲノミクスによる環境化学物質の影響評価法開発のための研究

研究の概要

環境化学物質の生体影響に関与する重要かつ未解明な機序であるエピジェネティクスについて、動物実験において無機ヒ素(以下ヒ素と記す)のエピジェネティック作用(DNAメチル化作用、ヒストン修飾作用)を中心に、作用の検索・機序・生体影響との関連を解明する研究を行った。メチル化DNA量の精密測定法を確立し、ヒ素長期投与によるグローバルなメチル化DNA量の変動や各種関連因子との関係を明らかにした。またヒ素の胎児期曝露や長期曝露について、発癌等生体影響、遺伝子発現変化、エピジェネティック変化を各種手法を用いて解析し、それらの因果関係や臓器特異性についての知見を得た。さらに、ヒ素によるエピジェネティック変化の機序として、DNA損傷との関連が示唆された。

[外部研究評価委員会事前配付資料 (PDF 552KB)]

研究目的と実施内容 / 研究予算 / 研究成果の概要/誌上発表及び口頭発表

研究期間

平成19〜22年度(4年間)

外部研究評価委員会による事後評価

平均評点 4.1点(五段階評価;5点満点)外部研究評価結果

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

ヒ素による発がんメカニズムをエピジェネティクスの視点から手法を開発しながら詳細な実験を展開されたことは評価したい。ただし、結果的にエピジェネティクスから期待する成果が得られなかったことは残念である。

[今後への期待、要望]

エピジェネティクスの研究をリスク評価に結び付ける戦略、例えば、どのような場合にエピジェネティクス作用を調べる必要があるか等、成果をリスク評価との関連で考察することが望まれる。遺伝子変化の晩発性、性差の結果はヒ素のリスク評価上重要であり、更なる解明を望む。

対処方針

本研究では各種条件下でのヒ素曝露の影響として、エピジェネティック作用のうち「遺伝子特異的DNAメチル化変化」については、ほとんど検出されなかった。一方、DNA反復配列に由来すると考えられる「グローバルDNAメチル化量変化」と「遺伝子特異的ヒストン修飾変化」が検出された。現在多くの化学物質が遺伝子特異的DNAメチル化変化を誘導することが続々と報告されているが、手法的に不十分と思われる結果が見られたり、再現性が見られないという報告もあり、本研究の結果と考え合わせて、化学物質の「遺伝子特異的DNAメチル化変化」誘導能の有無に関してはさらに検討が必要と考えられた。一方、本研究の結果から、「グローバルDNAメチル化量変化」と「遺伝子特異的ヒストン修飾変化」は化学物質曝露によって比較的変動しやすく、生体影響の原因につながる可能性が示唆された。次期の研究においては、特に「グローバルDNAメチル化量変化」と「遺伝子特異的ヒストン修飾変化」に着目し、その作用機序や特徴、生体影響との因果関係を明らかすることを通して、リスク評価の指標として重要なエピジェネティック作用を明らかにしたい。化学物質曝露による遺伝子発現変化の晩発性、性差に関してはさらに解明を進めたい。 

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