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Ⅱ 政策対応型調査・研究の事後評価
1.循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究

  • 更新日:2006年9月25日

1)研究の概要

生産から流通、消費、廃棄の過程に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めるための戦略的な物質循環政策、循環型社会の基盤を支える資源化・処理処分技術システム、検知・監視システムに関する研究・開発を推進する。1.循環システム解析手法の確立、2.循環・廃棄物技術の高度化、3.循環・廃棄物モニタリング手法の確立という3つの研究アプローチを基軸に、以下の課題に取り組む。

1. 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

物質のフローを経済統計と整合的に記述・分析し、循環の度合いを表現する手法、資源の循環利用促進による環境負荷の低減効果を総合的に評価する手法、地域特性にあった循環システムの構築を支援する手法、及び循環資源利用製品の安全性を評価する手法を開発し、これらを諸施策の立案・実施・達成状況評価の場に提供することにより、さまざまな主体による効果的な「循環」の実践の促進に貢献することを目指す。

2−1. 廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

循環型社会の基盤となる技術・システムの確立に資することを目的として、熱的処理システムの循環型社会への適合性評価手法の開発、有機性廃棄物の資源化技術の開発及びシステム評価、最終処分場の容量増加技術・システムの開発、最終処分場の安定度や環境影響を適切に評価し、それらを促進又は改善する手法の開発を行う。

2−2. 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

し尿や生活雑排水等の液状廃棄物に対して、地域におけるエネルギー消費の低減及び物質循環の効率化を図るため、窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽システムの開発、浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発、開発途上国の国情に適した浄化システム技術の開発、バイオ・エコエンジニアリングと物理化学処理を組み合わせた技術システムと地域特性に応じた環境改善システムの最適整備手法の開発を行う。

3. 資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

循環資源や廃棄物に含有される有害化学物質によるリスクを総合的に管理する手法として、不揮発性物質を系統的に把握する検出手法、およびバイオアッセイ手法を用いた包括的検出手法を開発する。これらの手法も利用して、臭素化ダイオキシン類に関連する有機臭素系難燃剤の挙動と制御手法、有機塩素系化合物を含有する廃棄物の分解手法に関する研究を推進する。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)平成17年度研究成果の概要

