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 重点特別研究プロジェクト及び政策対応型調査・研究への助言の年度評価(平成13年4月)
大気中微小粒子状物質(PM2.5)・デイーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価

  • 更新日:2001年10月4日

1)研究の概要

国際的に関心が高まっているDEP等を含むPM2.5を中心とした大気中粒子状物質の発生源特性や環境動態を明らかにし、発生源と環境濃度との関連性を把握する。これとともに大気中粒子状物質の一般住民への暴露量を推計し、さらに全国民の暴露量ランク別人口数の推計を行い、リスク評価に資するデータを蓄積する。また、影響評価に資するため、動物実験を中心とした毒性評価研究を行い知見を集積する。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

(1)実態に合った発生源特性と発生量の把握、および交通・物流システムの改善策とその効果の評価、(2)広域・都市・沿道における粒子状物質動態の把握、(3)測定方法の体系化とモニタリングシステムの提案、(4)GISを利用した地域別暴露量の推計と死亡率との関連性解析、(5)ディーゼル排気毒性の閾値推計、の研究を実施する。

平成13年度:研究課題を整理し研究目標を明確化する。これと共にシャシーダイナモシステム、炭素成分測定システムを完成させる。また予備的なフィールド観測を実施し、測定方法を比較評価する。影響評価関連では、GISシステムを用いた暴露量推計モデルの開発とデイーゼル排気が呼吸-循環器系におよぼす影響を明らかにする。

平成14〜16年度:シャシーダイナモシステムや車載型実走行時自動車排ガス計測・管理システム等を運用し、様々な条件下での実発生源特性を明らかにする。また、実フィールドにおける対策評価研究を実施する。影響評価研究としては、暴露量から健康リスクを推定し、疫学調査データとの関連性を検討する。またデイーゼル排気中の粒子成分が呼吸-循環器系におよぼす影響を健常及び病態モデル動物を用いて明らかにする。これらの研究を前年度までの研究成果を基に逐年毎に具体的な目標を定め順次実施する。

平成17年度:4年間の研究結果を総合的に取りまとめ、交・物流システムに係るPM2.5・DEP対策の効果を予測すると共に健康影響評価のための閾値の算定を行う。

4)研究予算額

平成13年度は50百万円/年(平成14年度は約100百万円/年の見込み)

5)研究実施の背景

健康影響が大きいPM2.5・DEPの発生実態や環境中での挙動を明らかにすることが求められているが、我が国における情報は極めて限られている。国立環境研究所では、PM2.5生成の原因物質として重要なVOC関連研究;『都市域におけるVOCの動態解明と大気環境質に及ぼす影響評価に関する研究』(特別研究)、『空中浮遊粒子(PM2.5)の心肺循環系に及ぼす障害作用機序の解明に関する実験的研究』(特別研究)を実施して来た。これらの研究成果を踏まえてPM2.5・DEPの研究が実施できる段階にある。

6)評価結果の概要

評価結果の概要は以下に集約される。

評価結果の概要は以下に集約される。(1)研究課題が網羅的、総花的であり、達成目標が抽象的である。研究の焦点が絞られていない。研究を重点化すべきである。(2)研究対象とする車種はどのように考えているか。低公害車のみならず大きいデイーゼルトラック等も対象にするのか。(3)アジア地域での関心も高く、国際的に広げて行くことを考えてほしい。

7)対処方針

(1)当初提案した5項目のサブテーマを1)PM2.5/DEPの発生源、測定法、環境動態把握研究と2)PM2.5/DEPの疫学・毒性評価研究の二つにまとめ実施する。発生源、測定法、環境動態把握研究としてはシャシーダイナモ実験システムの利用と炭素成分の分析システムの構築を目指す。この中で、自動車業界や燃料業界が対策を進めるに当たってのポイントとなるべきデータを提供すること、特に、これまでの定められた試験方法では把握できなかった新しい知見を示すことに焦点を絞る。疫学評価関連では、GISデータベースの上にDEPの分布を載せ、暴露評価に結びつける。毒性評価関連では、まず粒子およびガス状成分を含んだDE(デイーゼル排気)全体の呼吸-循環器系への影響等を明らかにし、研究後半期に粒子のみの暴露評価を検討する。(2)デイーゼル車のみならず、直噴型ガソリン車などのシャシーダイナモ実験や組成の異なる燃料に関しての実験・研究も、年度毎に課題を絞って順次実施する。(3)PM2.5はライフタイムが長いので広域的な理解が必要である。今回考えているモデルフレームはアジアスケールから都市スケールまでをカバーするものであり、この中で大陸との関係も明らかにする。大変に難しい試みではあるが、発生源把握や環境動態把握と疫学・毒性評価などの研究を結合させ、環境省や産官学民関連研究機関とも協力し、大気中微小粒子状物質(PM2.5)・デイーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価に関する実効ある研究成果の公表を目指したい。