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U 基盤的な調査・研究の年度評価
1.大気圏環境研究

1)研究の概要

気候変動やオゾン層破壊問題、越境広域大気汚染、更には都市における環境問題など、地球規模から局所的な大気環境に係る課題について、2つの重点プログラム(温暖化研究プログラム、アジア自然共生研究プログラム)や他研究領域ならびに外部研究機関とも連携しつつ研究を進めている(図1)。19年度には、高精度化学分析手法を用いた観測による地球規模ならびに領域規模での物質循環の解明、ライダーをはじめとした遠隔計測手法を用いた大気エアロゾルの時空間分布の把握、大気数値モデルを用いた気候変動やオゾン層変動に関する変動要因の解明を目指した基盤的な研究を進めている。また大気環境の変化や変動の検出や詳細な汚染実態の把握のための新たな遠隔計測手法や大気微量物質計測手法の開発や大型実験施設などを用いた室内実験による大気物理・化学プロセスに関する基礎データの整備にも取り組んでいる。

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

4.1  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

本研究では、大気圏環境についての守備範囲を明確にした上で、計測・分析手法およびモデルの開発など多岐にわたる研究を高いレベルで進められていると評価できる。国環研としての独自性が良く現れ、それぞれの研究課題は明確かつ的確であり、限られた資源が有効に活用されている。

一方で、温暖化重点プログラムとの間の相互的な連携関係がもう少し明確な方が良い。また、それぞれの研究課題がどのような経緯で開始され、今後どこまで進めていくのかが見えにくいという印象を受けた。

[今後への期待、要望]

今後、未解明な大気環境問題の発掘などを含む、中長期的な研究プロジェクトを検討して戦略的に研究を推進して頂きたい。また、次期重点プログラムのシーズを育てるような研究環境作りにも十分に配慮して欲しい。国内外の大学や研究機関との連携を積極的に進めながら、国内のキーポイントとなって頂きたい。限られた資源を有効に活用して基盤的研究を進めていく上で、今後問題となってくる大気環境問題を先取りして行政支援的な研究に取り組むというアプローチの方向性も探ってはどうか。

4)対処方針

大気圏環境研究領域のメンバーの多くが重点研究プログラム(温暖化研究プログラムならびにアジア自然共生研究プログラム)を構成する中核プロジェクトと係わりを持って研究を進めている。今後は、現在取り組んでいるプロジェクトの基盤となる課題やプロジェクトの次の展開を図るための課題の一層の推進を心がけたい。また重点プログラムとの連携ではその母体となるセンターやグループの有する施設、設備、ならびに組織力における強みを活用することをより積極的に行っていきたい。

一方でご指摘のとおり、現在の研究課題やプロジェクトの進展のみならず、今後問題となってくるあるいは未解明な大気環境問題の発掘を行っていくこともまた基盤研究部門に課せられている。人間活動や生物活動の今後の変化ならびにその変化によってもたらされる大気への負荷の変化、大気への負荷の変化が引き起こす可能性のある様々な影響、大気環境の影響研究側から求められる現象や原因の推定、そして複数の大気環境問題間の相互関係、と言った視点からの取り組みが必要であろう。個別の研究ユニットのみで閉じていては問題発掘や研究の新展開は困難である。研究所の中の他の研究ユニットや所外の様々な研究分野との交流、更には行政を含む環境問題の現場とのつながりを意識した取り組みとして、どの様な取り組みが可能か模索していきたい。

現在実施している研究の展開から中長期的な戦略に基づいた研究の推進を、現在の10数名の研究員だけで行っていくことが不可能であることは自明である。そのためにも、海外研究機関も含めた所内外の研究機関(大学を含む)との連携−特にハブ機能を有した連携−を如何に進めていくか、研究ユニットの枠に拘ることなく、より良い形を見い出し、また実現に向けた歩みを目指したい。

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