(1) 循環システム解析手法の確立
〜循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究〜
(ア) 産業連関表と連動したマテリアルフロー分析手法の確立
  • 資源、廃棄物、環境負荷等のデータを統合したデータベースの設計を進めた。また、整備したデータを用いて、最終需要と様々な環境負荷発生との関係に関する実証分析を行った。例えば、最終処分量を最小化する消費形態では他の環境負荷を増加させる可能性があること、一方、CO2を最小化する消費形態では他の環境負荷も低減できることなどを示した。また、国レベルのマテリアルフロー勘定のデータ改善、およびマテリアルフロー勘定の枠組みの修正に関する試案を提示した。
(イ) ライフサイクル的視点を考慮した資源循環促進策の評価
  • その他プラスチック製容器包装のマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、および木くずの様々なリサイクル手法を対象としたLCA研究を行った。また、個別リサイクル法の見直しに向けて、各リサイクル法の施行実態データや見直しの論点を収集・整理するとともに、平成18年度に見直しが予定されている家電リサイクル法を対象として、実態データにもとづいた法制度の評価を行った。
(ウ) 循環システムの地域適合性診断手法の構築
  • 同地域における廃棄物と循環資源の発生と移動に関する情報を登録した地理情報システムに、リサイクル等需要先までのリンクデータ及び経年変化分析を可能とする新規データの追加を行なった。この地理情報システムに輸送モデル・需給適合モデル等を用いて、その成因の解析と、質変換・物流拠点を仮想的に設置または除去した場合の地理的なフローの変化の予測を進め、拠点計画法として提示した。さらにネット輸送割合、地域間廃棄物産業連関分析、LCA分析、クラスター分析、コンジョイント分析等により、循環スケールと経済・社会・環境上のパラメータとの関係を検討して、地域循環度指標を提示した。
(エ) リサイクル製品の安全性評価及び有効利用
  • 再生材のコンクリート用骨材利用、アスファルト骨材利用における環境曝露促進試験を行い、環境への影響の変化に関する知見を得た。さらに、再生製品全体の環境安全性に関する体系的な規格化検討において、溶出試験方法の精度向上や条件確立を行った。バイオアッセイの作成においては、発光umu試験における試験溶媒の選択、防蟻剤のGC/MSによる一斉分析法について知見を得た。また、木材系廃棄物の炭化物作成時に発生するPAHのタール中含量について、炭化温度や植物種による違いについて知見を得た。
(2) 循環・廃棄物技術の高度化
〜廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究〜
(ア) 循環・廃棄過程における環境負荷の低減技術開発
  • 灰の加熱過程における臭素含有ダイオキシン類関連物質のデノボ合成能を、産業廃棄物焼却施設の灰を用いて示した。同時に、元素別の有機性ハロゲン量発生源モニタリング方法の適用性を一般廃棄物・産業廃棄物両焼却施設において実証した。廃棄物ガス化溶融施設のもつ環境保全性、資源・エネルギー回収性およびコスト性能等を具体的かつ精密に調査/解析し、実験にもとづく技術的知見と合わせて総合的な評価手法を提示した。触媒を適用したガス化-改質法による水素製造技術について、ガス化対象をRDF・RPFに拡大して水素の効率的抽出技術を示すとともにパイロット規模での製造に関する性能を実証した。また、CaOによる触媒能の増強効果を明らかにした。
(イ) 資源化技術・システムの開発
  • 有機性廃棄物の資源化システム設計のために食品廃棄物および農業系廃棄物の組成データベースの作成を行った。この組成データベースと、すでに整備した埼玉県における産業小分類事業種別の排出量原単位により、埼玉県における細分類事業種別の雇用者一人当たりの排出組成データベースへと展開した。資源化技術では、生ごみを炭素源とした乳酸回収装置にて実証実験を行い、乳酸回収に飼料化を付加したゼロエミッション型資源化システムの実用可能性を明らかにした。また、超臨界CO2による廃棄物からのビタミン抽出基礎特性について、圧力・温度依存性・最適前処理操作等を明確にし、資源化技術実用化への方向性を明確にした。さらに、粒状リン酸マグネシウムアンモニウム6水塩を循環利用するアンモニア回収装置での実証実験により、最適な乾燥温度、溶液pHおよび攪拌時間を見出した。また、回収した乳酸、発酵生成物を利用した飼料およびアンモニア脱離液の安全性を、ヒトや動物への感染性および重金属含有量から再資源化物の安全性が確認できた。
(ウ) 最終処分場容量増加技術の開発と適地選定手法の確立
