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 事後評価の年度評価(平成13年12月)
環境中の化学物質総リスク評価のための毒性試験系の開発に関する研究

  • 更新日:2002年3月28日

1)研究の概要

化学物質の総合的なリスクを生物学的な検定手法により評価する手法の開発を試みた。19種のバイオアッセイ系で、50種のモデル化学物質及びその組み合わせについて急性毒性試験を行なった。その毒性値の比較等を行い、またこれらのバイオアッセイ系の主要なものについて環境水や工場排水への適用を行った結果、基礎細胞毒性をはじめとするいくつかのバイオアッセイ系の組み合わせが、環境中に存在する有害性を総合的に評価する試験法として有用であり、実用に供することが可能であることが示された。

2)研究期間

平成10〜12年度(3年間)

3)研究成果

  1. インビトロ細胞の国際的な評価プログラム(MEIC)にも参加しつつ、ヒト由来細胞、ゲッ歯類由来細胞、その他の小動物及びバクテリア等19種のバイオアッセイ系を評価した。ここで得られる基礎細胞毒性は有害性の総合評価指標として有力な候補と判断された。
  2. ヒト由来培養細胞を用いた毒性試験では、各種細胞種間で密接な相関関係を示すことが明らかとなった。また血液脳関門を通過する物質について補正を行うことにより、ヒトでの急性毒性発現血中濃度も予測可能と考えられるようになった。
  3. 複合影響を推定するため、化学物質混合物について試験を行った結果、いくつかの混合物試料について相乗的な効果や相殺的な効果が認められたが、基本的には相加的と考えて評価することで差し支えないという結果となった。
  4. 環境水試料については減圧濃縮法などによる濃縮により、また工場排水試料については塩濃度(浸透圧)に留意して希釈等を行って適用にすることが必要であり、また有用なデータが得られることが明らかとなった。

4)研究予算額

総額約70百万円(実績額)

5)研究実施の背景

いわゆる「公害」のような特定の化学物質による重篤な環境汚染はみられなくなってきているものの、汚染の実態はますます複雑化、深刻化している。多くは微量であるが無数の化学物質による複合汚染であり、ダイオキシン類のように非意図的に生成されたもの、さらには環境中で変換されたものも存在しうる。したがって、化学分析によってこれらすべてを検出、同定し、定量するのは事実上不可能であり、極めて重大な有害性を持つ物質が見過ごされてしまっている可能性も存在しうると考えられる。様々な生物学的評価試験法(バイオアッセイ)を用いて、環境試料中に存在するいわゆる一般毒性(急性、亜慢性毒性)の総量を反映しうる新たな有害性総合評価指標の確立が必要とされている。

6)評価結果の概要

バイオアッセイによる環境モニタリングに道を拓いた点について評価された。一方、フィールド適用にはまだ多くの課題が残されており、今後の研究継続が必要である、特に複合影響の評価、他の水質パラメータの影響評価、慢性毒性発ガン性評価との関連性や試験系の精度管理等に力を注ぐ必要があるとの指摘を受けた。

7)対処方針

社会的ニーズが大きいことも踏まえつつ、有害化学物質対策研究の中で、指摘されている助言内容についてこの種の研究を地道に継続し、バイオアッセイによる環境モニタリングの実用化に努力していきたい。重点特別研究プロジェクト「内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理」等の化学物質研究において研究を継続し、また特に環境省の水管理政策に反映できるような形での実用化にむけて研究を展開したいと考えている。また各種バイオアッセイから得られる種々の生態影響情報の統合化についても実施していく予定。