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特別研究平成15年度新規提案課題の事前評価
有機フッ素化合物等POPs様汚染物質の発生源評価・対策並びに汚染実体解明のための基盤技術開発に関する研究

  • 更新日:2003年6月30日

1)研究の概要

ダイオキシン類など環境残留性、生物蓄積性、毒性を持つ環境汚染物質(POPs様汚染物質)への取組み・対策強化に関するこれまでの研究を踏まえつつ、「環境モニタリングによる実態解明」と「発生源評価」、「分解技術の確立」を柱とする取り組みのための基盤科学技術開発、情報整備をテーマとして以下の研究を進める。意図的生成物質の中で取り組みが遅れていた有機フッ素化合物の例としてPerfluorooctane Sulphonate(PFOS)並びに類縁化合物を取り上げ、

  1. 分解産物の同定と一斉分析法の整備、モデル地域(東京湾)の汚染状況把握
  2. 廃棄処理まで含むマテリアルフローの概要把握
  3. 分解条件の検討と基礎的な方法論の確立
  4. PFOS特有のバイオマーカー(曝露指標)の探索と環境モニタリングへの適用可能性の評価、をそれぞれ目標として研究を進める。また、燃焼起源の非意図的生成物質への取り組み強化のために
  5. 発生源として生物由来の生ゴミや紙等と化石燃料を区別できる14C測定法を大気試料中化学物質に適用して発生源の寄与を推定する手法の確立と有効性評価を実施する。

2)研究期間

平成15〜17年度(3年間)

3)研究計画

  • 平成15年度:
    PFOS類について、1)主要熱分解生成物の同定と一斉分析法の開発、2)魚類を用いた曝露指標の開発、3)マテリアルフローの追跡調査、4)分解手法の基礎研究を開始する。また、5)大気中汚染物質の抽出、精製法の検討を開始する。
  • 平成16年度:
    上記の研究を継続するとともに、1)で開発する分析法を東京湾試料に適用し分析を始めるとともに、5)については14C測定のための手法開発を実施する(上記1)の分析法開発部分と3)のマテリアルフロー解析は16年度で終了予定)。
  • 平成17年度:
    上記の研究を継続し、開発した手法の評価、研究のとりまとめを行う。

4)研究予算額

総額 60,000,000円

5)研究実施の背景

化学物質は生活、産業活動のあらゆる局面で文明を支える重要な役割を担っているが、広範な利用に伴い思いがけない環境汚染が発生する危険性も増加し、取り組み体制の強化も益々重要になっている。とりわけ環境残留性、生物蓄積性、毒性を持つ化合物(POPsと総称)による広域的汚染が問題となり、PCB等12物質を対象に2001年5月に汚染低減にむけた国際条約が結ばれた。しかしながら、膨大な数の既存化学物質に関する評価や情報整備はまだまだ遅れており、製造後の利用や廃棄までを視野に納めた評価の体制も未整備である。また、非意図的生成物質については発生源の定量的把握が困難であり、汚染への寄与を精度良く求めるための新たな手法が求められている。毒性、製造・使用に関わる既存の情報から高リスク物質を選び対策を進める努力はもちろんのこと、既存の情報が不完全であることを認識して、環境媒体・生物の総合的な監視から何らかの異常を早期に検知する体制作りも極めて重要な意義をもつと考えられる。

6)評価結果の概要

重要な研究課題との評価を受けた一方、多くの要素を組み込んだ結果、研究が発散する恐れについて指摘を受けた。特に、対象物質を絞り込んで集中的かつ多角的に研究を進めるべきとの指摘を複数受けた。また、対象化合物の選定経緯についてもわかりにくい点を指摘された。

7)対処方針

環境残留性、毒性等を持つPOPs様化学物質の中で、これまで取り組みが遅れている有機フッ素系化合物に的を絞り、意図的生成物質としてPFOS類縁化合物を取り上げて、マテリアルフローの把握と分解物まで含む環境中濃度・曝露実態の把握、完全分解法の検討を含んだ形に研究計画をまとめる。一方取り組みの難しい非意図的生成物質の代表例としてPAHs(多環芳香族炭化水素)等燃焼生成物を取り上げ、発生源の寄与の推定に役立つ新たな分析手法の開発を行うこととする。