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Ⅱ 基盤的な調査・研究の年度評価
2.化学環境研究

  • 更新日:2007年7月23日

1)研究の概要

化学環境研究領域では、環境中の元素、同位体、化学物質、並びにこれらに対する生体応答等の精密測定技術の開発と応用を通じて、様々な環境問題、とりわけ化学物質による汚染やリスク管理、並びに地球環境問題に対する基盤的取り組みを進めている。H18年度には、同位体測定技術の高度化に関する研究、並びに有機汚染物質の一斉分析に関する研究の二つの特別研究が採択され、研究に着手した。他に外部の競争的資金によるVOC関連研究、ナノ粒子計測技術の開発、ナノテク関連研究、有機ヒ素関連の研究並びに受託業務、POPs、重金属長距離輸送等の受託業務などを推進している。

外部研究評価委員会事前配付資料抜粋(以下、PDF [279KB])

実施体制

基盤研究の展望と研究実施内容

研究予算

平成18年度研究成果の概要

平成19年度の研究展望

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

4.2  点

3)外部研究評価委員会の見解

基盤研究であるということで、いかなるテーマ設定をし、いかなる成果を目指すのかという点でmission-orientedな重点プログラムなどとは性格を異にしている。各個研究は高度な先端計測機器の開発や精密測定技術の開発を進め、それらの技術を用いて化学物質による汚染やリスク管理、および地球環境問題に対する基礎的な研究を進めており、質の高い成果が得られつつあり、また、ナノ粒子のような新たな物質の計測にも取り組んでいることは高く評価される。モデルを用いた暴露の評価等にも実際の測定データは極めて重要である。基盤研究部門が如何なる役割を果たしていくことが適正であるのか、所全体としての考え方を整理すると共に、環境保全の観点から環境計測法の整理・分類を行い、個別的な環境問題に対する計測戦略の体系化の検討など、ナショナルセンター的機能も考慮する必要があるであろう。他領域との共同研究を推進し、新しい分野横断型プロジェクトの展開を期することもありえよう。環境行政におけるニーズを踏まえた基盤技術研究のあり方について検討を望む。

4)対処方針

学問的に高度で独創的な基礎研究を自律的に推進できる体制を構築しながら、一方で社会的・行政的ニーズ、或いは他研究分野からのニーズ情報の流通を図り、これらのたすきがけの中で効率的に研究推進を図っていくことを目指している。10数名の研究者で、基礎研究推進とニーズへの対応のバランスをうまくとり、10年、20年先の研究の柱をどうやって作り育てていくか難しいところだが、我々の使命は対象となる環境(或いは生態系、人)をシステムとして捉え、その状態を評価して必要な警告を早期に発信していくための分析体系を構築していくことだと考えており、対象のよりよい理解を絶えず念頭におきつつ、共通的かつ重要性の高い分析手法の構築、発展を目指していきたいと考えている。

温暖化など地球規模の環境問題に対しては、特にモデルへの適用を意識した時間・空間的な高頻度データの提供が最終出力として重要になるものと考えられる。一方、汚染によるリスクの削減、回避については、人間の社会経済活動に伴う物流、発生源との関連で、解析しやすい分析データを提供していくことが求められよう。これらに対してはモデルとの連携のもと、網羅的分析、自動化推進、膨大なデータの精度管理が重要なキーワードと考えられる。これに対し、人や生物、生態系の場合はその「健康度、健全性」の評価という要素が重要になろう。定量的な毒性情報がなかなか得にくい中でどう優先順位をつけて分析し、分析結果をどう評価するのか、難しい課題であるが、生物や生態系をシステムとして考えた場合、エネルギーの流れ、物質の流れに加えて「情報」の流れが重要な意義を持つことから、エネルギー代謝、物質代謝のかく乱に加えて「情報伝達システム」のかく乱を捉えるための分析体系の構築を、関係各領域などとも交流しつつ試みていきたいと考えている。また、環境中における物理化学的プロセスのより詳細な理解によって環境をよりよく理解するための新たな分析項目が見いだされる側面についても、配慮を怠らないようにしていきたいと考えている。

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