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Ⅴ 中核研究プロジェクトの事前説明
2. 循環型社会研究プログラム

2.2 資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

廃棄物の適正管理及び、製品、資源の循環的利用が有害性と資源性(有用性)の両面を見据えた新たな物質管理手法の下に行われることを目指し、国民の安全、安心への要求に応えつつ、資源の循環的利用を促進し、資源回収・適正処理の高度化を支援することを目的とする。到達目標は、資源性と有害性の両面を見据えた物質管理方策を提示し、再生品促進のための環境安全品質の管理手法を確立することである。

2) 研究期間

平成18〜22年度(5年間)

3) 研究計画

平成18年度    プラスチック添加剤等を安全性確保の面からレビューし、有用性・有害性をもつ物質群を選定し分析法の検討を行うとともに、製品使用に伴う臭素系難燃剤等の室内及び家電リサイクル施設における挙動、環境排出に関する実態調査を行う。水銀等有害金属については、物質のサブスタンスフロー、リサイクル・廃棄過程を含めた環境排出量の把握に着手する一方、短期的及び中長期的に優先性の高い資源性金属群を選定し、物質フローの整備に着手する。また、複合素材中の金属の試験方法を検討し、製品・廃製品中含有量のデータ取得を開始する。さらに、建設資材系再生品の環境安全性評価試験系のレビューと類型化を行い、利用形態と利用環境ごとに安全品質管理に必要な情報を提示し、新規の環境曝露促進試験や特性評価試験の必要性等を抽出する。従来型の特性評価試験についても、高精度化と簡略化を図る。

平成19年度    プラスチック添加剤等の物性、毒性データを整備しリスク評価及び得失評価に用いる。再生プラスチック製品における臭素系難燃剤等、混入化学物質の調査を行い、従来製品との有用性、有害性の両面からの比較考察を行うとともに化学曝露メカニズムについて一定知見を得る。資源性・有害性金属類のサブスタンスフローを精緻化する。リサイクル・廃棄過程における有害性金属類の環境排出量、動脈系への移動について実験的検討、フィールド調査によりデータ集積を行う。廃棄過程に移行しやすい製品群の国内及び国際資源循環に対応して移動する金属類の推定手法に着手する。建設資材系再生製品からの有害成分の挙動について、各種試験を再現し実際挙動を表現できる発生源モデルと、評価試験データを発生源情報とする移動モデルを設計する。従来型特性評価試験の精度を評価し、標準化を完成させる。環境曝露促進試験、新規特性評価試験の原案を設計する。

平成20年度    プラスチックリサイクル過程におけるプロセス挙動、環境排出量調査を行い、再生製品のリスク低減対策技術について調査を行う。廃製品や廃棄物、環境媒体などにおける代替難燃剤の存在量調査を行う。難燃剤製品間の有用性、有害性の得失評価に向けた指標について検討を行う。資源性・有害性を有する金属類について、国際物質循環も考慮してサブスタンスフローを精緻化する。資源性金属類について、素材、製品中の含有情報を集積しつつ、リサイクル方法に応じた金属資源の回収可能性について指標化の方法論を検討する。再生製品の評価試験群のフレームを再整備し、個別の評価プログラムを提示するとともにケーススタディを行う。発生モデルと移動モデルを接合させ、再生製品利用場と周辺環境における有害成分挙動の評価手法を検討する。特性評価試験と発生・移動モデルによる評価プログラムの有効性確認のため、フィールド試験に着手する。

平成21年度    プラスチック関連物質のリスク制御対策について実証レベルの評価を行う。各種リサイクル方法によるリスク低減比較、ライフサイクル評価を実施する。難燃剤を対象に現行物質と代替物質間での有用性、有害性得失評価のケーススタディ解析を実施する。リサイクル方法の将来予測に対応して変化するサブスタンスフロー変化の推定と環境排出量の推定を行う。廃製品群・廃棄物からの資源性金属の回収性向上の技術的・政策的方策を検討する。潜在的資源の探索とその資源回収性について評価する。これまでの蓄積されたフローデータと周辺情報をもとに資源性・有害性の評価指標開発に着手する。環境曝露促進試験、新規特性評価試験の精度評価を実施し、標準化を進める。各種試験について、網羅的にデータを蓄積する。フィールド試験を継続する。建設資材系以外の再生製品や一次製品への評価試験群の適用性を検討する。

