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VI 中核研究プロジェクト
研究課題名 東アジアの水・物質循環評価システムの開発

実施体制

代表者:
アジア自然共生研究グループ アジア水環境研究室 室長 王勤学
分担者:
【アジア自然共生研究グループ】
アジア水環境研究室 王勤学(室長)、水落元之(主任研究員)、越川海(主任研究員)、岡寺智大(研究員)、東博紀(研究員)、大場真(NIESフェロー)、樋渡武彦(NIESフェロー)、劉晨(NIESポスドクフェロー)、呉通華(NIESポスドクフェロー)
環境技術評価システム研究室 藤田壮(室長)、徐開欽(主任研究員)、中山忠暢(主任研究員)、橋本禅(特別研究員)、Geng Yong(NIESフェロー)、濱野裕之(NIESフェロー)
村上正吾 (副グループ長)
【水土壌研究領域】
木幡邦男(領域長)、林誠二(室長)、牧秀明(主任研究員)、珠坪一晃(主任研究員)

※所属・役職は年度終了時点のもの。また、*)印は過去に所属していた研究者を示す。

研究の目的と実施概要

長江、黄河を中心とした東アジア地域の流域圏について、国際共同研究による水環境に関する科学的知見の集積と持続的な水環境管理に必要なツールの確立を目指し、観測とモデルを組合せ、水・物質循環評価システムの開発を目的とする。さらに、都市・流域圏における環境管理の技術インベントリを整備し、持続性評価指標体系を構築することにより、技術導入効果に基づく適切な技術システムと政策プログラムの設計を含む流域の長期シナリオ・ビジョンの構築の方法論の開発を目指す。具体的には、以下のサブテーマによって研究を進める。

1)流域圏における水・物質循環観測・評価システムの構築;広域的な水・物質循環を評価するためのリモートセンシングデータ、新しい計測手法等による観測システムを活用し、衛星データ、GIS、観測データ等に基づく、水・熱・物質循環を考慮した東アジア地域の流域圏環境情報データベースを構築する。また、気象・地形・土地被覆の条件が互いに影響し合う複雑な過程を考慮した水・物質循環評価モデルを適用することによって、人間生活の変化や土地改変、気候変化などが、水不足・流出等の水循環、炭素・窒素等の物質循環に及ぼす影響を評価する。

2) 長江起源水が東シナ海の海洋環境・生態系に及ぼす影響の解明;東シナ海の水質浄化機能の定量的評価のため、沿岸域の漁獲量の経年変化、干潟の面積等のデータを収集する。さらに、当該域の富栄養化等の実態理解のため、東シナ海陸棚域における航海調査を継続し、長江起源水により輸送される栄養塩類の藻類群集による取り込み過程及びその行方に関する検討を行う。さらに、長江から東シナ海における汚濁元素の輸送循環を評価するための水・熱・物質循環及び低次水界生態系モデルを構築し、長江起源水が東シナ海の海洋環境・生態系に及ぼす影響を解明する。

3)拠点都市における技術・政策インベントリとその評価システムの構築;産業化、都市化の異なるアジアの都市として、中国武漢市・湖北省、大連市・遼寧省を対象に、地域の水、熱環境の環境データベース及び廃棄物の発生分布のデータベースを構築するとともに、川崎市をはじめとする国内の先進地区における環境負荷削減の環境技術・社会技術インベントリの整備によって、経済成長と両立する環境負荷削減の将来しなりの設計と評価システムの基本フレームを構築する。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 54 54        
受託費 87 92        
科学研究費 42
廃棄物科研40
114
廃棄物科研21
地球推進費50
技術推進費38
振興調整費5
       
寄付金            
助成金            
総 額 183 260        

(外部資金は必要に応じて細分化。次年度以降は空欄)

今後の研究展望

・ 中国長江水利委員会との共同で南水北調の水源地である漢江で自動水質観測システムを設置し観測を行うと同時に、最新の衛星データ、GIS、観測や調査データを基に、流域の水・物質循環情報データベースを更新していく。また、流域の気象・地形・土地被覆の条件や、人間生活、経済開発活動に伴う水環境の現状と意識に関する現地調査を行い、流域圏水・物質循環評価モデルのパラメータ化やシミュレーションすることによって、陸域から河川への環境負荷の量と質的変化を推定し、人間生活や南水北調などの流域開発活動の影響評価を進めていく。さらに、共同研究体制を強化するため、第三回日中流域水環境技術交流会を中国で開催する予定である。環境省受託事業などの外部の競争的資金によるプロジェクトと連携しながら研究を進めていく。

・ 中国浙江海洋大学との共同で長江河口・沿岸における赤潮発生状況や沿岸域の漁獲量や浅海域の水質浄化機能の評価のためのデータを収集し、データベース化していく。また、水産庁が実施する東シナ海陸棚域調査に参加し、陸棚域で増殖する藻類群集の栄養塩取り込み動態の観測を行うと同時に、鉛直乱流構造が藻類の鉛直分布に及ぼす影響を解明することを目的として、微細乱流構造プロファイラーによる現場での乱流観測を試みる。平成19年度より着手した東シナ海環境情報データベースの整理と並行して、長江起源の汚濁元素の東シナ海における輸送循環を評価するための水・熱・物質動態及び低次水界生態系モデルの構築とシミュレーションテストを行っていく。

・ アジアの資源経済の拠点都市を対象として、広域な環境制約下での都市スケールの技術・施策の効果を評価できる、水・物質・エネルギーの統合型環境アセスメントモデル(NIEC-Urbanモデル)」の開発を進め、中国大連市と統合的環境フラックスの立地・移動特性を解析していく。また、産業化・都市化のステージの異なる資源循環の中核拠点都市として、大連市と武漢市と国内での川崎市における産官学連携研究を推進し、有機資源循環技術導入の政策シナリオの評価および水資源の循環利用都市産業技術システム導入シナリオの評価研究を進め、さらに、中国研究機関と連携する複数の国際会議の開催により、国際的なベンチマーク構築に向けての情報発信を行っていく。最後に、環境技術開発等推進費および地球環境研究総合推進費などの外部の競争的資金によるプロジェクトと連携し、水環境管理や環境技術評価研究として学術性、実用性の高い研究発信を進めていく。