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Ⅴ 平成22年度新規特別研究:事前説明
1.都市沿岸海域の底質環境劣化の機構とその底生生物影響評価に関する研究

1)研究の概要

都市沿岸海域では貧酸素水塊による底質環境の劣化が進行し,底生生物の生息に甚大な影響を与えている(現行の貧酸素特研による知見)。これを受け,新規特別研究では,貧酸素水塊の形成に伴い底質環境中に発生し,生物に高い毒性を示す硫化物に着目して研究を展開する。すなわち,硫化物の形成・水柱への供給過程と,底生生物におよぼす影響を,現場調査・室内実験,および数値シミュレーションにより明らかにし,底質環境の改善に資することを目指す。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

研究目的  /  研究予算  /  研究内容

2)研究期間

平成22〜24年度(3年間)

3)外部研究評価委員会の見解と対処方針

(1)研究内容

[内容評価]

閉鎖性水域における貧酸素水塊の問題は重要であるので、重点的に推進すべきである。これまでの研究成果をもとに研究立案されており、海における漁業においても重要な課題である。

ただ、終了する先行研究を発展させるとあるが、その成果がどのように生かされ、何が問題なのか不明確である。

[提案、要望]

終わった特別研究からの発展であり、ぜひメカニズムを解明してほしい。精度良い物質循環の測定が上手くでき、海域、水域の環境管理、基準の適切な設定にいたる成果を期待する。

底質上のDOが環境基準となった場合、このDOを改善する為の実行法等をどう整備したら良いのか考えておくべきではないか。どうやれば本当に改善できるのかを提案(達成目標と達成するための具体策の提示)できるかが最も大きなポイントであろう。

[対処方針]

先の貧酸素水塊に関わる特研で複数種の二枚貝に対する貧酸素水塊の影響を現場試験で評価した際に、同程度の貧酸素水塊に見舞われながら近接する地点で二枚貝の斃死状態が異なることから硫化物の蓄積状況の差異が影響していると推定し、今回の提案を考え出した。また、底泥の酸素消費速度についても、全硫化物か遊離の硫化水素が効いているのかが明らかになっていなかったので、その点を検討したいと考えている。複雑かつ多岐に渡る沿岸海域における物質循環全ての過程を高精度で定量的に把握するのは困難であるが、環境省で環境基準化を検討している底層DO等がどの過程により強く影響を受けるかを明らかにし、モデル・シミュレーションを組み合わせて水質・底質改善あるいは維持のための適切な管理・制御指標を抽出していきたいと考えている。

(2)研究の進め方・組み立て

[内容評価]

硫化物による効果のみをうまく抽出できるのか分からなかった。底生生物の死亡と、硫化水素の存在は双方ともに結果であって、その間に因果関係があることを論証しなければ研究が成り立たない。また、底生生物と一概に言って生存の条件を判断することは出来ない。海水或いは底質からのFeの挙動も、物質収支を把握する上で重要ではないか。例えば、汚泥の嫌気性浄化槽のH2Sによる機能不全対策に鉄塩を供給することはしばしば適用されている。

[提案、要望]

硫黄の化学形についての情報が必要であろう。H2S, FeS, S8(Elemental S)の分布が測定できるようになると研究は各段に進むと期待される。現在問題になっている貧酸素水塊の水域は、多くの場合浚渫窪地であるので、現象解明よりも対策技術開発に重点を置くべきである。

また、研究推進にあたっては、研究対象区域の海底地形データを取得しておく必要がある。さらに、将来的には東京湾に限らず、三河湾、伊勢湾、大阪湾などの沿岸海域、また汽水域の中海や浜名湖などとの比較研究もできるような計画・体制を構築していただきたい。

[対処方針]

硫化水素の蓄積と底生生物の死滅・現存量の減少は同時並行現象になると考えられるが、同程度の貧酸素水塊や同程度の全硫化物の蓄積が見られても、底生生物の死滅・減少と遊離の硫化水素の蓄積が捉えられれば、その影響評価はある程度出来るものと考えている。また底生生物への影響評価に関しては二枚貝のみならず、多毛類等も含めた多様な種を評価対象とする予定である。鉱物化したパイライトに関しては今回測定対象に含まない予定だが、簡便な方法で、遊離や鉄結合体の硫化物の測定は行っていく予定である。鉄鋼スラグや石灰散布等、海域での硫化物抑制の試みは実験規模で行われているが、今回対象海域とする東京湾では実証試験が可能な適当な地点が得られておらず、本研究では対策技術開発に関することは出来かねる。 東京湾で得られた調査研究方法は他の類似の環境下にある海域に適用可能と考えられ、底泥中の硫化物蓄積に関する知見は他の閉鎖性海域・汽水湖等と比較検討を行っていきたいと考えている。

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