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Ⅴ 中核研究プロジェクトの事前説明
2. 循環型社会研究プログラム

2.3 廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

廃棄物系バイオマスを対象とした資源循環を実現するための高度な要素技術・システム開発を行い、さらに動脈産業と静脈プロセスとの産業共生または一体化システムを開発・実証・評価することにより、廃棄物排出の回避・低減と資源化を可能とすると同時に地球温暖化防止および資源の持続的な確保や生産性向上にも寄与することを目的とする。

2) 研究期間

平成18〜22年度(5年間)

3) 研究計画

ガス化-改質技術用触媒の長時間耐久性試験評価により触媒の高度活用技術開発を進めるほか、バイオフューエル製造技術の高度化等の多様な利用技術開発にも着手する。水素/メタン発酵・脱離液処理システムに関し、対象バイオマスの発生特性等に応じた解析・評価を行う。高効率リン回収技術・システムの規模要件および廃液特性等に応じた現状分析を行う。乳酸発酵残さの養鶏等飼料へのカスケード利用における各種条件を整理する。廃棄物系バイオマス等の賦存量等を把握し、地域条件に応じたシステムの基本設計、動脈プロセスへ受け入れるための質転換技術の開発に着手する(平成18年度)。

ガス化-改質による生成ガスの選択的な分離・制御が可能な技術的要件等を明らかにし、またバイオフューエル製造の省エネ・資源化プロセスを提示する。また2相式酸発酵プロセスを水素発酵との共存型にすることによりエネルギー回収効率の向上をはかるほか、アンモニア除去プロセスの実用化上の最適設計・運転条件を確立する。リン等の吸着/脱離/資源化/吸着剤再生の技術因子を求め、リン酸鉄含有汚泥からの回収効率向上をはかる。食品廃棄物の発酵試験に基づき、乳酸回収と飼料化のための特性評価を行う。水熱反応等の質転換技術に関する基礎データ集積による実証プロセスの設計を行うとともに、動脈プロセス受入時の妨害物質等の実プロセス内挙動に関する知見の集積を図る(平成19年度)。

ガス化-改質方式のパイロット規模プラント運転によりガス生成に最適な操作因子を検証し、実用化のためのシステム構成要素を検討するほか、バイオフューエル製造の省エネ・資源化特性を基礎実験により把握する。バイオ資源基質の資化特性、発酵特性把握に基づき二段発酵プロセス設計と高濃度アンモニア除去技術等カスタマイズ技術の構築をはかる。リンの除去・回収特性の把握を進め適用地域条件等を考慮した液状物、固体への適用基盤プロセス設計を行う。乳酸発酵運転の最適化とともにポリ乳酸の製品化と飼料生産のためのビジネスモデル作りを提案する。一部の開発技術についてモデル地域での実証体制を整備する。動脈プロセスへの妨害物質等の制御条件に関するデータ集積を図る(平成20年度)。

ガス化-改質パイロット試験において要素技術を対象物の種別に応じ最適化し、また、実証試験からバイオフューエル製造の最適条件を提示する。水素/メタン発酵要素実験成果を窒素除去と合わせて汎用化するためのパラメータ解析と実証試験用パイロットプラントの設計・構築を行う。回収リン等の再資源化製品の流通、市場性、利活用特性等を踏まえた品質管理方策を確立し、地域分散型モデル地域での特性解析を行う。モデル地域を設定した動脈/静脈プロセス連携実証試験を開始し、評価に必要なデータの集積を図る(平成21年度)。

ガス化-改質生成ガスを発電および液体燃料合成等へ活用する各種利用方式の効率とシステムの安定性、脱温暖化効果、経済性、地域自立性等の観点からシステムの総合評価を行い、他の資源化技術との連携を含めた実現可能な資源循環システムを提案する。水素/メタン発酵総合システムの性能評価および地域特性を踏まえて、種々の未利用バイオマスの発酵プロセスへの受け入れ基準を作成する。リン等回収システムのコスト比較、市場性評価、地域特性を踏まえた開発プロセスの受け入れ基準を作成し、市場流通性、費用対効果等の解析による最適地域資源循環システムを構築する。動脈/静脈プロセスモデル地域における実証展開をはかり、事業化可能性を評価する(平成22年度)。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

研究の意義は認めるが、要素技術の開発とビジネスモデル/地域特性評価との関連が不明確である。また、他のメーカーや大学で開発中の技術との関連性・位置づけが不明確であり、国立環境研究所ならではの研究課題を設定する必要があるだろう。基本的には、社会全体としての最適な戦略を描くことが重要なので、その点を意識して研究を進めていただきたい。ビジネスモデルについては、どのような新規性があるか分からないので、今後の研究を進めるうえで明らかにしていただきたい。Win-winの意味が分かりにくいので、表現は検討していただきたい。

2.研究の進め方、組み立て

総花的になっているので、個別の研究を同じウェイトで実施するのは好ましくなく、絞り込みが必要だろう。また、社会的受容性・ビジネスモデルの評価については、研究の終了段階ではなく、早い段階から考慮する方がよい。技術開発の有効性や有用性の評価基準は明確にしておく必要があり、加えて、実用化に向けての注意点も明確にするとよい。科学技術基本研究計画で例示されている技術についても目を向けてもよいだろう。

5) 対処方針

1.研究内容

前段の指摘に関しては、要素技術開発の進捗・成果を踏まえた上で、プロジェクト後期にビジネスモデルの実証及び地域評価を行う予定である。メーカーや大学との関連性については、充分に認識して研究を進めることとするが、国環研としての強みは、自らの技術と他の技術との組合せ・システム化の視点を持ち社会ニーズと技術を繋ぐ機能を担うこと、政策への反映を念頭においた技術開発を行うこと、にあると考えている。中核研究プロジェクト1と連携し、社会全体のビジョン及び技術システムの位置づけを考慮しながら、最適な技術開発の戦略づくりを行う予定である。ビジネスモデルの新規性のご指摘については、国環研が関与することにより、公的な安心をベースとしたリサイクルネットワークの構築が進められている点に新規性がある。また、win-winの表現は、複数の環境分野への貢献を想定しているためこのまま使うこととし、成果によって意味を明確にしていきたいと考える。

2.研究の進め方、組み立て

プロジェクトの内容が総花的というご指摘に関しては、研究計画作成段階においても研究対象の絞り込みを行ってきており、当面は全体の中での個別の技術開発課題の位置づけや課題間の関係を明瞭にしながら進めていくことが重要と考えている。今後、技術開発の進捗と成果が社会に与えるインパクト等により、さらに絞り込むことは十分ありうる。早い段階から社会的受容性等の評価が必要とのご指摘については、それらを考慮し早い段階から必要な方向性の修正を行うとともに、第3年次において計画の見直しを厳しく評価・判断し、次の段階のビジネスモデルの内容にも反映を図る予定である。また、技術開発の有効性等の判断基準については、明確にした上で本プロジェクトを進めている。実用化の課題についても、各サブテーマごとに明確に意識しており、それらを解決するための総合的戦略を考えていく所存である。