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Ⅴ 中核研究プロジェクトの事前説明
2. 循環型社会研究プログラム

2.4 国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

アジア地域での適正な資源循環の促進に貢献すべく、途上国を中心とする各国での資源循環、廃棄物管理に関する現状把握を通して、アジア地域における資源循環システムの解析を行う。また、技術的側面からの対応として、液状系を含む有機性廃棄物の適正処理及び温暖化対策を両立する、途上国に適合した技術システムの設計開発と適用による効果の評価を実施する。これらを総合し、該当地域における資源循環システムの適正管理ネットワークの設計及び政策の提案を行う。具体的には、

  1. 国際資源循環の現状や環境影響を考慮した、指標を含む資源循環の評価手法を確立する。
  2. アジア諸国の数都市において、有機物の埋立処分地への投入を回避し、液状廃棄物の資源循環に資するなどの環境低負荷型技術システムの提案やCDM事業化の方法を示し、そのネットワーク化を図る。

2) 研究期間

平成18〜22年度(5年間)

3) 研究計画

平成18年度
  1. アジア地域における国際資源循環及び関連する国内資源循環の現状について、製品、物質という二つの側面から物質フローの概略を把握するとともに、各国における関連政策及びその評価手法開発のために必要な調査を実施する。
  2. アジア地域におけるE-wasteをはじめとする資源循環過程に伴うPOPsや水銀などによる環境汚染の発生状況について、既存の測定分析方法と結果をレビューするとともに、予備調査を実施する。
  3. 途上国に適した技術システムの設計開発のため、アジア諸国における廃棄物管理システムについて、現況調査と比較研究による既存技術の最適化因子を抽出する。埋立地全体からの温室効果ガス排出量観測法については、地表面法などの検討を行う。バイオ・エコシステムを適用した技術導入に関しては、汚水性状、バイオマス性状、汚濁負荷の質・量特性の調査に基づく地域特性評価を実施する。
平成19年度
  1. 国際資源循環及び関連する国内資源循環の現状把握について、物質フローを精緻化するとともに、フローと政策との関係を整理しながら各国における関連政策の調査を継続する。また、評価手法の開発に着手する。
  2. アジア地域におけるE-wasteなどの資源循環過程からのPOPsなどの残留性有機汚染物質や、水銀などの無機汚染物質の発生状況について、土壌などの試料の採取・測定分析・毒性評価・モニタリング方法を検討する。
  3. 抽出された最適化因子を用いた技術適合化をラボスケールで行う。気象学法を用いて、埋立地全体からの温室効果ガス排出量観測法を検討する。また、生活雑排水・し尿などの汚水処理のための植生・土壌浄化、浄化槽、傾斜土槽法等の温度条件、負荷条件等に応じた処理機能解析による高度化およびバイオマス廃棄物の嫌気発酵エネルギー回収、好気発酵コンポスト化技術の廃棄物性状・発生特性に応じた機能解析による資源化技術の効率化を行う。
平成20年度
  1. 国際資源循環及び関連する国内資源循環のフローの精緻化を行うとともに、開発された評価手法の試験的に適用し、国際資源循環を評価する。その中で特に注意すべき問題点等を抽出し、評価手法適用からのフィードバックに基づきさらに評価手法の改良を試みる。
  2. アジア地域におけるE-wasteの資源循環過程からのPOPsなどの残留性有機汚染物質や、水銀などの無機汚染物質の発生状況について、土壌などの試料の採取・測定分析・毒性評価・モニタリング方法の検討を継続し、資源循環過程との関係の解釈を試みる。
  3. 抽出された最適化因子を用いた技術適合化をベンチスケールで行う。自動モニタリング法を用いて、埋立地全体からの温室効果ガス排出量観測法を検討する。また、バイオ・エコエンジニアリングの処理機能、温室効果ガス発生特性の解析・評価に基づく地域特性を踏まえた技術導入技術の確立化およびバイオマス廃棄物性状に応じた発酵生成物の質的・量的変化特性の解析・評価を行う。
平成21年度
  1. 国際資源循環及び関連する国内資源循環について、背景要因を含めた総合的な解析と評価を行う。その結果を基にした、国際資源循環の適正管理ネットワーク設計及び政策提案へ向けて、必要な情報の追加的な収集等を行う。
  2. アジア地域における資源循環過程での環境影響把握に適した調査方法を検討する。資源循環に起因するPOPsや無機物質による環境影響の概略を把握するとともに、排出インベントリの作成や対応策を検討する。
  3. 改良された技術のモデル地域等への導入試験をプラントスケールで行う。アジア諸国の温室効果ガス排出パラメータを導出する。また、地域特性に応じた温室効果ガス発生能、処理能のレベルに応じたシステム設計および緑農地還元する上での植物派生残渣、発酵残渣等の投入レベル等、汚水性状、バイオマス性状に応じた設計マニュアルを構築する。
平成22年度
  1. 国際資源循環及び関連する国内資源循環について、現状と潜在的な問題等を整理し、総合的な解析と評価を実施する。これを受け、その適正管理ネットワークの設計及び必要とされる政策の提案を行う。
  2. アジア地域における資源循環に起因するPOPsや無機物質による環境影響の概略を把握する。排出インベントリの作成や対応策を検討する。
  3. 有機物の埋立処分地への投入を回避するなどの環境低負荷型技術システムの導入効果予測モデルの構築と提案を行う。埋立地からの温室効果ガス排出削減のためのCDM事業化の方法を示す。また、アジア地域で問題となっている産業型公害としての水質汚濁と有機廃棄物、生活型公害としてのし尿・生活雑排水などについての資源循環のための技術評価に基づくバイオ・エコシステムの適正管理ネットワークを構築する。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

