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Ⅰ 重点研究プログラム・中核研究プロジェクト:終了時の評価
1.地球温暖化研究プログラム (平成18〜22年度)

研究の概要

本プログラムでは、二酸化炭素等の温室効果ガスや関連気体等の空間分布とその時間変動の観測とデータ解析に関する研究、人工衛星を利用した温室効果ガスの測定データ処理解析手法の開発、二酸化炭素濃度分布等の観測データと大気輸送モデルに基づく二酸化炭素収支の解析手法に関する研究を行った。また、気候・影響・陸域生態・土地利用モデルの統合によるシミュレーションモデルの開発及び将来の気候変化予測と影響評価に関する研究、将来の脱温暖化社会の構築に係るビジョン・シナリオ研究、気候変動に関する国際政策分析、気候変動対策に関する研究等を行った。

観測・解析を中心とする研究においては、地上ステーション、民間船舶、民間航空機、人工衛星などを活用した観測研究により温室効果ガスの動態把握を進め、また大気輸送モデルと組み合わせることで発生源、発生量の推定などを行った。特に、21年1月に成功裏に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(通称:いぶき)については、国環研の担当となっているデータの高次処理、高次プロダクトの検証、データの定常処理・配布などを順調に進めてきた。温暖化リスク評価・温暖化対策評価に関する研究においては、IPCCの第5次評価報告書作成に向けてのモデルの改良を進めた他、IPCCの新シナリオの一つ(RCP6W)の作成を担当し、同時に、RCP6Wについて土地利用変化の空間分布シナリオを開発した。また、政府の温暖化対策中期目標の策定に向けての将来ビジョン・シナリオに関し、「2050年までに70%の排出削減が可能であること」、またそれを実現するための「12の方策」を提示した。

なお、本プログラムは4つの中核研究プロジェクトに加え、関連研究プロジェクト(平成21年度5件)、地球環境研究センターが実施する「知的研究基盤の整備」のうち地球温暖化に係るモニタリングなどの事業から構成される。

外部研究評価委員会による終了時の評価

平均評点 4.4点(五段階評価;5点満点)

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

長期的視点に立った重要な研究を積極的に推進しており、期待以上の成果を挙げている。当初のねらいによりお互いのプロジェクトの連携による成果も出ている。温暖化効果ガスのモニタリング、温暖化リスク評価、対策構築のそれぞれに対して、実質的で大きな社会貢献を行い得る研究成果を挙げたと評価できる。目的意識が明確で質の高い研究が的確に実施されており、大変優れていると考える。

一方、中核プロジェクトの1・2と3・4の間、及び3と4の間の関連が明確ではなく、また、中核プロジェクト3の成果およびその他の知見がどのように4につながったかの説明が欲しかった。

[今後への期待、要望]

観測によって得られる情報を、将来予測の精度向上に連携させた研究シナリオの提案に期待したい。中核プロジェクト3、4においてシナリオとしての研究成果は得られつつあるが、将来の気候変動予測、対策評価・政策提言としては概念的、理念的な方向性であるので、人口・食糧・水資源問題を含めた未来社会の予測や、対策・あり方についての見解を入れた総合評価が欲しい。

それぞれのプロジェクトの成果の不確実性とバイアスを受けて他のプロジェクトの取り組みにどう対応したか、などのプロジェクト間のフィードバックの議論もあって良い。

これらの取り組みの成果もふまえ、よりいっそうの統合構造化を進めることにより、わが国の将来ビジョンをどうするのかなど方向性が明確になることが期待され、政策形成の上でNIESのプレゼンスがより高まるものと思う。

また、モニタリングから、気候変化とリスク評価、必要な緩和・適応策に至る、時間を追ったシナリオを描くことや、温暖化社会におけるリスク管理コストと温暖化抑制社会におけるそれとの比較研究をベースに、政策判断支援情報の提供も期待したい。

対処方針

観測・モニタリングに基づくプロセス研究やトレンド解析の情報は、将来気候予測モデルに含まれる生物地球化学過程のモデル化に活かされ、将来予測モデルの精度向上に寄与するというシナリオのもとに実施してきており、引き続き、国際的な研究コミュニティに対して成果を発信していきたい。これらの成果は、国内外の他機関から発信される研究成果とともに、総合的な視点から温暖化リスク評価、温暖化対策・政策提言の基礎情報として活用される。

人口・食糧・水資源問題を含めた未来社会の予測や、対策・あり方についての見解を入れた総合評価については、部分的にはすでに着手しているところであり、真に総合的な評価を行うには関係する研究機関とも協力してさらに発展させたい。

不確実性・バイアスの問題は重要と考えており、観測などによるプロセス解明、将来予測モデル出力の解釈や成果の発信において特に留意が必要と考えている。また、それらを基に行う政策提言に関しても同様に、その基本となる将来予測の不確実性の議論は必須のものと考えている。このことは、温暖化社会におけるリスク管理コスト、温暖化抑制社会におけるリスク管理コストの比較議論においても重要な視点であり、今後の政策判断支援情報の提供でも注意を払うべき点と考えている。

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