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Ⅰ 重点研究プログラムの年度評価
2.循環型社会研究プログラム (平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

今後の「循環型社会」を形成していくうえで達成目標を明らかにして集中的に取り組む必要のある目的指向型の研究課題として、重点研究プログラムのいわば顔となる「中核研究プロジェクト」(以下「中核PJ」)を次のとおり編成した。

・近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価
・資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価
・廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発
・国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築

また、循環型社会・廃棄物研究センター以外の研究ユニットの研究者が主体となって実施する「関連研究プロジェクト」として、“循環型社会形成のためのライフスタイルに関する研究”をはじめとする3課題を実施する。さらに、中核PJ以外の研究活動として、廃棄物の適正な管理のための研究を着実に進めるため、「廃棄物管理の着実な実践のための調査・研究」という区分を本プログラムに設け、“循環型社会に対応した安全・安心な適正処理・処分技術の確立”などの4課題を位置付けているほか、廃棄物管理分野の「基盤型な調査・研究」として、“廃棄アスベストのリスク管理に関する研究”等の研究課題に取り組む。

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

3.9 点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

雄大なプログラムを推進している本重点研究プログラムでは、近未来としての重要な課題を扱い、それぞれにおいて多様なモデルが考えられている。4つの中核研究プロジェクト全てにおいて、信頼度の高いデータが提示され、多岐にわたる十分な研究成果が上げられていると評価できる。例えば、物質の国際フロー分析は、このテーマの端緒を切り開く研究として独自性が高く評価できる。あるいは、“Win-Win型資源循環技術の中の、例えば、リン回収技術システムは水環境改善にも大きな貢献をなすものである”というように、実用化が望まれる課題に精力的に取り組まれている。また、関連研究プロジェクト3課題についても興味あるテーマ設定となっている。

一方、研究の多くが個別の問題解決のレベルに留まっており、循環型社会への在り方に対する示唆が与えられるように整理されていないように思える。また、円滑な循環システムには不可欠と考えられる経済評価に関する研究が少ないように見受けられる。バイオマス利用にもう少し肯定的に取り組む姿勢が望まれる。

[今後への期待、要望]

今後、一歩引いて全体像を眺め、循環型社会の構築を達成するという大きな課題解決のための提言や示唆が与えられるような組み立てと整理を期待したい。東アジアをめぐる物質循環の拡大の中、全てのプロジェクトで国際性ある対応策、国際的な技術移転や国際貢献のあり方といった、国際性の観点を念頭において研究を進めて頂きたい。また、一層の研究成果の普及に努め、社会からのフィードバックに対しての分析も期待したい。

さらに、この循環型社会研究プログラムは地球温暖化、環境リスク研究プログラムとも関連する分野であり、相互の結果が他の制約になることも多いと思われる。次期中期計画以降に対する期待ではあるが、他のプログラムとの相互関連を考慮して、将来的に接点を求める方針、あるいは現行通り独立を保つ方針で進めるべきかを今後検討して頂きたい。

4)対処方針

研究対象が多岐にわたる中で、各課題の優先度を明確にし、研究プログラム全体のロードマップの中に位置づけることの重要性については前年度以来指摘いただいており、各課題のボトムアップにとどまらない進行管理、各課題の成果の羅列とならない成果のまとめ方に一層留意する。国際性の観点の強化については、国際資源循環をテーマとする中核プロジェクトを核としながら、アジアという対象地域を共有する所内の他の研究や国内の他機関との連携も図りつつ、プログラム全体において取り組む。当プログラムが他の重点研究プログラムと関連を持つことは当初から強く意識しており、現中期計画上は独立性を保った研究計画としているが、プログラム間の接点に位置する領域で新たなプロジェクトを創出することも含めて、将来の計画検討につなげていきたい。たとえば、バイオマス利用は廃棄物系に焦点をあてて中核プロジェクト3で既に取り組んでいるが、より広義の「循環」概念のもとでのバイオマス利活用についても、地球温暖化対策との協調の中で取り組みうる課題と考えている。経済評価など社会科学的側面については、人材面での対応も必要であり、当面は関連研究プロジェクトの一層の活用により対処したい。多様なニーズに応えた研究成果の発信、普及に引き続き努める。

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