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 重点特別研究プロジェクト及び政策対応型調査・研究への助言の年度評価(平成13年4月)
成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明

  • 更新日:2001年10月4日

1)研究の概要

平成13年度冬期に打ち上げ予定の、環境省が開発する人工衛星搭載オゾン層観測センサー「改良型大気周縁赤外分光計II型(ILAS-II)」で取得される観測データを処理し、オゾン層研究、オゾン層監視等、科学的利用のためのデータプロダクトとして、国内外に向けて提供する。さらに、平成17年頃の打ち上げ予定の、ILAS-II後継センサーである「傾斜軌道衛星搭載太陽掩蔽法フーリエ変換分光計(SOFIS)」のデータ処理、運用に係る地上システムを開発し、SOFISの運用開始に備える。つくば(国立環境研究所)及び陸別(陸別成層圏総合観測室)における地上からのオゾン層モニタリングを継続実施し、国際的ネットワークであるNDSCデータベースにデータを提供するとともに、国内外に向けてデータの提供を行う。極域オゾン層変動に係る物理・化学的に重要な要素プロセスについて、その機構及びオゾン変動に対する寄与の解明を行う。また、オゾン層保護対策の根拠となったオゾン層変動予測、及び最新のオゾン層変動予測の検証を行い、オゾン層保護対策の有効性評価に係る知見を提供する。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究成果

平成13年度:ILAS-IIデータ処理運用システムの改訂と、データの処理・提供を行う。SOFISデータ処理運用システムの開発研究を行う。陸別、つくばにおけるオゾン層のモニタリングを実施する。地上リモートセンシングデータ及びILASデータを用いた解析を行う。以上については、以後、継続的に行う。データ解析に基づく極域プロセスの分析とモデルモジュールの検証を行う。
  平成14年度:地上及び気球観測データを用いたILAS-IIデータの検証解析を行う(以後、継続して行う)。ILASおよび地上観測データ解釈へのモデルの応用とオゾン層破壊関連物質の分布のモデル分析を行う。
  平成15年度:ILAS-IIデータを用いた解析研究を開始し、以後、継続して行う。ILASおよび地上観測に基づく特異事象へのモデルの応用と個々の温室効果気体の変動に対するオゾン層応答のモデル実験を行う。
  平成16年度:極域オゾン層破壊関連物質の分布の再現と温室効果気体の変動に対するオゾン層応答の分類化を行う。
  平成17年度:SOFISデータ処理運用システムの試験、調整を完了し、運用を開始する。極域でのオゾン破壊速度の年々変動の再現と温室効果気体変動に対するオゾン層の応答の定量化を行う。

4)研究予算額

811百万円/年(予定額)

5)研究実施の背景

特定フロン等によるオゾン層破壊の問題に関しては国際的な取り決めにより、種々の対策が施されて来たにも拘わらず、依然として南極オゾンホールの年々の発現、北極域の春季オゾン破壊が進んでおり、必ずしも当初の予測通りには事態は進行していない。研究計画期間は、オゾン層保護対策の効果が現れ、成層圏ではオゾン層破壊物質濃度がピークに達し、緩やかな減少傾向に転ずる時期と考えられている。とりわけ極域(高緯度域)成層圏オゾン層は、種々の要因の影響を最も顕著に受ける領域と考えられ、また中緯度域もその影響を頻繁に受けることが想定される。種々の手法によるオゾン層の観測を行い、データ解析、モデリング等によりオゾン層変動機構に係る科学的知見の蓄積を図るとともに、将来のオゾン層変動の予測、検証を行い、さらにオゾン層変動の監視やオゾン層変動機構の解明に資するデータを国内外に提供することが求められている。

6)評価結果の概要

「内容は着実であり、適切な研究計画である。研究計画が明確で研究項目、順序等も非常にきちんと整理されている。大型の国家的研究として期待したい。将来的にはオゾン層のモニタリングが環境省の業務として定着することを期待したい。」等、おおむね肯定的な評価を受けた。一方、「地上からのリモートセンシングモニタリングを利用した研究課題を、もっとはっきり提案すべき。」との指摘を受けた。また、モデル計算に関連して、「将来予測に係わる仮説をいくつか立て、それを検証するという立場も強める必要があろう。」との示唆を受けた。また、今回の研究計画がどのような知見を集積しようとしているのか、そしてそれがどのように、より正確な予測を保証するのかが具体的に示されているとは言い難い、との指摘があった。

7)対処方針

地上モニタリングデータを用いた研究については、極域オゾン層の影響とそれ以外の要因によるオゾン変動が交錯する中緯度オゾン層の短期的・中期的オゾン層変動を解析することとしており、地上からのリモートセンシングが衛星観測と相互補完的な役割を果たすことを示していく。
  モデル研究の位置づけについて指摘の通りと考えており、本研究プロジェクトでは、衛星ならびに地上観測データを活用した数値モデルによるオゾン破壊の機構解明に加え、火山噴火に対するオゾン層の応答や温室効果ガスなどの増加シナリオのもとでのオゾン層の長期変動予測等の将来予測に係わる研究を行っていくこととしている。また、モデルによって予測されたオゾン層の長期変動を、衛星ならびに地上モニタリングを通して検証していく。
  どのような知見の集積が予測の精度向上にどのように貢献できるかについてはモデル研究を実施する中で明らかにしつつ、具体的な研究課題やそこから期待される知見をより明確にし、研究を進めていきたい。
  なお、本プロジェクトで実施する研究の範囲は、人的資源を考慮して的を絞ったものとなっている。質問のあった研究課題の一部(UV-Bの地上到達量に関する研究等)については、当研究所の基盤的調査研究の一部として実施されることになっている。