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Ⅴ 平成19年度新規特別研究の事前説明
1.貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価に関する研究

  • 更新日:2007年7月23日

1)研究の概要

東京湾を対象として 1) プランクトン由来の有機物と陸起源の有機物による貧酸素水塊形成への寄与の把握、 2) 底泥における酸素消費速度の時空間分布特性の把握、 3) 貧酸素による底生生物生息環境への影響評価、 4) 流動・生態系モデルに基づく貧酸素水塊形成過程の解析を行う。これらを総合して、海域環境の健全性を現すための、溶存酸素を基本とした新たな指標体系を確立し、水質環境基準(生活環境項目)の改訂に指針を与える。

2)研究期間

平成19〜21年度(3年間)

3)外部評価委員会の見解

1.研究内容

内湾閉鎖性水域の貧酸素水塊問題は環境基準の盲点でもあり、今後重点的に研究を実施することは特に必要であると考える。貧酸素域の発生メカニズムを解明し、主たる原因を特定することは重要であり、それをもとに問題解決にどのように結びつけるのか、の視点がやや弱いと感じられるので、実行可能な対策につながるような研究を進めて頂きたい。また、多くの研究が蓄積されているので、既往研究の調査は十分に行うとともに、東京都環境研究所等との連携は非常に効果的であると考えられるので、推進してほしい。

2.研究の進め方、組み立て

貧酸素に係わる要因は数多く、またその影響を受ける生物種も多様であるので、この研究での重点を整理する必要がある。既往の研究成果や資料をよく調査し、国環研として行うべき研究と、他の研究者・研究機関や調査組織の協力による研究とをきちんと仕分けして、貧酸素研究の方向性や手法をリードし、貧酸素対応指針を定めるような研究になることを期待する。生物への影響に関する実験室内実験の設定をよく検討するとともに、水温の長期的トレンドなど物理要素の変化とそのDOへの影響、底泥時空間分布の解明等を含めた中から精査し、的を絞って研究を進めてはどうかと思われる。

4)対処方針

1.研究内容の見解に対する回答

ご指摘頂いたように現行の水質環境基準では特に着目されていない閉鎖性海域における底層DOに関して,現在,環境省の方でも鋭意検討を進めつつあり,当方で収集した知見の提供等を通じて検討会の事務的支援を行っている。

新規DOの環境基準策定に際して全ての水生生物種への影響評価を網羅するような試験研究的知見を本特別研究により提供することは出来ないが,水産重要種を含めた二枚貝について限定的な知見を導くことを念頭に置いている。

これまでに東京湾沿岸の自治体や地方環境研究所とは共同作業・研究を行ってきており,各機関の個別の職員の方々とも良好な関係を築いてきている。本特別研究遂行に際しても,長年現場に関する豊富な経験と知見を有される東京都環境局や東京都環境科学研究所等と緊密な連携を図りつつ,現場調査や公共用水域における常時監視のデータの解析を行うことを予定している。

またご指摘の通り,閉鎖性海域における貧酸素水塊に関する調査試験研究が実施されてきているが,その多くが環境や水産分野の行政調査の一部であり,一般に入手し易い学術雑誌論文として発表されていないものが少なくない。そこで,上述の東京都環境局や東京都環境科学研究所との連携を通じて,過去の膨大な行政調査の資料を検索し,その内容を整理・総括して,過去と現在の状況の比較を行いつつ,東京湾の地域固有特性の把握に務めたいと考えている。

さらに,人員・予算等の組織的基盤の弱体化が否めない地方環境研究所との沿岸環境を対象とした共同調査研究と水環境行政への寄与について,今後の在り方を見据えた提案に結びつけたいと考えている。

2.研究の進め方、組み立ての見解に対する回答

閉鎖性海域における貧酸素水塊に関する調査研究は過去にも実施されてきているが,本特別研究においては植物プランクトンバイオマスの分解に伴う酸素消費という浮遊系生態系の貧酸素水塊形成への寄与を視野に入れていること,水質再現モデル内の過程で不十分さが指摘されていた底泥−水塊間における物質循環過程について現場調査により得られたデータによりモデルの構造の精査とパラメータを補完することが特徴となっている。

さらに底泥の酸素消費速度についても,複数箇所の性状の異なる典型的な試料を対象にして定期的に継続してデータを取得することを予定しており,かつて得られなかった系統的な時空間的に密な情報が得られるものと考えている。

また,現場調査(測定項目,使用測器やデータ取得の時空間密度・解析方法等)・室内実験(供試生物種の選択方法等)の方法に関しても,今後異なる閉鎖性海域を対象とした場合を想定して,ある程度の手法の汎用性・標準化といったことを念頭に置いて研究を進めていきたいと考えている。

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