平成22年度    プラスチック樹脂、添加剤に関する管理方策のあり方について総括的な提言を行う。プラスチック含有物質の有用性、有害性の得失評価手法について提示する。新規対象物質に関する取り組みについて継続調査を行う。製品、素材中の金属量情報、詳細なサブスタンスフロー、資源性評価、資源循環に伴う環境排出等を総合し、資源性金属類の回収率向上の方策及び環境排出の低減方策をまとめ、金属類における有害性低減と適切な資源循環のありかたを提示する。フィールド試験による評価プログラムの有効性確認を完了する。評価試験と計算モデルに基づいた再生製品安全品質レベル決定手法を提示する。再生品品質管理および安全品質レベル設定手法のガイドライン化を行う。建設資材系とそれ以外の再生製品に対する試験データの蓄積を進める。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

有害性や資源性という観点から物質の利用と廃棄を統一的に把握してリスク評価や資源性評価に基づいて包括的管理方策を確立していく研究は、社会的・行政的ニーズが高い。その一方で、研究の新規性があいまいであり、また、他機関でできるような仕事を国立環境研究所で行う必要はないと考えられる。国立環境研究所ならではの新規性のある研究は何かを見据えていただきたい。また、管理方策といっている以上、単なる目標とするのではなく、社会で実現することを本気で考えていただきたい。現時点では、管理方策へどのように統合化するかの方針が見えないが、物質の包括的情報管理の基本モデル構築という位置づけを与えて、研究を進めていただきたい。

2.研究の進め方、組み立て

個別の研究として、土木系スラグ利用の検討などがあるがその理由は不明確である。個別研究は、物質の包括的情報管理の基本モデル構築のケーススタディと位置づけた方がよいのではないだろうか。また、資源性と有害性とのトレードを含む課題の解決には寄与しないと思われるので、その点も研究の対象にするか検討いただきたい。研究成果として管理方策を提示するのであれば、社会への波及効果が期待される年代を何時に設定しているか明確にした方がよいだろう。物質の包括的情報管理のためには、民間企業が有しているデータベースの活用を図ることも検討すべきであろう。

5) 対処方針

1.研究内容

前段のご指摘は、日頃より充分に意識しているところであり、当プロジェクトを遂行する上で、(1)現地調査や各種分析などによる1次データの取得やモデリング等を総合的に実施できる体制にあること、(2)再生品の評価管理手法や測定法などに関して、国際規格との整合も意識しつつ関係団体等と調整し我が国としての提案をするのに適当な中立的機関であること、などが国環研ならではの強みであり特徴であると考えている。また、包括的な管理方策を社会で実現してほしいとのご指摘は、本プロジェクトのスコープは循環・廃棄過程を起点とせざるを得ないものの、重要な視点として念頭におきたい。本プロジェクトを基本モデル構築のケーススタディと位置付けて、製品の循環・廃棄過程において高リスクが生じることのない物質管理・制御方策を社会的な取組・制度として統合化することを意識するとともに、結果的に上流側への情報管理・情報開示や製造者責任等にかかる今後の法体系の改正に反映できるよう、成果と提言をまとめるように研究を推進したい。

2.研究の進め方、組み立て

土木系スラグ利用等の個別研究は、特に社会的要請の強い建設資材系再生製品を対象に、安全性評価手法及び品質管理や安全性を管理するための方策を提案し、循環資源の受け皿の確保・拡大へ貢献していくために遂行したい。一方、プラスチック、金属等を対象とする個別研究は、基本モデル構築のためのケーススタディとして位置付けることとしたい。また、社会への波及効果が期待される年代については、政府による各種リサイクル法の見直しの時期に合わせ、適宜、本プロジェクトの成果・知見を反映させることが基本と考えている。なお、化学物質の包括的情報管理システム構築への波及効果は10年程度先になると想定するが、RoHS規制物質、POPS物質などの有害性が明らかな、あるいは懸念されている物質の包括的管理方策については、政府の検討に合わせ、必要に応じて所内の関連ユニットとも連携しつつ、適切な対応を図っていきたい。