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Ⅵ 平成18年度新規特別研究の事前説明
1. 都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

ディーゼル車に対する厳しい排出ガス規制導入等により、将来、DEP等の一次排出粒子の排出量は大幅な低減が見込まれているが、その一方で、大気中における光化学反応で生成される微小な二次生成粒子の寄与が高まる傾向がある。また、今後、ディーゼル車に対する排ガス触媒や地球温暖化対策としてのバイオ燃料の採用、VOC対策等により、排出ガスの質が変化するため、都市における大気汚染の構造が大きく変化することが予想される。本研究では、都市圏における微小粒子、二次生成汚染物質を対象にその動態、生成要因の解明と曝露モニタリング、リスク評価等を行うとともに、ナノ粒子の毒性研究プロジェクトとも連携し、今後、自動車等の技術変革により起こりうる都市の環境問題を未然に予測し、中長期的な環境政策立案に資することを目的とする。

2) 研究期間

平成18〜20年度(3年間)

3) 研究計画

低公害車実験施設や車載計測技術を用いて、次世代ディーゼル車等のリアルワールドにおける環境影響評価を行うとともに、都市圏におけるフィールド調査を行い、微小粒子・二次生成汚染物質の発生から一般環境における動態を把握する。また、フィールド調査結果やチャンバー実験をもとに光化学反応による二次生成物質の予測モデルに改良を加えて、大気質予測モデルに組み込み、発生源寄与率の解析や将来の都市大気環境の予測を行う。さらに、疫学的手法により、都市環境における二次生成汚染物質や自動車排ガスに起因する高レベル曝露の実態把握と健康影響予測を行う。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

浮遊粒子状物質(SPM)は都市の大気環境のさらなる改善にとって重要かつその挙動解明は急ぐべき課題である。未把握のSPMの発生源を調べることは重要であり、注目されている光化学的に生成された汚染物質の動態・影響評価という点も意義がある。また、将来の燃料形態を見据えて排ガスの影響予測を行う点は高く評価できる。政策提言のためのデータ収集・解析・評価としても期待したい。都市圏だけでなく広域拡散も考えるべきかもしれない。

2.研究の進め方、組み立て

具体的達成目標が不明確である。大風呂敷を広げずに、次の大型研究プロジェクトに繋げることを考慮すべきであろう。また、一次粒子の影響を取り除いて、二次粒子による健康影響を疫学的手法で評価可能なのか。現実的な計画目標を立てられてはどうか。影響を総合的に判断できる知見を獲得するためにも、テーマ間の連携やプロジェクト外の研究グループとの連携を密にするとよいだろう。

5) 対処方針

都市大気中のSPMに関係する未把握発生源については、影響が大きいと考えられていながらほとんど手がつけられていないバイオマス起源の発生源について、評価手法開発(炭素成分測定などのレセプターアプローチなど)も含めて実施し、その寄与率を把握したいと考えている。

将来の燃料については、国内外の動向を把握した上で、自動車燃料転換に伴う環境影響を地域大気汚染と地球温暖化の両側面から適正に評価したいと考えている。

研究対象地域については、健康影響評価は東京を中心とした首都圏で行うが、発生源から、環境動態、モデルによる予測はより広い関東平野を対象に研究を行う。加えて、東アジアレベルでのバックグラウンド評価の成果も取り入れた総合的な評価を行い、政策提言の基礎となることを目指す。

疫学的手法については、一次粒子をはじめとして他の共存大気汚染物質の影響を完全に取り除いて二次粒子のみの健康影響評価を実施することは困難であるが、フィールド観測やモデルによる予測によって二次粒子の高濃度出現頻度の高い地域を選択して、短期影響(日単位程度)に絞って調査を行い、相対的な影響の大きさを予測することを目指している。

本研究の特色は、発生源から、環境動態、モデルによる予測、健康影響評価までの広い範囲の研究者が参加し、密接な連携を通じて総合的な影響評価を行う点にある。特色が最大限生かせるよう、研究者間の情報共有等に注意を払い、今後の更なる展開も意識した研究進行に努めたい。