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 重点特別研究プロジェクト及び政策対応型調査・研究への助言の年度評価(平成13年4月)
循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究

  • 更新日:2001年10月4日

(1)循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

1)研究の概要

循環資源をはじめとする物質のフローを経済統計と整合的に記述・分析し、循環の度合いを表現する手法、資源の循環利用促進による環境負荷の低減効果を総合的に評価する手法、地域特性にあった循環システムの構築を支援する手法、および循環資源利用製品の安全性を評価する手法を開発し、これらを循環型社会への転換に係る諸施策の立案・実施・達成状況評価の場に提供することにより、社会を構成するさまざまな主体による効果的な「循環」の実践の促進に貢献することを目指す。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

平成13年度:産業連関表と連動した物質フロー分析手法、資源循環促進策の評価手法、循環システムの地域適合性の診断手法、循環資源利用製品の安全性評価手法の4分野について、手法の設計、基礎情報整備に着手する。
平成14年度:事例研究への着手により、上記4分野についての具体的な手法開発を進める。
平成15年度:事例研究の対象を拡大し、各分野の手法開発をさらに進める。
平成16年度:最終年度の成果とりまとめに向け、各分野のモデル・システム・評価法開発を概ね完了させる。
平成17年度:5年間の研究の到達点として、1)マテリアルフロー分析手法の確立及び情報基盤の整備、2)循環資源の利用促進による環境負荷の低減効果の定量的・総合的評価手法の開発、3)地域に適合した資源循環システムの高度化を図るための統合型地域循環診断システムの開発、4)リサイクル材料・製品の安全性評価方法の立案、特に都市ごみ溶融スラグと焼却灰に関する新たな溶出試験方法の確立と標準化のための基礎資料の提供、を達成する。

4)研究予算額

平成13年度:142百万円

5)研究実施の背景

大量生産・大量消費・大量廃棄型といわれる現在の経済・社会から、循環型の経済・社会へ向けて舵が切られはじめたが、目指すべき到達点やそこに至るまでの具体的な方策の検討はまだ緒についたばかりである。こうした中、循環型社会のあり方を長期的な視点から見定めていくことの必要性はいうまでもないが、当面の政策への対応という観点からは、資源の循環利用に係るさまざまな技術や社会システムの得失を総合的に評価し、導入を図るべき手段を見極めて、施策に反映させていくことが求められている。また、こうした評価の基礎となる情報基盤を整備し、資源循環の現状と問題点の的確な理解を支援することが必要である。

6)評価結果の概要

具体的な法制度を対象とする研究ができないか、という指摘を受けた。また、サブテーマ(2)及び(3)の施設系の研究から得られるデータをLCAの基礎データとして利用すべきという指摘、及び現実の社会における問題の流れを観察し、研究テーマをさらに検討すべきとの指摘を受けた。

7)対処方針

法制度に関する研究については、家電、食品、建設、自動車など個別リサイクル法の対象となっている分野等に重点的に取り組むことにより、指摘の趣旨を反映できるように努力する。また、技術的・実験的な研究成果をLCAなどのシステム解析に用いることで、より幅の広い、深い考察につなげていくこととする。さらに、より包括的な研究分野である重点研究分野「廃棄物の総合管理と環境低負荷型・循環型社会の構築」に位置付けられる研究を含めて、消費者や企業など具体的な主体に関連する研究や「ライフサイクル管理」の考え方・政策・制度についての研究を進めたい。

(2)廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

1)研究の概要

資源の循環及び廃棄物の適正処理・処分のための技術・システムおよびその評価手法を開発し、これらを循環型社会の基盤技術・システムの要素技術に資することを目的して、熱的処理システムの循環型社会への適合性評価手法の開発、最終処分場用地確保と容量増加に必要な技術・システムの開発、海面最終処分場のリスクや環境影響のキャラクタライゼーション、処分場の安定度や不適正サイトの修復必要性を診断する指標やそれらを促進・改善する技術の評価手法の開発、有機性廃棄物に関する発生構造・需給要件及び物質フローの把握と循環資源化要素技術及びシステム評価手法の開発を行う。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