アジア地域での経済的一体性の深まりをふまえ、アジア地域に特化するのはいい。研究目標においては、アジア地域での経済発展に伴う物質・資源のダイナミックな変化を予測し、事前的に経済発展段階にふさわしい資源循環インフラを構築していく戦略に資することを明示すべきだろう。また、研究内容としては、国内リサイクルなどの日本の国策と国際的枠組みとの関係、廃棄物処分になるか資源化するかという選択の問題、廃棄物の資源価値は社会・経済背景によって異なること、システムやネットワークが成立する社会経済的条件があることも研究に組み入れるべきであろう。また、途上国でのインフラ構築・キャパシティビルディングという視点も重要であるので、国際協力研究をどの程度推進するのかという戦略を明確にするとともに、国際協調の成立条件を分析してみてもよいだろう。

2.研究の進め方、組み立て

アジア地域の範囲は定めておいた方がよいだろう。また、CDMなど、事業化まで視野に入れるのであれば、丁寧な研究展開を図るべきである。実働できるマンパワーは充分なのかが気がかりである。研究を進めるうえでは、人材開発という視点も加えてほしい。

5) 対処方針

1.研究内容

前段のご指摘については、予測が必ずしも有効にできるとは限らないが、E-wasteなど一定の対象の排出量・貿易量などにおいて、ある程度の幅を持った見通しは示したいと考えている。そのような検討を通じて、日本とアジアでの適正な資源循環戦略に資する情報を提供すべく努めたい。また、国内リサイクル法と国際的枠組みの関係については、国際貢献と国益確保の観点から、E-wasteや容器包装を中心として、国内法への提言と国際枠組みの活用を行うことを考えている。廃棄物として処分するか資源化するかの選択の問題は、分析モデルにおける輸出国側の意思決定として重要な要素であり是非検討したい。リサイクルシステム等が成立する社会経済的条件のご指摘は重要であり、アジア諸国の状況の把握に務めるとともに、特に技術システム研究の中でその成立条件の検討を行いたい。国環研が行う国際協力研究として、インフラ構築についてはシステム・制度の設計・評価などのソフト面を中心に行っていきたい。キャパシティビルディングについては、アジア諸国の研究者の人材開発の分野で貢献していきたいと考えている。このほか、循環資源貿易などの課題において国際協調の成立条件を分析しながら、国環研が国内外で果たせる役割を検討し、担っていきたい。

2.研究の進め方、組み立て

対象とする地域は、現在の研究計画では東アジアを基本としている。しかし、必ずしも地理的範囲だけにはこだわらず、アジアの資源循環を日本から見た場合に問題となる事象が的確に検討できるよう、研究内容により柔軟に対処したい。例えば、廃プラスチックは中国、固形廃棄物の技術システムは東南アジア、E-wasteの場合は南アジアまでの範囲を念頭に置いている。マンパワーの懸念については、外部調査会社への請負や、アジア諸国の研究者との研究交流も含めて対処したい。また、人材開発は重要な視点と認識しており、早ければ今年度中にも海外から若手研究者を数ヶ月間単位で招聘し、中長期的な人材開発や研究協力を行えるように努めたい。