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Ⅳ 平成17、18年度終了特別研究の事後評価
5.有害化学物質情報の生体内高次メモリー機能の解明とそれに基づくリスク評価手法の開発に関する研究

  • 更新日:2007年7月23日

1)研究の概要

低濃度長期のホルムアルデヒド曝露が海馬におけるシナプスの可塑性,記憶・学習機能などに重要な役割を果たしているNMDA受容体を介する記憶形成機構にかく乱を生じる結果を得た。低濃度長期のホルムアルデヒド、あるいはトルエンの曝露は、抗原刺激の付加による神経成長因子の産生を修飾し、神経―免疫ネットワークのかく乱作用を誘導していることを明らかにした。揮発性化学物質の体内動態に関して、SPMEを用いて脳内での揮発性物質を簡便に、短時間で検知する手法が開発できた。

外部研究評価委員会事前配付資料抜粋(以下、PDF [160KB])

研究目的と実施内容

研究予算

研究成果の概要

2)研究期間

平成15〜17年度(3年間)

3)外部研究評価委員会による事後評価の平均評点

4.0  点

4)評価結果の概要

いわゆるシックハウス症候群やアレルギー疾患など低濃度の揮発性有機物質の生体影響を嗅覚系、呼吸器系、神経−免疫系の3系について解析し、サブテーマ間での連携性を維持しつつ総合的にリスク評価を実施しており、一定の成果を上げている。シックハウスのような複合的問題に還元的なエンドポイントを設け、ある程度、実証的な成果を挙げたことは高く評価できる。しかし、基礎研究としては優れた成果が出ているものの、低濃度暴露による過敏症が生起する機構を明らかにするまでには至っていない点、高次機能メモリーの関与の明確化やその実体解明など、今後の進展に期待される課題も残されている。今後は、得られた成果を対策(健康被害予測等)にどのように活用するかについても検討すべきであろう。

5)対処方針

ヒトにおけるシックハウス症候群のような原因や病態が十分に解明されていない健康障害にかかわる低濃度化学物質の影響を、実験動物を用いて明らかにする事を目的に行われた研究であったが、外部研究評価委員会からのご指摘にみられるように、基礎研究としての低濃度揮発性有機物曝露の有害性の解明には貢献できていると考えている。しかしながら、その有害性の機構解明、特に高次機能メモリー機構関与の機構については課題が残されており、18年度開始の環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクト「感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価」の中でこれらの課題を進めている。今後は、さらに科学的知見を積み上げ得られた成果を化学物質によると考えられるヒトへの健康影響の解明や未然防止に役立てられるように、学会や国際誌をとうして発信し、ガイドラインや指針値にみられる化学物質に関する管理政策への寄与により社会へ還元できるように務めるつもりである。

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