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Ⅴ 平成17年度新規特別研究の事前評価(平成17年4月)
身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究

  • 更新日:2005年6月30日

1)研究の概要

情報ネットワーク分野で「ラストワンマイル」と呼ばれる各家庭との接続部分に着目し、その身近な交通からの環境負荷の低減を目指す。特に、自動車の使い方に着目し、自動車から排出されるCO2及びNOx、PM、有害化学物質を使用形態別や輸送品目別に推計するとともに、車載機器を用いて地域の実使用条件下における自動車の走行実態を把握して正確な環境負荷評価を行う。また、宅配、コンビニ、ショッピングモール等の購買行動の違いによる環境負荷の違いを調査する。得られた結果をもとに、モデル地域を対象として、自動車の使用実態を考慮した最適な車両技術及び政策的対策の導入について、環境負荷とともに安全性や公平性、経済性の観点からも評価し、実現性の高い対策シナリオを提示する。

2)事業期間

平成17〜19年度(3年間)

3)16年度研究成果の概要

平成17年度は、一般ユーザー等の協力を得て、車載機器を搭載した一般車両による路上走行実態調査を行い、細街路を中心とした身近な交通における自動車の使用実態とCO2及び汚染物質排出量との関係を解明する。また、宅配、コンビニ、ショッピングモール等の購買行動の頻度の違いを調査する。

平成18年度は、乗用車の使用形態別や貨物車の輸送品目別のインベントリを構築するとともに、走行実態データの解析をもとに、自動車の使用方法や運転方法改善による環境負荷の低減可能性を定量的に評価する。さらに、前年度の調査結果をもとに、宅配、コンビニ、ショッピングモール等の購買行動の環境負荷の違いを調査する。また、モデル地域を設定し、地域に適した技術的、政策的オプションを選定する。

平成19年度は、自動車の使用方法や運転方法改善による環境負荷削減効果を予測するとともに、交通手段の選択や土地利用の最適化など、モデル地域における政策オプションを評価し、実現性の高いシナリオを構築する。

4)今後の課題、展望

自動車の排出ガス、燃費は、自動車の使用条件により大きく影響されることが知られている。例えば、燃費に関しては、カタログ上は極めて優れた数値を示すが、実際の燃費は、その6〜7割程度であることは、ユーザーならば、誰もが経験していることである。従って、車両に適用された技術をより有効に活用するためには、その特性を理解し、使用実態に応じた環境負荷削減対策を講じることが重要である。

また、近年、流通構造の変化に伴い、宅配便や郊外型の大規模店舗への自動車による買い物など、生活に身近な交通の需要が増加している。これらは、1回当たりの走行距離が短く、しかも、停止、発進が多いことから環境負荷が高く、改善の余地が大きいと考えられるが、その実態については、ほとんど把握されていない。そのため、地域特性に応じた実態把握を行い、利便性を維持しつつ排出量を減らす対策を早急に検討する必要がある。

5)評価結果の概要

社会的ニーズの高い重要な研究であり、成果を期待したいとの評価を複数受けた。具体的な内容に関しては、成果を市民や行政に対する教育、政策、都市整備プラン等に反映して欲しい等の要望があった。また、自動車メーカーへのフィードバックも重要との指摘もあった。その一方、自動車による環境影響は、多くの因子が複合しているため、この研究結果のみから期待した成果を得るのは難しいのではとの指摘も受けた。その他、研究方法に工夫が欲しい、ナノ粒子の健康影響評価は重要との指摘も受けた。

6)対処方針

大きなウェイトを占めるにもかかわらず、これまで十分な調査、検討がなされていない細街路の走行を中心とした身近な交通の実態調査(走行データの収集や使用実態アンケートなど)を進めながら、適時、研究計画、手法を見直し、目的達成に向けて研究を進める。各種対策については、実態調査等で得られた結果をもとに、経済的誘導や公共交通の利用促進を含む幅広いオプションについて環境負荷量削減の定量的な評価を行い、受容性等を考慮して、ユーザー、行政、自動車メーカーそれぞれに対して、実効性の高い対策を提案する。自動車から排出されるナノ粒子の問題については、別途実施する大気動態や健康影響に関する研究の知見を、対策オプションの選択等に反映させる。