平成13年度:1)主要な熱的処理技術の総合評価手法と循環資源や有害物質の高度分離・抽出・精製技術等の開発、2)埋立地容量増加技術及び海面最終処分場の適正立地評価、3)最終処分場の適正管理手法と早期安定化や修復必要性の診断及び促進・改善手法の開発、及び4)有機性廃棄物の資源化システム及びその評価手法の開発の4分野について、基礎理論や手法の構築、装置の基本設計、並びに基礎情報整備に着手する。
平成14年度:事例研究への着手により、具体的な手法や技術・システム開発を進める。
平成15年度:事例研究の対象を拡大し、手法開発をさらに進めるとともに、技術開発の分野では実証化を検討する。
平成16年度:システム・評価法並びに資源化や容量増加、修復技術開発を概ね完了させる。
平成17年度:プロジェクトの到達点として、1)循環型社会における循環資源製造技術や廃棄物処理技術の適合性評価手法の開発、2)埋立地容量の増加が可能な新システムの提案及び海面最終処分場の適正立地のための環境負荷及びその低減技術の評価、3)最終処分場の適正管理のための混合毒性評価法及び予防的早期警戒システムの開発、最終処分場の安定化診断・促進手法の開発、4)有機性廃棄物の資源化技術及びシステムの地域適用と最適化手法の開発を行う。

4)研究予算額

平成13年度:162百万円

5)研究実施の背景

再資源化や熱利用等循環資源としての廃棄物の利用及び環境への負荷をできる限り低減化した廃棄物の処分を進めるためには、資源化や処理・処分に関する技術及びシステムを適切に評価し、より一層高度化することが必要不可欠である。このため、有害な化学物質や二酸化炭素の排出量、費用などを指標として、循環型社会にふさわしい廃棄物の資源化・処理システムを選定するための総合的評価手法の開発や、新たな最終処分場の確保が極めて困難になっている現状を踏まえた最終処分場の延命化・安定化促進等に関する技術開発及び既存処分場や跡地等の安全性診断手法の開発、地域の農業特性などに需要と供給のバランスを図りつつ、生ゴミなどの有機性廃棄物の資源化を進める技術・システムの開発が求められている。

6)評価結果の概要

廃棄物の種類に対応した処理技術の開発をするという発想が全体的に感じられるが、もっと汎用的な処理技術開発をプロジェクト化してみる試みがあっても良いとの指摘を受けた。

7)対処方針

現在、燃焼処理技術とともに、高圧熱水分解技術は比較的汎用性の高い処理技術といえる。多種多様な廃棄物に適用可能な汎用技術の開発という視点は廃棄物処理のメインシステムの構築という観点から重要であり、つねに念頭におきつつ研究を進めていく。

(3)資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

1)研究の概要

資源再生利用や中間処理、最終処分における安全性を確保し、再生利用量の拡大に資することを目的としている。循環資源や廃棄物に含有される有害化学物質によるリスクを総合的に管理する手法として、バイオアッセイ手法を用いた包括的検出手法、臭素化ダイオキシン類を的確に把握できる検出手法とその制御手法、不揮発性物質を系統的に把握する検出手法、有機塩素系化合物を含有する廃棄物等の分解手法を開発する。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

平成13年度:1)バイオアッセイ手法を用いた包括的検出手法、2)臭素化ダイオキシン類を的確に把握できる検出手法とその制御手法、3)不揮発性物質を系統的に把握する検出手法、4)有機塩素系化合物を含有する廃棄物等の分解手法の4分野について、手法の基礎情報整備から実験系の設計と試行に着手する。
平成14年度:具体的な循環資源や廃棄物への適用に着手し、上記4分野についての具体的な手法開発を進める。
平成15年度:事例研究の対象を拡大し、各手法の開発と改良をさらに進める。
平成16年度:最終年度の成果とりまとめに向け、各手法の限界を見極めつつ、手法開発と具体事例適用を概ね完了させる。
平成17年度:5年間のプロジェクトの到達点として、1) 循環資源や廃棄物などに含有される有害物質のバイオアッセイ法による測定監視手法の開発及び循環廃棄過程における塩素化ダイオキシン類以外の制御対象物質群候補のスクリーニング、2)有機臭素化合物の主たる発生源、環境移動経路の確認と測定分析手法の確立、3)LC/MSによる系統的分析システムの開発、4)廃棄物および関連試料中に含まれる有機塩素系化合物を高効率で抽出、無害化する手法の開発、5)循環資源や廃棄物の流れにおける有害物質のフロー解析及びライフサイクルアセスメントを用いた理的な製品/技術の選定手法の提示を行う。