  • 既存最終処分場の再生における問題点の抽出と、テストピットによる容量増加手法の適用性・安全性を検討し、最終処分場の再生事業評価ツールを構築した。特に掘削時の環境影響として細菌や菌類の飛散が重要になることを明らかにした。容量増加の各技術の評価、既存処分場の再生に向けた処分場の分類と、そのための埋立内容物の現場調査及び再生のための前処理(環境汚染防止)技術の選定手法を提案した。以上から、既存処分場の再生、埋立廃棄物の中間処理技術等を援用した質的な改善、埋立地容量の増加が可能なシステムを提案した。広域最終処分場適正配置に関しては、海上輸送を考慮したモデルで超広域型処分場を評価した。また、海面最終処分場における水平暗渠設置による保有水の挙動を数値解析により明らかにし、管理水位の選定と許容水位上昇高の重要性を指摘した。また、水位を平均海面レベルに維持することにより埋立層内への通気導入が促進されることを明らかにした。
(エ) 最終処分場安定化促進・リスク削減技術の開発と評価手法の確立
  • 埋立処分場実証テストセルにおける通気・浸出水循環実験により、エミッション(ガス質(VOC)及び浸出水質(BODやT-N))に著しい改善を見いだすとともに埋立層内の環境改善や機能発源(硝化・脱窒)への効果を具体的な評価ツールによって明らかにした。また、工学的な安定化促進技術の適用による処分場廃棄物層の安定化促進プロセスのモデルを構築し、最適配管設計法や最適通水・通気量並びに分解量評価法を開発した。以上から、最終処分場の安定化促進技術の実証実験で得られたデータをまとめて、促進・改善システムを提案した。さらに、無機塩類濃度や有機物中の難分解性成分の比率が増加している焼却灰や不燃物主体の最終処分場浸出水に対応するため、塩類やホウ素、無機窒素などの無機成分と親水性有機化合物を同時除去するための技術として、逆浸透膜法の適用性が高いことを明らかにした。
〜液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究〜
(ア) 窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽、消毒等維持管理技術システムの開発
  • 我が国における吸着脱リンシステムによるリン資源の回収・循環フローの基盤が示され、液状廃棄物対策における環境低負荷・資源循環型のシステム技術の構築に展開することが可能となった。また、高度合併処理浄化槽におけるリン対策としての鉄電解脱リン法に着目し、リン除去特性、汚泥生成能、リン含有率、リン回収特性等について適正な基盤条件を明らかにすることを目的として検討を行った。その結果、鉄電解脱リン法によるリン除去性能を高める条件を明らかにすることができた。さらに、リン回収と同時に余剰汚泥減容化を目的とした新規排水処理システムの実用化に向けた検討を行った結果、オゾン処理汚泥量を槽内汚泥量の7%程度に設定することで、処理水質を維持しつつ、余剰汚泥の発生が抑制される適正な基盤条件が見いだされた。
(イ) 浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発
  • 高度合併処理浄化槽を対象として、アンモニア酸化反応を担う機能遺伝子であるamoA遺伝子についてのモニタリングを行い、アンモニア酸化細菌の個体群動態と処理性能との関係解析を行った。その結果、処理水アンモニア濃度が2 mg・l-1を超過したサンプルの95%以上において、処理水T-N濃度が10 mg・l-1を達成できておらず、亜硝酸酸化反応および脱窒反応は律速とはなっていないことから、アンモニア酸化反応の促進の重要性が確認された。特に、硝化槽に保持されたアンモニア酸化細菌個体数と窒素除去機能の関係解析の結果、目標水質を達成している系ではアンモニア酸化細菌1cell当たりのアンモニア負荷が低く抑えられていたのに対し、達成できていなかった系では高いことがわかった。これらのことから、目標水質の達成におけるパラメーターの一つとしてアンモニア酸化細菌1cell当たりのアンモニア負荷を考慮することが重要であることが示唆された。また、構造の異なる担体を比較・解析した結果、増殖速度の遅い硝化細菌群を高濃度に保持するためには、微生物を担体内部に高濃度に保持可能な比表面積の大きい多孔質担体が有効であることがわかった。さらに、安定同位体解析を導入した細菌群集構造解析により、脱窒炭素源による活性汚泥内の細菌群集の影響を効率的に評価・解析できることが明らかとなった。
(ウ) 開発途上国の国情に適した浄化システム技術の開発
  • 開発途上国で多く用いられているラグーンシステムの酸化池へ導入された植栽の根圏部では、多くの浮遊物質が捕捉されること、有用微小動物に生息域を創出し高密度に保持できることが明らかとなり、これらの有用微小動物は有毒アオコを捕食できることからアオコの発生抑制にも効果が期待でき、植物や魚類の食用化を行う上で重要であると考えられた。さらに、人工湿地においては、適正負荷のもとでは、アシ、マコモ、ガマ植栽系のいずれも通年でBOD除去90%以上の良好な処理能を有していたが、高負荷条件では窒素除去能で水温の影響を受けやすいことが判明した。また、水生植物種としてはアシが低温に強く、また、マコモは温室効果ガスであるメタン発生が他の系に比べ大きく、水生植物の選択が極めて重要であることが明らかとなった。
(エ) バイオ・エコエンジニアリングと物理化学処理を組み合わせた技術システムの開発及び地域特性に応じた環境改善システムの最適整備手法の開発
