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重点特別研究プロジェクトの中間評価(平成15年4月)
地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト

  • 更新日:2003年6月30日

1)研究の概要

経済発展・気候変動及びそれらの影響を統合的に評価するモデルを開発・適用して、京都議定書及びそれ以降の温暖化対策が地球規模の気候変動及びその地域的影響を緩和する効果を推計する。そして、中・長期的な対応方策のあり方を経済社会の発展の道筋との関係で明らかにし、これらの対応方策をアジア地域の持続可能な発展に融合させる総合戦略について検討する(統合モデル研究)。

また、フィールド観測、遠隔計測、統計データ等をもとに、陸域と海洋の吸収比、森林の二酸化炭素吸収/放出量・貯留量、二酸化炭素の海洋吸収とその気候変動に対する応答等を推計し、炭素循環とその変動要因を解明する(炭素循環研究)

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)今までの研究成果の概要

統合モデル研究では、まず、世界多地域・他部門一般均衡モデル、経済・マテリアル統合モデル、国別排出モデル、国別影響モデル、農業影響モデル、水資源影響モデル等の主要なモデルの改良・開発が進み、最新のデータを用いたアジア及び世界の温室効果ガス排出量予測、温暖化対策に伴う経済への影響、温暖化によるアジアへの影響等、各種のシミュレーション結果を国際機関やアジア各国の政府などに提供することができた。また、気候等のモニタリングデータやエアロゾル排出量のデータベースを完備し、気候モデルについて再現実験が終了してモデルの高分解能化・高精度化への準備が整った。

一方、炭素循環研究では、地上連続観測、航空機観測、船舶による観測、衛星による観測等、モニタリングのための施設や体制を整えることができ、今までの観測をもとにして、海洋と陸域の吸収比とエルニーニョの影響、土壌呼吸と土壌水分量との関係等、炭素循環の変動過程やその支配要因に関していくつかの重要な知見を得ることができた。

4)今後の課題、展望

これまで個々の研究は順調に進んできたが、今後の最大の課題は、これらをどのように統合するかに集約される。社会経済・排出及び温暖化影響・適応モデルの統合評価モデル研究、気候モデル研究、それに炭素循環研究モニタリング研究の3つの研究を統合するため、地球規模の動学的植生モデルの開発を急ぎ、炭素循環モニタリングのデータの活用を図るとともに、陸域生態系と大気圏の相互作用を詳細に再現し、気候変動の炭素循環へのフィードバックや温暖化の影響につなげていきたい。

また、炭素循環研究では、今まで「予測」に力点を置いた研究計画を構成していたが、モニタリング研究の本来の重要な役割である「地球環境変動の早期警戒システムへの貢献」にも力点を置いた計画に修正する必要が生じている。幸い、地球規模、地域規模、森林内部の3つのスケールで独創的な機器開発や手法開発が進んでおり、その展開により精度の高い観測データが得られると期待されることから、「早期警戒システム」での高い貢献が期待できる。

5)研究予算額

  • 平成13年度:371,000,000円
  • 平成14年度:430,000,000円

6)評価結果の概要

「国際的に極めて重要な課題である、着実に成果が上がっている、世界をリードするまでに成長している、重点を絞った研究推進が図られている」等、肯定的な評価を受けた一方で、プロジェクト全体として「国際的な分業方針と本研究の分担を明確にすべき」、「『統合モデル』と『炭素循環』との統合を図るため動学的植生モデルの開発を急ぐべき」、「政策や社会への反映を配慮すべき」といった指摘があった。

統合評価モデル研究に対しては、「個々のモデルについてもっと研究が必要」、「健康や人間居住への影響の検討が必要」、「フローとストックの双方の精度管理に留意すべき」との指摘があった。

炭素循環研究については、「モニタリングの精度管理の方針を検討すべき」、「新しい衛星プロジェクトとの関係も配慮すべき」、「林分から地域へのスケールアップ研究が必要」、「土壌中炭素の動態を考慮すべき」との指摘があった。

7)対処方針

全体的には、本研究が世界の研究フロンティアのなかで特にアジアを分担し、社会科学と自然科学の統合モデリング研究とモニタリング研究が連携したユニークさを強調していくとともに、「炭素循環研究」と「統合モデル研究」との統合を図るため、ウイスコンシン大学の動学的植生モデルを早急に導入して統合モデルの拡張を図りたい。また、研究成果を速やかに政策・社会に反映していくことについても、さらに努力していきたい。

「統合モデル研究」については、引き続き個別のモデルの高度化を図り、健康や人間居住のモデルも統合モデルの中に取り込むことを検討するとともに、モデルの精度管理についてモデル横断的に検討してみたい。

「炭素循環研究」については、ご指摘の多くは今後の炭素循環モデルの高度化によって対応できると考えている。モニタリングの精度管理はモデルにより全体的な評価が可能となり、また、新たな衛星センサーが実現されれば、それから得られるデータを活用して、モデルをベースにした林分から地域へのスケールアップ研究も可能である。なお、土壌中炭素の動態については、根茎と土壌微生物の呼吸を分離する手法開発を進めている。