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Ⅳ 平成17、18年度終了特別研究の事後評価
6.トキシコゲノミクスを利用した環境汚染物質の健康・生物影響評価法の開発に関する研究

  • 更新日:2007年7月23日

1)研究の概要

環境研の複数の領域の研究者が連携して、環境汚染物質の生体影響や生物への悪影響について、近年めざましく開発が進展したトキシコゲノミクス技術を活用した影響検出・予測法の開発や有効性の検証を行った。その結果、各種有害化学物質の実験動物や環境微生物に対する影響検出や影響経路の解明に、トキシコゲノミクスが極めて有効であることが明らかとなった。また、本研究の成果として得られたトキシコゲノミクスの環境研究への応用例やダイオキシン応答性遺伝子データベースを一般に公開するためのWebページを作成した。

外部研究評価委員会事前配付資料抜粋(以下、PDF [190KB])

研究目的と実施内容

研究予算

研究成果の概要

2)研究期間

平成16〜18年度(3年間)

3)外部研究評価委員会による事後評価の平均評点

4.4  点

4)評価結果の概要

本研究はシャープなアプローチにより、有害化学物質の健康影響に関与する遺伝子を捕まえ、その役割を明らかにした優れた研究である。ゲノミクスの手法を利用し、環境汚染物質の健康影響評価の有効性を世界に先駆けて実証した点は高く評価できるが、その一方で、全身的な健康影響の指標とするにはDose-Response解析も含め発展途上である。また、シロイヌナズナを用いて4種類の環境ストレスに特異的に発現上昇する遺伝子を単離したことは、もう一つの大きな成果であるが、定量的な実験がなされていない点は残念である。定量的な議論がなければリスク管理はできないので、本手法をリスク管理に如何に適用していくかの道筋を明らかにしていくためにも、複合効果の検討も含め、今後の研究の継続・発展に期待したい。今後は、作ったデータベースを誰が、どのように使っていくのか、一般に公開するのか等をもっと明確にしつつ、行政への活用も考慮すべきであろう。

5)対処方針

ゲノミクス手法を用いた有害化学物質の免疫系への悪影響の検出については、ご指摘をいただいたように、用量依存性や時間的変化についてさらに解析をし、行政に活用される形とすることも視野にいれて、影響検出手法として確立をしていくことが今後の課題と考える。現在、今回の研究で影響検出指標として選択された遺伝子を搭載した安価な簡易型DNAアレイを作成する研究を進行中であり、これを用いて今後用量および時間依存性の検討を進めたいと考えている。さらに免疫毒性が指摘された有害化学物質については、今後もその影響検出に有効な遺伝子のデータを集積し、これらのデータをもとに影響未知の有害化学物質の免疫系への影響予測を可能とするシステムとしたい。

また、ご指摘のようにシロイヌナズナへの4種類の環境ストレスに対して特異的に応答する遺伝子については、異なるストレス強度(時間・濃度)に対する応答性についての解析がなされていない。今後はこれらの遺伝子がストレス強度を変えた時に発現応答するのか(定性性)、またはその発現量がストレス強度に比例するのか(定量性)、について検討していきたいと考えている。それらの結果を踏まえて、複合効果の影響も今後検討をしたい。また、将来的な発展事項としては、この手法をモデル植物のシロイヌナズナだけではなく他の植物に応用していく事も視野に入れている。現在、日本全国で普遍的に栽培されているアサガオを用いてこの手法が応用できるかどうかについて研究を開始している。また、海外との共同研究でシロイヌナズナのマクロアレイを用いて、オゾン及び酸性雨のマツへの影響評価が可能かどうかについての検証を行う予定である。

Webページ「NIESトキシコゲノミクスサイト」については、今後も新たな研究結果やデータベースへのデータ収集を加えて更新を続け、研究者や一般に対して有用な環境汚染物質の生体・生物影響研究の情報提供サイトとして公開を続けたい。

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