4)研究予算額

平成13年度:162百万円

5)研究実施の背景

廃棄物の処理処分過程が環境汚染源になっているのではないか、その心配の程度はどのように確認すればいいのか、その影響を緩和するための制御技術はあるのか、といった課題は廃棄物問題に常につきまとってきた問いである。物質循環型の社会へ舵を切れば、この問題は物質循環過程に拡大することとなる。このような状況をふまえ、資源循環や廃棄物管理システムにおけるリスク制御手法の開発が必要となっている。

6)評価結果の概要

循環型物質フローを考える場合、物質中に存在する又は処理中に発生する毒性物質の同定・定量及び除去技術がポイントであり、バイオアッセイ手法の利点・欠点を踏まえた効果的な計測・監視システムを構築することが重要との指摘を受けた。

7)対処方針

指摘されたように、機器による化学分析は規制項目や特定の物質については正確な測定値を出すことができるが、毒性影響の包括性という観点では、未規制物質や未知物質に対してほとんど無力の場合がある。他方、バイオアッセイはバラツキや正確さの点で問題点を含んでいるものの、未規制物質や未知物質も含めた包括的な情報を与えてくれる点では優れた手法である。このため、循環資源と廃棄物を対象として、機器による化学分析手法とバイオアッセイ手法をバランスさせた効率的な計測・監視システの開発を目指す。

(4)液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

1)研究の概要

し尿や生活雑排水等の液状廃棄物に対して、膜分離活性汚泥法、浄化槽等のバイオエンジニアリングの活用、土壌・湿地等の生態系に工学を組み込んだ生態工学、いわゆるエコエンジニアリングの活用、および物理化学処理との適正な組み合わせにより、地域におけるエネルギー消費の低減および物質循環の効率化を図るため、開発途上国も視野に入れつつ、窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽、消毒等維持管理システムの開発、浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発、開発途上国の国情に適した浄化システム技術の開発、バイオ・エコエンジニアリングと物理化学処理を組み合わせた技術システムの開発、地域特性に応じた環境改善システムの最適整備手法の開発を行う。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

平成13年度:1)窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽、消毒等維持管理システムの開発、2)浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発、3)開発途上国の国情に適した浄化システム技術の開発、4)バイオ・エコエンジニアリングと物理化学処理を組み合わせた技術システムの開発、5)地域特性に応じた環境改善システムの最適整備手法の開発に関し、各要素技術について基盤的な検討を行うと共に面的整備に係るデータ収集を行う。
平成14年度:開発すべき各要素技術について基盤的な検討を継続し、実証化への問題点を抽出すると共に、面的整備に係るデータ収集を行う。
平成15年度:開発すべき各要素技術について実証化試験を開始すると共に面的整備の最適化における省コスト、省エネルギー効果を検証する。
平成16年度:開発すべき各要素技術の最適条件を明らかにすると共に、技術導入に係る制度および政策のあり方を検討する。
平成17年度:液状廃棄物に関する環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムを提示すると共に、面整備の最適化手法を行政施策のあり方を含めて提案する。

4)研究予算額

平成13年度 69百万円

5)研究実施の背景

21世紀の環境問題において最も優先されるべき課題の一つは、公共用水域の汚濁負荷の60%近くを占める生活系排水をはじめとする液状廃棄物により加速度的に悪化しつつある水環境の修復である。これは開発途上国においても共通する課題であるが、省エネ、省コスト、省維持管理を考慮した適正な対策技術の開発はなされてこなかったのが現状である。それ故、エネルギー消費の低減あるいは地域における物質循環の効率化を図る生物処理工学(バイオエンジニアリング)としての浄化槽等の活用手法と土壌、湿地等の生態系に工学の力を組み込んだ生態工学(エコエンジニアリング)手法の活用および物理化学処理との組み合わせの適正化が環境低負荷型技術開発を行う上で必要とされている。

6)評価結果の概要

水のリサイクル、水の処理コストを取り上げて研究すべきとの指摘を受けた。

7)対処方針

水のリサイクルについては、し尿、生活雑排水の処理等を基点とした水系のリサイクルも考慮に入れて研究を推進する。水の処理コストについては、バイオ・エコエンジニアリング等のシステム技術を用いた場合における適正な対費用効果の解析・評価を踏まえた処理コストのあり方を念頭において研究する。