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Ⅴ 中核研究プロジェクトの事前説明
2. 循環型社会研究プログラム

2.1 近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価

  • 更新日:2006年9月25日

1) 研究の概要

近未来における循環型社会の形成を目指し、OECD等の国際的な研究の動向を踏まえながら、社会条件等の変化とそれに伴う物質フローの時空間的な変化を量的・質的に予測・評価し、循環型社会形成に向けた戦略的な目標設定を行う。また、それらを達成するための資源循環型の技術システムと社会・経済システムへの転換を図るための政策・マネジメント手法の設計・評価を行い、近未来の循環型社会ビジョンに向けた転換シナリオを提示する。具体的には、

  1. 10〜20年後の循環資源・廃棄物の発生量を予測して資源循環の優先的対象を抽出するとともに、資源循環の指標群や定量的な目標を与える。
  2. 目標達成のために地域から国レベルの具体的な技術システムと政策・マネジメント手法を含む転換シナリオを示すとともに、その達成のための課題を明確化し、新たな循環型社会形成推進基本計画の検討に資する目標設定にかかる考え方や個別施策の方向性を提示する。

2) 研究期間

平成18〜22年度(5年間)

3) 研究計画

平成18年度は、様々な社会条件の変化とそれに伴う物質フローの変化に関する定性的な因果関係を網羅的に整理し、これらの変化を定量的に表現するための手法について検討する。資源循環技術システムを循環資源・廃棄物の種類、空間的特性、技術の原理などによって類型化し、国内外のレビューを行い、評価の対象とする近未来のシステムの一次的な設計を行う。国と自治体において各種法制度・政策の下で進められている取り組みの効果を計測し、国外の諸制度との比較考察などを含めて実態を明らかにする。また、循環・廃棄物マネジメントを支援するための指標・勘定体系における現状の課題を整理し、不足している事項について指標の作成や勘定項目の検討を行う。

平成19年度は、物質フローの変化に至る因果関係を表す定性的なロジックモデルを精緻化するとともに、いくつかの社会条件の変化シナリオについて、定量的な物質フロー予測モデルの開発を検討する。類型毎に設計した近未来技術システムについて、構成する技術プロセスについてのLCA/LCC(ライフサイクルアセスメント/ライフサイクルコスティング)のためのデータを集積するとともに、いつくかのシステムについて評価を行う。また、技術システムづくりのための短期的な誘導政策について検討する。各種法制度・政策に基づく取り組みの実態を継続して調査し、その効果ならびに有効性を評価する。また、指標の作成や勘定項目の検討を継続して行い、地域レベルでの適用可能性についてのケーススタディを通して指標・勘定の体系化などにつなげる。

平成20年度は、様々な社会条件の変化シナリオについて定量的な物質フロー予測モデルを開発し、予測を試みることによって、可能な限り定量的に近未来の課題を抽出するとともに、近未来の具体的な戦略目標を検討する。近未来技術システムを再検討し、データの再集積、精緻化を図り、LCA/LCC等の手法により評価を実施することによって、物質循環の達成レベル等について検討する。また、技術システムづくりを支援する中長期的な技術誘導政策のシナリオについて検討する。作成・検討された指標・勘定体系に基づく地域的な政策・マネジメント手法について検討し、戦略目標達成に向けた社会システムの転換シナリオについて検討する。また、循環・廃棄物政策全体の中期的課題を抽出・整理し、EPR(拡大生産者責任)の概念等に基づく国レベルの政策・マネジメント手法についても検討を行う。

平成21年度は、前年度までに検討した物質フロー予測モデルの精緻化を図るとともに、技術及び社会システムづくりのための現実的な転換シナリオに基づく物質循環の実現レベルと天然資源消費や脱温暖化などの上位の目標から要請を勘案し、ある程度の幅を持った戦略的な目標と転換シナリオに基づくロードマップについて検討する。また、他プロジェクトとの連携などにより、比較的短期的に実現可能な地域技術システムのモデル実証評価に着手し、データの集積を図る。また、作成・検討された指標・勘定体系のモデル地域実証を展開し、指標・手法の改善を図る。国レベルでも引き続き検討を行い、物質フローの適正化、EPRなどの責任・役割分担、経済的インセンティブ付与、他制度の比較といった視点で新たな循環・廃棄物政策の手法を検討する。

