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U 基盤的な調査・研究の年度評価
4.資源循環、廃棄物管理研究

1)研究の概要

廃棄物分野の基盤となる調査・研究として、重大な環境問題に対応すべき研究、研究能力の向上を図るための研究や手法開発等を実施している。平成19年度は、下記の2課題について取り組む。

1)廃棄アスベストのリスク管理に関する研究
2)資源循環に係る基盤的技術の開発

なお、平成20年5月12日に開催された国立環境研究所外部研究評価委員会全体会合において、循環型社会研究プログラムに属する「廃棄物管理の着実な実践のための調査・研究」は基盤的な調査・研究の区分で評価が行われた。

・循環型社会に適応した安全・安心な適正処理・処分技術の確立
・試験評価・モニタリング手法の高度化 ・体系化
・液状・有機性廃棄物の適正処理技術の高度化
・廃棄物の不適正処理に伴う負の遺産対策

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

3.8 点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

循環型社会の実現のために不可欠な重要課題の基盤的研究が的確にデザインされ、着実に進められている。例えば、安全安心に処理した多量の建設廃棄物の処理過程における物質フローが明らかになった。この成果は、建築・建造物の解体手法に対する提言などにも活用できると期待できる。また、これらの研究成果により、わが国の廃棄物分野での存在感の高さをアピールできている。中核研究プロジェクトや重点研究プログラムとの関係が難しいように思われるが、現状の進め方で継続してよいのではないかと考えられる。

一方で、多くの技術分野の中で、国環研として担当すべき分野についての検討が若干不明瞭であるように見受けられた。

[今後への期待、要望]

今後、次期重点研究プログラムのための作成準備として、シーズを育てる研究環境づくりにも一層配慮して、資源循環・廃棄物管理に関する国環研として独自性のある重点目標を明確に打ち出して頂きたい。同時に、インパクトのある市民社会への呼びかけが望まれる。

基盤的な調査・研究は、その時々で問題となっている個別課題を適宜解決する研究であるべきか否かについて再度検討して頂きたい。この上で、基盤研究として廃棄物研究をどのように組織化・体系化するのかを明確にしていくことが望まれる。その際、各地域における具体的な循環システム開発や設計手法開発といった、個別技術を超えた分野に対して、国環研が果たすべき役割についても整理してはどうか。また、廃棄物処理による新たな環境問題の発生について多様な角度からの予測についての検討を行って頂きたい。産官学の協力体制についても考え方をまとめて頂きたい。

4)対処方針

わが国の廃棄物研究の中心としての存在感を示すべきことは、本ユニットの基本方針として掲げているところであり、その面で一定の評価をいただいたことに感謝したい。当分野では依然として解決を求められる目の前の問題が多く、それらに対してかなりの研究資源を割いていることから、具体的な廃棄物問題への対処として実施してきた研究課題の成果を中心に提示したが、一方で、中核研究プロジェクトの基盤となる手法論の研究や、個別課題への対応から見通される将来的課題に関する研究など、循環型社会研究におけるシーズを重視した基盤的な調査・研究も一定規模で実施していることを、現中期計画の構成と今回の評価対象の関係上、十分に整理して示せなかった。今回のご指摘を踏まえ、基盤研究としての本分野の研究の組織化・体系化については、次期を見据えて再整理していきたい。その際、過去からの残された問題、発生しつつある新たな問題、将来起こりうる問題など、時間スケールや地域スケールを十分に意識した上で、産官学の協力や市民社会との関わりなども含めた国環研の役割を再確認し、基盤的調査研究に反映させるだけでなく、重点研究プログラム全体の今後の運営にも反映させていきたい。