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W 平成19年度終了特別研究の事後評価
1.身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究

研究目的と実施内容

[研究目的]

近年、宅配便、コンビニ、通販、郊外型大規模店舗など、流通面の変化に応じて、生活に密着した身近な交通需要が増加傾向にあるが、これらの環境負荷についての研究は極めて少ない。本研究では、「ラストワンマイル」と呼ばれる各家庭との接続部分に着目し、その身近な交通からの環境負荷の低減を目指す。特に、自動車の使い方に着目し、使用形態別や輸送品目別の環境負荷を推計するとともに、車載機器等を用いて実使用条件下における自動車の使用及び走行実態、並びに、自動車技術、運転方法による環境負荷の違いなどを調べ、環境負荷量と削減の可能性を把握する。また、宅配、コンビニ、ショッピングセンター等での購買行動の違いによる環境負荷の違いを調査する。得られた結果をもとに、モデル地域を対象として、自動車の使用実態を考慮した最適な車両技術及び交通政策の導入について、効果的な対策シナリオを提示する。

[実施内容]

【全体計画】:車載機器を搭載した車両による路上走行実態調査を行い、身近な交通における自動車の使用実態と環境負荷との関係を把握した。乗用車の使用形態別や貨物車の輸送品目別のインベントリを構築し、身近な交通の寄与率を明らかにするとともに、車載機器による調査で得られた走行実態データの解析をもとに、自動車の使用方法や運転方法改善による環境負荷の低減可能性を定量的に評価した。さらに、身近な交通における環境負荷低減が期待できるものとして購買行動を取り上げ、宅配、コンビニ、ショッピングセンター等での購買行動の頻度の違いと各々の購買行動の環境負荷の違いを把握した。最後に、購買行動および通勤に着目して、モデル地域を対象に、地域に適した技術的、政策的オプションを選定し、交通手段の選択や土地利用の最適化など、モデル地域における対策オプションを走行実態データの解析結果を取り込んだシミュレーションモデルにより評価し、効果的なシナリオを構築した。

【サブテーマ1】: 自動車の使い方に着目した環境負荷の定量評価に関する研究

(1) 自動車の使用形態別や輸送品目別の排出インベントリの構築(松橋、小林、田邊)

これまで開発してきた環境負荷物質排出推計手法をもとに、乗用車の使用形態別や貨物車の輸送品目別の排出量を推計し、地域別の特性および全国の自動車利用目的別の環境負荷の全体像を明らかにした。
従来の自動車起因環境負荷物質の排出量は、主に幹線道路を走行する車両を対象とした推計法であり、その排出係数は、車種別、規制年式ごとに平均速度の関数として定義されている。一方、流通構造の変化に伴い、宅配便などの需要が増加しているが、これらは、いわゆる細街路を主に走行していると考えられ、停止、発進比率、アイドリング時間比率などの走行特性は、幹線道路とはかなり異なることが予想される。しかしながら、これまで、細街路を走行する車両からの排出量についての研究は、少なく、その実態は、十分把握されていない。本研究では、生活に密着した自動車交通に起因する環境負荷低減対策を検討するため、車載機器による細街路の交通特性の調査をもとに、これまで検討が欠落していた細街路からの排出量を推計するとともに、各々の活動量と交通特性を考慮した排出係数を乗じて、地域別の特性および自動車利用目的別の環境負荷を検討可能なインベントリを構築した。

(2) 実使用条件下における環境負荷の定量評価と運転支援による環境改善(加藤、小林、近藤、田邊、伏見)

車載機器を用いて自動車の使用実態と環境負荷との関係並びに実使用状態における自動車技術の環境負荷に及ぼす影響を把握した。国環研職員や一般ユーザーの協力を得て、車載機器を日常使用している既存車両(ガソリン車)及び低公害車両(内燃機関・電気ハイブリッド車等)に搭載し、燃費と使用実態・自動車技術との関係を調べた。車載機器による調査は、主につくば市内(計28台)で実施したが、外部機関の協力を得て、名古屋市や豊田市でのデータも採取した。さらに、シャシーダイナモ試験、試験路における路上試験を行い、運転方法改善による燃費低減効果を定量的に評価・実証するとともに、小型電気自動車(BEV)の環境負荷削減効果を評価した。

(3) 人口動態を考慮した自動車交通需要の将来予測(松橋、近藤)

高齢化等の人口動態の特性を踏まえた自動車交通需要推計の見直しを行った。これまで開発してきた市区町村別環境負荷推計に、日本の将来推計人口および運転免許保持高齢者の運転率を組合せ、国レベルの将来自動車交通需要を推計した。また、モデル地域を対象とした環境改善シナリオ構築の基礎資料とするために、自動車交通需要に関連する対策オプションの整理を行い、削減可能性および実現可能性の観点からの評価を行った。

【サブテーマ2】:モデル地域を対象とした運輸部門の環境改善シナリオの作成

(1) モデル地域を対象とした自動車の使い方に応じた環境負荷の推計と手法の検証(松橋、原田、小林)

自動車依存度が高い地方都市として、つくば市をモデル地域として選定し、サブテーマ1で開発したインベントリおよび走行実態に基づく推計方法を適用し、モデル地域内での使用形態別や輸送品目別に、実走行時の排出実態を踏まえた環境負荷を推計した。その一方で、買い物行動に着目して、宅配、コンビニ、ショッピングセンター等での購買行動の頻度および環境負荷の違いを調査し、サブテーマ1(1)で構築した地域別インベントリの推計値と比較するとともに、対策効果推計の基礎資料とした。

(2) モデル地域内の環境改善シナリオの作成(松橋、小林、近藤、加藤)

前述の推計結果を元にして、モデル地域に適した技術的、政策的オプションを選定した。さらに、各オプションについて、環境負荷削減効果の高いシナリオを構築した。また環境改善効果を、ユーザーの運転方法の改善、低燃費自動車への買い換え、購買行動の変化、環境負荷の小さい地域開発方針など、各要因別に解析した。

研究予算

(単位:千円)
  H17 H18 H19
自動車の使い方に着目した環境負荷の定量評価に関する研究 14,330 12,210 12,700
モデル地域を対象とした運輸部門の環境改善シナリオの作成 5,670 7,790 7,300
合計 20,000 20,000 20,000
総額 60,000 千円