平成22年度は、各分野で検討されている長期ビジョン・シナリオとの整合や、実行段階を意識した具体化の観点から戦略目標の妥当性の確認、具体的なロードマップの検討、提示を行う。地域技術システムのモデル実証評価に基づく地域特性に応じたシステムビジョンを検討し提示する。また、作成・検討された指標・勘定体系のモデル地域実証を展開し、その改善を図る。国レベルでも引き続き検討を行い、新たな循環・廃棄物政策の手法を検討、提示する。

4) 外部評価委員会の見解

1.研究内容

近未来の資源・廃棄物のマテリアルフローを予測し戦略を立てる研究であり、3R戦略・社会経済政策に貢献できる内容である。十分な範囲をカバーしている一方で、この研究体制でどこまでできるかには不安が残る。また、国民の行動様式をどう位置づけるか、金銭フローは考慮するのか、考慮するのであればどのように考慮するか、WTOなどの国際的な動向をどこまで組み込むかなど、個別の点でも不明確な点がある。研究の対象範囲を的確に設定し、それを明確にすべきだろう。循環型社会基本計画は意識されているものの、環境基本計画はあまり意識されていないようである。広範囲の内容を扱う研究であるので、環境基本計画なども念頭に入れたおいた方がよいだろう。

2.研究の進め方、組み立て

単なる研究で終わらせないためにはどのようにビジョンを作成するか、ならびに多方面へのメッセージをどう出すかが重要であろう。その意味では、単一のビジョンを描くより複数のビジョン・シナリオを描く方がよいだろう。他のプロジェクトや他機関のノウハウ等を活かしながら、うまく共同研究を行うことが望まれる。ビジョン・予測ができたとしてその妥当性を評価する必要があるので、検証方法や基準を定めるべきであろう。産業連関は社会構造の変化によって異なるので、その点は認識して研究を進めていただきたい。

5) 対処方針

1.研究内容

研究体制については、地球温暖化をはじめ環境の長期・将来ビジョンに関わる研究を実施している所内のグループや大学等の外部機関とも連携しながら、成果を着実に挙げられる体制をつくっていきたい。また、研究の対象範囲を的確に設定すべきというご指摘に関しても、上記連携を活かして、検討を要するべき事項を適切に見定めると同時に、特に本研究で対象とするモノ、技術・社会システムを抽出整理し、研究の対象範囲が発散しないように進めていきたい。国民の行動様式については、消費行動の変化が与える廃棄への直接的影響と製品生産側への間接的影響を産業連関のモデル等により示したい。金銭フローについては、近未来の予測等は現段階では難しいと考えているが、可能な範囲で物質フローと一体的に捉えたい。また、ミクロ的にみれば、リサイクルなどに係る金銭の流れをできるだけ明らかにするとともに、適正な金銭フローを確保するための方策としての拡大生産者責任、支払い方式、廃棄物会計やそれに関連して議論がされる有料化による受益者負担のあり方やPFIによるコスト削減などの現在の問題を意識した研究展開もビジョンづくりの中で模索したいと考えている。

2.研究の進め方、組み立て

研究成果を効果的にメッセージとして発信することの重要性について、成果の活用としては、第一に環境省をはじめとする国、地方の行政機関等への発信による政策貢献を念頭においている。そのためには、ステークホルダーとしての産業界や一般市民との相互的な働きかけを通じて政策設計を行うことが重要と考えており、シナリオプランニング等の段階で意識していきたい。また、ビジョンとそれに向かうシナリオは、社会の価値観を伴うものとして、それぞれ複数設定するとともに、定量的な目標についてもある程度の幅を持たして設定していきたい。ビジョン・シナリオの妥当性評価については、明確な方法論は現時点で持ち合わせていないが、シナリオプランニングの方法・プロセス自体がビジョン・シナリオの妥当性を決定づけるものになると考えている。結果的には、政策サイドから評価・採用されて、政策への反映が実現できるか否かがポイントであると考える。