  • 高濃度有機廃棄物の適正処理とエネルギーの回収を両立させるUSBメタン発酵と窒素除去が可能なヘドロセラミックス担体生物膜処理槽を組み合わせたシステムの開発を開始したが、本システムにおいてCOD除去率で99%、メタン転換率で約80%近い性能を有することがわかったと同時に、循環比の適正化により、80%以上の窒素を除去できることが明らかとなった。また、バイオマスからの直接水素発酵に着目した基礎的検討においては、穀類等からの水素転換率は高く、溶解性の糖量が多いほど転換率が向上することと同時に、加温処理や酵素処理等の物理化学処理とのハイブリッド化による可溶化処理と糖量増加が水素発酵では極めて重要になることが明らかとなった。さらに、バイオ・エコエンジニアリングによる各処理システムの面的整備を適正に図る上で、窒素、リンの低減化による有害藻類発生の抑制効果を評価するため、AGP試験手法を改良した新たな解析手法を提案した。これにより、特に窒素、リンの同時除去が効果的であるが、藻類のリンの細胞内蓄積能を考慮すると高いリン除去能を持つ吸着脱リン方式の効果が極めて高いことが示唆された。
(3) 循環・廃棄物モニタリング手法の開発
〜資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究〜
(ア) バイオアッセイによる循環資源・廃棄物の包括モニタリング
  • ダイオキシン類や有機臭素化合物など複数の汚染源が存在する媒体へのAhレセプター結合細胞系アッセイ系(DR-CALUX)の適用を行った。大阪湾底質試料についてダイオキシン様活性を測定したところ、表層底質についてはWHO-TEQとの間に高相関が観察されたが、CALUX-TEQの平均11%について有機臭素化合物(PBDD/Fs, DeBDE)が占めているものと推定された。また、ハウスダスト試料約20検体を収集してDR-CALUXに供したところ、CALUX-TEQは38〜1,400 pg/gを示し、高活性の試料が存在することが分かった。PBDEsやPBDD/Fsの活性寄与を推算したが、全体の5〜25%程度しか説明できず、未知のダイオキシン様活性物質についての同定やその由来起源についての調査が必要と考えられた。さらに、埋立処分場における生物影響評価法の検討として、各種昆虫に対する固体廃棄物(不燃残さ、焼却灰、飛灰)の影響を調べたところ、最も顕著な影響がイチゴハムシ卵のふ化において認められたことから、本種卵のふ化阻害は有害性評価指標として有用であると考えられた。
(イ) 有機臭素化合物の発生と制御
  • 実測に加えてUNIFACモデルによる物性推算アプローチにより、臭素化ダイオキシン類や主要なBFRsとしてのヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノールA(TBBP-A)、ポリブロモジフェニルエーテル(PBDEs)の水への溶解度(Sw)、オクタノール/水分配係数(Kow)、ヘンリー定数などの物性値を網羅的に求め提示した。循環・廃棄過程等からの排出挙動調査については、野焼きを模擬した非制御燃焼過程での挙動に関する予備的なデータを得た。これまでの排出挙動調査の知見を総合し、現時点でのPBDE製品のライフサイクルを対象として、計12プロセスについて排出インベントリーを推定した。バイオアッセイ研究においては、有機臭素化合物の代謝物の毒性評価に向けて水酸化PBDEの評価に着手し、分析法の確立を含めて基礎的な知見を得た。また、ハウスダストのバイオアッセイ評価を開始し、有機臭素化合物の室内曝露に伴うリスク評価につながる知見を得た。
(ウ) 循環資源・廃棄物中有機成分の包括分析システム構築
  • 不揮発性有機汚染成分のLC/MS定量分析法の開発と調査として,HBCD異性体の吸着特性を解析し水質,底質中のHBCD,TBBPAの分析法を改良した。また,プラスチック等循環資源中のHBCD等のLC/MS分析法の開発を行った。不揮発性有機成分のLC/MSスクリーニング分析法では,高極性の不揮発性有機成分を含め,優先的に調査すべき物質のうち86種のスクリーニング分析法を開発した。また、精密質量スペクトルを用いる未知化学物質検索法のアルゴリズムを開発し,LC/Q-TOFMS/MSを用いた113種のPRTR指定化学物質の解析に適用し,その93%を5候補以下の元素組成に絞り込めることを示し,LC/MSではじめての化学物質の同定方法として発表した。また,この方法はLC/MSに限らず活用でき,従来ある指紋照合型検索の欠点を補えるため,ソフトウエアとして質量分析の諸分野での幅広い活用を期して国立環境研究所のホームページから公開した。
(エ) 循環資源・廃棄物中ダイオキシン類やPCB等の分解技術開発
  • 水熱分解法では、PCB及びデカブロモジフェニルエーテルを用いた実験を行い、加圧熱水により300℃、8MPaで30分の反応で完全に分解することを確認した。脱塩素あるいは脱臭素が主な分解であり、両化合物ともオルト位置換位の反応性が遅いことが分かった。また、コプラナPCB分解時においては速やかに毒性と雨量が減少することを確認した。金属ナトリウム分解において生成する重合物など反応生成物中に有機塩素化合物が存在するか否かについて各種の試験を行い、有機塩素化合物が残存していないことを確認した。PCNの光分解では脱塩素分解が起こり、α位よりもβ位が脱離しやすいことを明らかにした。

