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 事後評価の年度評価(平成13年12月)
廃棄物埋立処分における有害物質の挙動解明に関する研究

  • 更新日:2002年3月28日

1)研究の概要

廃棄物中の化学物質が埋立処分でどのような挙動をするか、という点を中心に研究を行った。埋め立てられる固形廃棄物中に含まれる揮発性有機成分の迅速分析法の開発を行い、その有用性を検証した。また、埋立廃棄物(廃プラスチック類、焼却灰など)中に含まれるホウ素、有機リン酸エステル類、ビスフェノールAなどの化学成分の溶出挙動を明らかにした。さらに埋立処分場浸出水中に存在する化学物質の生物影響を評価するために、遺伝毒性とエストロゲン活性の検出システムを開発し、実際の埋立処分場浸出水に応用した。

2)研究期間

平成10〜12年度(3年間)

3)研究成果

  1. 埋立廃棄物中の有害化学物質の簡易分析法の開発に関しては、密封容器に廃棄物試料 を充填・加熱し、揮発してきた有機成分を吸着濃縮し、ガスクロマトグラフィー質量分 析法で分析する手法を開発した。
  2. 埋立廃棄物に含まれる有害化学物質の溶出挙動に関しては、無機成分と有機成分に分 けて研究を行った。無機成分ではホウ素に焦点を絞り、各種廃棄物中のホウ素を化学形 態別に測定した結果、浸出水中に溶出してくるホウ素の挙動を解明することに成功した。 焼却灰の浸出水はアルカリ性を示すが、このアルカリ分は有機物の加水分解に使用され るために、有機成分が多い場合は浸出水のpHは中性に近くなる。有機成分としては、 リン酸エステルなどのプラスチック添加物、ビスフェノールAなどに着目し、廃プラ スチック類と焼却灰を素材にしたモデル埋立実験で、起源、生成機構、溶出挙動などを 明らかにした。リン酸エステル類については長期にわたって溶出する傾向が、ビスフェ ノールAについては一時期急激に溶出量が増加した後、溶出量はひじょうに少なくなっ て、長期に持続する傾向がみられた。1,4-ジオキサンについてはその起源を特定するに は至らなかったが、廃プラスチックの処理工程が関係している可能性が示された。
  3. 浸出水が生物に及ぼす影響の評価法のひとつとして、浸出水及び処理水の遺伝毒性と エストロゲン活性を、微生物によるアッセイで調べる手法の開発を行った。この手法で 多くの廃棄物埋立地浸出水および処理水を調べた結果、いくつかの浸出水で遺伝毒性と エストロゲン活性が検出されたが、処理水では大きく低減することがわかった。毒性の 強さや評価尺度については、さらなる研究が必要である。

4)研究予算額

総額約75百万円

5)研究実施の背景

廃棄物の埋立処分では浸出水・漏出水による環境水の汚染などによって、人の健康あるいは生態系への影響が危惧されている。国立環境研究所で過去に実施された特別研究の成果によって、埋立処分に起因する有害化学物質の排出状況はかなり明らかになってきたが、浸出水から高頻度・高濃度で検出されている物質の起源や挙動は解明されていない。また、埋立処分地浸出水の生物影響に関してもよく分かっていない。

6)評価結果の概要

埋立処分場における有害物質の挙動を詳細に研究したことは高く評価された。一方、複雑多岐な廃棄物と多種多様な化学物質の関係を体系的に整理・解析する手法開発ならびに住民等が利用できる簡易計測法開発の必要性・重要性が指摘された。

7)対処方針

政策対応型調査・研究「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究」の中で、簡易分析法によるスクリーニング法と機器分析による精密分析手法を組み合わせた体系的分析システムの開発に取り組みたい。対象化学物質は揮発性物質だけではなく、不揮発性物質も含み、新しい機器分析法の開発も考える。このシステムでは埋立地浸出水だけではなく、埋立廃棄物そのものや不法投棄された缶入り液状廃棄物も分析対象とする。また、毒性試験などによるリスク評価も行えるようなシステムに発展させていく。