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Ⅴ 中核研究プロジェクトの事前説明
3. 環境リスクプログラム

3.3 ナノ粒子の体内動態と健康影響評価

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

これまでの環境有害物質の健康影響評価は、アスベストなどの例外もあるものの、対象となる物質の用量あるいは濃度に対して行われてきている。しかし、粒子状物質などが細胞膜スケールのナノのサイズの場合は、組織透過性が高まり、粒子サイズや表面活性が重量よりも生体影響に大きく関与する可能性が示されていることから、環境リスクを評価する上に於いてテストガイドラインも含めて新たな取り組みが必要である。ここでは、ナノ粒子、ナノファイバーの生体影響を調べ、これらの環境汚染と健康リスク評価に関する研究を行う。

2) 研究期間

平成18〜22年度(5年間)

3) 研究計画

(1) 環境ナノ粒子の生体影響に関する研究

モード走行やアイドリング時におけるディーゼルエンジンから排出される環境ナノ粒子を中心とした粒子状物質を小動物に吸入曝露させ呼吸器や循環器に及ぼす影響を細胞、組織、個体レベルで調べる。定常走行時に排出されるディーゼル粒子との成分分析を行い、大気粒子状物質中におけるナノ粒子の寄与を健康影響面から明らかにする。

(2) ナノマテリアルの健康リスク評価に関する研究

カーボンナノチューブやフラーレンなどのナノマテリアルの毒性評価を、細胞を用いたin vitro系、ならびに実験動物を用いたin vivo系の両者を用いて行う。カーボンナノチューブなどの繊維状ナノ粒子については、その発生方法の検討を行い、吸入曝露実験を行うことにより詳細に調べる。

(3) アスベストの呼吸器内動態と毒性に関する研究

廃棄物処理されたアスベストについて溶融条件と繊維の生物学的表面活性について培養細胞を用いて調べるとともに、気管内投与実験なども行い総合的な毒性評価を行う。また、アスベストをはじめとする生物学的に難分解性であるナノファイバーの体内動態と健康影響評価に関する研究を行う。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

急速に応用が進んでいるナノマテリアルの健康影響を研究テーマに取り上げた重要かつ緊急性の高い研究である。研究成果が化学物質の規制法に反映されることが大切なので、その点、留意いただきたい。社会的・行政的な面で貢献できる研究成果を期待している。物性としての影響だけでなくナノ粒子に含まれる金属や化学物質の影響も見過ごすことはできないので、これらの因子についても検討すべきである。個別の粒子の組成と動態についての研究ができると面白い。また、長期影響を検討する必要があるのではないだろうか。さらに、アスベストの代替物についても意識した方がよいだろう。

2.研究の進め方、組み立て

実現可能性の高い研究であり、早く中間的な成果をまとめていただきたい。ナノ産業への提言に結びつけるような研究成果を期待する。一方で、長期影響を把握するためには、5年間のその先まで研究計画を見据える必要もあるだろう。

テストに用いるナノ粒子の標準化(発生方法、粒度分布など)は非常に重要であるので、その検討は十分に行っていただきたい。また、ナノマテリアルの生体影響に関する研究については具体的な進め方、特に扱うモデル(物質と影響をみる対象)についていずれ焦点を絞った方がよいと考えられる。環境研の役割としては、他の研究グループとの情報交換・連携・役割分担等も必要であるので、外部との連携をうまく図っていただきたい。

5) 対処方針

1.  ナノ粒子の物性としての影響だけでなく、含まれる金属や化学物質の影響についても検討すべきであるとの指摘をされている。ナノ粒子に関してはこれまで粒子状物質に含まれる金属や化学物質の影響に加えて、物性としての影響を中心に据えることが重要である。ただし、ナノ粒子の成分に関しても十分検討してゆく必要があると認識しており、今後検討を加えてゆく。また、長期・慢性影響研究については、平成20年度から、開始する予定である。慢性吸入実験や長期影響の把握に関しては、多くの資金とマンパワーを要する上に今回の中期計画を超えた長い視野のもとに進める必要があり、その当たりの調整については研究所の方と十分話し合う必要があると考えている。アスベスト代替品の生体影響としては、カーボンナノチューブも含めたファイバートキシコロジー(繊維状物質の毒性)という観点から前広に捉えてゆく予定である。

2.  ナノマテリアルの安全性評価に関しては、国内外から迅速な対応を求められているところであり、環境研や環境省の枠を超えた話し合いが必要である。本プロジェクトにおいても、産総研や厚労省の各研究機関と調整しながらナノ粒子の影響研究を進めているところであり、今後もその体制を維持しながら環境研の特長を生かした貢献を続けてゆく予定である。ナノ粒子やナノマテリアルの影響研究に関しては、ご指摘の通り標準化サンプルを用いる必要があり、海外の研究機関(NIOSH, NIEHSなど)の動向も視野に入れて標準化に努めてゆく予定である。また、環境研は燃焼由来のナノ粒子研究においては先駆的な役割を果たしていることから、ナノマテリアルに関してもカーボン系を中心に研究を進めてゆく予定である。