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Ⅵ 平成18年度新規特別研究の事前説明
3. 中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

社会の持続可能性を評価することができる指標や分析の枠組を開発することを第一の目的とする。また、開発された枠組をもとに、持続可能な社会像を理論的、定量的、定性的に描くとともに、それを達成するための道筋や課題を、国際的な視点を踏まえて、環境及び社会経済の側面から整合的に明らかにすることを第二の目的とする。

2) 研究期間

平成18〜20年度(3年間)

3) 研究計画

日本やアジアを中心とした発展途上国を対象に、温暖化や廃棄物、水、大気、生物といった様々な環境問題の解決や、エネルギーや食料等の安全保障、国際貿易、社会経済活動の視点から整理し、持続可能な社会のビジョンを検討するとともに、こうした社会を実現するシナリオを描く。国を対象とした分析・評価ではあるが、現実の社会においては貿易やその他の国際的な枠組による影響を強く受けることから、アジアを中心に国際的な視点を踏まえた分析も行う。

これまでにとりまとめられてきた持続可能な社会の概念や環境・社会を評価するための指標の整理を行い、それらを用いて将来の持続可能な社会のビジョン、シナリオを検討する。また、国際間の協調枠組のあり方を検討したり、貿易に関わる施策(自由貿易や地域経済統合)が環境にどのような影響を及ぼすかといった分析を通じて、国際関係の視点から持続可能な社会の実現について評価を行う。また、これまでに構築してきたモデルの活用を通じて、理論的側面の検討を行うとともに、定量的、定性的に分析し、科学的な合理性、整合性を確保した将来像や対策の効果を描く。さらに、ビジョン・シナリオを描く作業を進める中で、持続可能な社会の構築に欠かせない主因子に関する理解を深め、将来行うべき環境・社会に関する研究課題を抽出する。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

きわめて重要な研究である。その成果は、環境基本計画のシナリオ作成にコミットすることなどが期待できる。シナリオの設定にあたっては、ローカル・ナショナル・リージョナル(例えば東アジア)・グローバルな持続可能性をそれぞれ定式化するとともにそれらの関連を扱うべきだと考えられる。また、価値や参加を意識したシナリオづくりも必要となるはずであろう。シナリオづくりのすすめ方自体が研究上の課題になるので、その点を意識して研究を進めていただきたい。また、出来ることであれば、ビジョンを作成する人間を育てる手段・戦略についても検討していただきたい。

2.研究の進め方、組み立て

単なる夢物語の作文に終わらないように、シナリオの実現可能性をどのように担保するのかの具体的かつ定量的な検討が必要であろう。評価指標を確立してサブテーマに活用することなどが考えられる。多くの分野・人々との連携を視野に入れるべき研究課題であるので、うまく連携をしていただきたい。また、国立環境研究所の中でも、全所的研究連携はどのように進めるのかは明確にしていただきたい。

5) 対処方針

・研究内容についての対処方針:

環境基本計画のシナリオ作成には、本特別研究の成果を活用するなど積極的にコミットしていく予定である。シナリオ検討の対象範囲については、日本を中心として、今後日本を規定する世界、アジアの動向も念頭においてシナリオ作成を検討する。環境問題の現状、今後の動向、将来ビジョンを的確に捉えるには、特別研究の参画メンバーのみでは不十分と考えているので、所内の関連分野の研究者の意見や知見を収集するとともに、外部有識者の知見やさまざまな関係主体の意見の取り入れ方も含め、シナリオづくりの方法を検討したい。ビジョン・シナリオ作りは今後環境政策、環境研究を進めるうえでも重要な課題であることから、人材育成も念頭において検討を進めたい。

・研究の進め方、組み立てについての対処方針:

シナリオの実現可能性を担保することは重要な視点と考えている。定性的なシナリオのみにとどまらず、既開発の統合評価モデルなどを活用して、ビジョン・シナリオ検討のなかで抽出された主要な課題については、定量的なシナリオとして実現可能性も考慮して進めていきたい。評価指標について、持続可能性といった総合的な指標について既存指標の再検討を行い活用すること、さらに重要な課題については個々の指標を設定して、その変化、動向を追うなど活用していきたい。ビジョン・シナリオを作成には他分野、地域の多くの人々の知見を集大成することが肝要であることから、前述のような多様な主体の参加を極力考慮する予定であるが、初年度はとくに環境研として全所的な環境ビジョン・シナリオの作成について協力体制を整えて、進める予定である。