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 重点特別研究プロジェクト及び政策対応型調査・研究への助言の年度評価(平成13年4月)
地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト

  • 更新日:2001年10月4日

1)研究の概要

経済発展・気候変動及びそれらの影響を統合的に評価するモデルを開発・適用して、京都議定書及びそれ以降の温暖化対策が地球規模の気候変動及びその地域的影響を緩和する効果を推計する。そして、中・長期的な対応方策のあり方を経済社会の発展の道筋との関係で明らかにし、これらの対応方策をアジア地域の持続可能な発展に融合させる総合戦略について検討する。また、フィールド観測、遠隔計測、統計データ等をもとに、陸域と海洋の吸収比、森林の二酸化炭素吸収/放出量・貯留量、二酸化炭素の海洋吸収とその気候変動に対する応答等を推計し、炭素循環とその変動要因を解明する。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究成果

平成13年度:主要モデル及び戦略的データベースの基本部分の改良・開発に着手するとともに、これらを適用して排出ベースライン・シナリオ、ベースライン気候変動シナリオ、及びアジアの将来環境の変化シナリオを概括的に予測する。また、炭素循環解明のための観測技術の開発方針を検討するとともに、炭素吸収源の計測技術の検討及びその評価のための制度設計調査を行う。
  平成14年度:個別モデルの精緻化を進めるとともに、これらの個別モデルのインターフェースを整備してモデルの統合を開始する。そして、排出シナリオ及び気候変化シナリオを精緻化する。また、炭素循環解明のための観測データの質的チェック体制を確立して高精度化へフィードバックするとともに、炭素吸収源評価手法を確立して炭素クレジット認証手法を開発する。
  平成15年度:モデルの統合化を完成させ、戦略的データ・ベースの詳細部分を完成させる。そして、地域気候変化シナリオ及び影響シナリオの精緻化を図る。また、炭素循環関連パラメータの短期的時間変動や空間分布を把握するとともに、炭素吸収のモデル化と炭素クレジット認証手法の実証を行う。
  平成16年度:統合モデルの基本部分をアジア主要途上国に移転し、政策導入の効果分析を行うとともに、気候変化シナリオ及び影響シナリオを完成させる。また、炭素循環関連パラメータの年々変動要因を解明するとともに、炭素吸収源ストック算定モデルの開発とクレジット取引の分析を行う。
  平成17年度:統合モデルの詳細部分及び戦略的データ・ベースを含めてアジア主要途上国に移転し、アジア主要国の経済政策と気候政策との統合政策を評価する。そして、気候変化や影響シナリオにおける不確実性の度合いを明らかにする。また、炭素循環と気候変動との関係を明らかにし、炭素吸収量を詳細に推計して、統合評価モデルに反映する。

4)研究予算額

364百万円/年(予定額)

5)研究実施の背景

地球温暖化問題は今、巨大な不確実性を抱えながらも、現象解明から対策研究へとその重点を移しつつある。京都議定書の達成が緊急の課題になり、さらに、2020年から2030年を目指した対策や今後一世紀にわたる長期的な対応のあり方が問われている。しかも、残されている現象面の種々の不確実さを解明していかなければならない。本プロジェクトは、過去10年以上にわたって蓄積された研究成果を基礎にして、これらの新しい研究ニーズに体系的に応えることをめざす。

6)評価結果の概要

「極めて重要な課題、今までの試算を使った努力を期待、国際問題としての理解が深い、提言に説得力がある」等、肯定的な評価を受けた一方で、プロジェクト全体として「『炭素循環』と『統合評価モデル』とを一つのプロジェクトにする必然性が理解できない」、「全体に問題点を明確にして焦点を絞るべき」、「大学や他の研究機関の活動をクラウディング・アウトさせないように配慮すべき」といった指摘があった。また、炭素循環研究については、「生物圏の応答メカニズムの把握と定量化に焦点を当てるべき」、「測定精度の向上を図るべき」との指摘が、また、統合評価モデル研究に対しては、「政策的に切迫した事態に対応する計画を立てるべき」、「具体的な対策シナリオが書けるように努力すべき」、「途上国の立場に立った評価も考慮すべき」との指摘があった。

7)対処方針

全体的には、「炭素循環研究」の成果を「統合評価モデル研究」に反映させるべく、両者の連携をより密接にして、総合的な研究として推進していきたい。また、個々の研究課題において、初年度に問題の所在をさらに明確にして、来年度以降の研究の焦点をより明確にしていくこととしている。さらに、大学や他の研究所との役割分担については、総合科学技術会議の全体のフレームワークにもとづいて、より有効な協力と競争の関係を形成していきたい。
  「炭素循環研究」については、生物圏の応答メカニズムの解明に力を入れることはこのプロジェクトの基本的な方針であり、モニタリング、モデル化を含めて総合的に研究を推進していく予定である。ただし、海洋の応答についても、国際的な分担・共同研究計画により、実施すべき研究は分担する予定にしている。また、測定精度向上は本研究プロジェクトと表裏一体をなすものであり、酸素や炭素同位体比測定、航空機による二酸化炭素の高度分布測定、土壌呼吸の自動測定等、各種の測定法の精度向上を図っていきたい。
  「統合モデル研究」については、切迫した政策対応は過去10年間に実施した研究成果で対応することが可能であり、この研究プロジェクトにおいては、2010年以降一世紀のタイムスパンのシナリオ分析に力を入れていく計画である。また、これらのシナリオ分析においては、経済、産業、技術、ライフスタイル、貿易、地域的な気候変化、地域的な環境変化や土地利用変化を含めて、可能な限り具体的なシナリオが描けるよう努力していく。さらに、発展途上国の立場に立った評価については、過去7年間にわたって共同研究を続けてきた中国やインド等の研究者と共同して、発展途上国が自律的に政策立案に活用していくレベルにまで、途上国のシナリオ分析のキャパシティを高めていきたい。