4)外部研究評価委員会の見解

  1. 調査・研究の内容がシステム研究系、リスク研究系、技術研究系の3本柱で構成され、全体としてまとまった成果を挙げている。一見綺麗に纏まりすぎている印象も与えるが、個別の研究においては国際的な先導性を有するものや、多方面からまた組織的な研究となっているもの、社会的・政策提言に結びついているものなど多様な構成となっている。
  2. 物質フロー分析における具体的成果も見るべきものがあり、アジア圏における資源循環モデル構築などへの展開は評価するに値する。リスク研究、技術開発においても成果を挙げ、技術的詳細の整理もなされている。
  3. 今後の本領域の研究としては、より長期的・総合的な視野から各サブテーマの一層の統合も考慮し、将来の社会的条件の変化も考慮において循環型社会のビジョンを示し、そのビジョンの下に各研究が位置づけられていることが望ましい。アジア地域に対して我が国がどのような責任を果たす体系を構築するかに関してもビジョン策定の検討が必要であろう。

5)今後の展望等

前年度までの外部研究評価での助言に基づき、システム研究系、リスク研究系、技術研究系の3本柱で第1期中期計画の成果をまとめたことの意義は評価されており、第2期はこれらの柱各々の成果の蓄積を活かしながら、柱の相互のつながり・統合を意識した研究展開を指向している。第2期における循環型社会研究プログラムでは、4つの中核プロジェクトを主構成要素としているが、示唆いただいた「循環型社会のビジョン」研究に関しては、主に第1期のシステム研究系の蓄積をもとに、筆頭のプロジェクトに据えている。このプロジェクトが要となって、リスク研究系をもとにした物質管理研究を行うプロジェクトや、資源化技術研究のプロジェクトとの統合を強める計画としており、さらに新たな柱として立てたアジア圏の資源循環研究に関するプロジェクトにおいても、システム、リスク、技術の3要素を活用したテーマ構成としている。

なお、こうした長期的・総合的視野に立たった循環型社会研究への積極的展開を図る一方で、直面する廃棄物問題への政策対応の支援が疎かになることのないよう、廃棄物管理の着実な実践のための調査・研究にも第2期において引き続き取り組む。