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平成16年度特別研究新規提案事前評価(平成15年11月)
有機物リンケージと生物機能に基づいた湖沼環境改善シナリオの提言

  • 更新日:2003年6月30日

1)研究の概要

湖水有機物の化学的組成(糖類組成、アミノ酸組成、分子サイズ等)情報から分解性や起源を評価する手法を開発・確立する。湖水柱や底泥での溶存有機物(DOM) の生産や分解性、微生物群集との連動関係(リンケージ)を重点的に評価する。さらに湖沼での難分解性DOM の動態、湖水に蓄積するメカニズムや主要発生源を、フィールド調査とモデル解析を駆使して明らかにする。最終的に底泥浚渫等の流域発生源対策の効果を評価し、湖沼環境改善の具体的な方向性を提言する。

2)研究期間

平成16〜18年度(3年間)

3)研究成果

平成16 年度: 湖水等の有機物(溶存有機物や粒子状有機物)の組成(糖類組成、アミノ酸組成、分子サイズ等)を評価にする分析手法の開発・確立する。湖水、河川および様々な種類のサンプルについて、有機物の化学的組成と分解性のリンケージ(連鎖・連動関係)の検討を開始する。湖水(霞ヶ浦)有機物の組成、分解性および関連微生物群集の季節的・場所的な変動の検討を開始する。

  • 平成17 年度:
    上記の研究を継続するとともに、霞ヶ浦を対象として底泥からの溶出プロセスや微生物による分解プロセスを組み込んだ湖内3次元流動モデルおよびGIS を利用した流域発生源モデルを開発・構築する。
  • 平成18 年度:
    上記の研究を継続するとともに、開発したモデル等を利用して、湖沼環境改善のための流域・湖内発生源対策に係る改善シナリオを提言する。

4)研究予算額

  • 総額 60,000,000円

5)研究実施の背景

1980 年代中頃に琵琶湖北湖で注目された湖水での溶存COD 濃度の漸増現象は、その後、十和田湖、野尻湖、霞ヶ浦、印旛沼と遍在的な広がりを見せている。難分解性で溶存態の有機物(DOM) が湖水中で漸増している。しかしその原因は依然として不明である。一方、ダム湖では天然湖沼で姿を消しつつあるアオコ(主にミクロキスティス)が頻繁に発生している。ミクロキスティスの産生するDOM の約50 %は難分解性であることから、難分解性DOM の蓄積が懸念される。すなわちダム湖でも難分解性DOM の問題が顕在化すると推察される。湖沼での溶存有機物(DOM) 濃度の上昇は、湖沼生態系の変化(植物プランクトン−バクテリア微生物群集構造等)、水道水源水としての湖水の健康リスク(トリハロメタン等の消毒副生成物)や異臭味の上昇、有害化学物質の可動化等、湖沼環境に甚大な影響を及ぼすと考えられる。湖沼環境および水道水源保全上、早急に、難分解性DOM が湖水中に蓄積・優占するメカニズムを、特に内部生産由来(藻類や底泥溶出由来)の難分解性DOM の生産メカニズムを解明する必要がある。

6)評価結果の概要

研究の意義、着眼点、手法、計画、目標設定に関しては概ね良く出来ているとの評価を受けた。一方、科学的には良い研究であっても、本研究の成果が、湖沼環境の改善ための実用性の高い対策シナリオに実質的に結びつくのか懸念されるとの指摘を受けた。また、難分解性有機物(フミン物質等)に関する従来からの知見をより詳細に整理・考察して、本研究の独創性とは何かについてとりまとめるようにとの指摘を受けた。

7)対処方針

本研究で得られる研究成果が具体的に湖沼環境の改善施策に結びつくように、実用性や政策目的との関連性に十分に留意し、再現性のあるデータに基づいて、研究を進展させてゆきたい。また、従来知見、特に難分解性有機物(フミン物質)に関する文献調査・解析を充実させて、本研究の独創性を際だたせるようにしたい。