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事前評価(平成12年4月)
長江・黄河流域における水循環変化による自然資源劣化の予測とその影響評価に関する国際共同研究

  • 更新日:2000年12月1日

1)研究の概要

長江・黄河流域を対象に、三峡ダム構築及び長江流域から黄河流域への大規模導水による人為的な流域の水・土壌環境変化を観測し、その流域生態系に及ぼす影響評価のための実態把握と統合モデル化により、自然資源保全を考慮した持続的環境管理手法の提案を行う。
具体的には、

  1. 衛星を用いた水文量及び生物生産量推定、
  2. 低平地での巨大洪水氾濫・土砂拡散現象、
  3. 三峡ダムによる治水及び長江中下流域水界生態系に及ぼす影響、
  4. 汚濁負荷変動が流域生態系に及ぼす影響評価、
  5. 自然資源劣化の影響予測と持続的発展のための流域管理、

に関する研究から構成される。

2)研究期間

平成13〜17年度(5年間)

3)研究計画

平成13年度は、水循環変化が流域生態系に及ぼす影響の実態把握のための現地調査を進めるとともに、流域地理情報のデータベース化を行い、水循環モデルの開発を進める。

平成14年度は、純一次生産量を規定する土壌水分量の時間・空間特性を水循環モデルに基づいて推定する手法を開発する。土壌水分量、土壌成分、有機物含有量、土壌塩分量、気温等の関数として表現される純一次生産量モデルを作成する。

平成15年度は、流域生態系の空間形成に大きな影響を持つ洪水氾濫流と土砂動態に関するモデル(水循環・土砂動態モデル)の開発を行う。

平成16年度は、森林伐採区域、農地等の土地利用別の水文・汚濁負荷流出の現状調査から流域内汚濁負荷動態のサブモデルの開発を行い、水循環・土砂動態モデル、純一次生産モデルとの統合化(流域圏統合モデル)を進める。

最終年度は、長江・黄河流域で進行する水資源開発による水循環変化が流域生態系に及ぼす影響を純一次生産量の変化として捉え、純一次生産量の持続及び水資源を保全するための具体的な科学技術及び政策提言を検討して研究を総括する。

4)研究実施の背景

2000年2月、第2回日中韓三カ国環境大臣会合が開催され、『環境保全上健全な水循環を確保し、発展の基礎としての水資源を確保し、効率的な水の利用を可能とする持続可能な水資源管理が地域的のみならず地球的な関心事項である』との認識が共同コミュニケの中に盛り込まれた。現在進行中の長江から黄河流域に及ぶ地球規模での水循環を人為的に変化させる計画は、水資源開発という有益面だけでなく、中長期的に中国の自然環境ひいては生産・社会構造を変貌させ、その影響が我が国の気圏、水圏、人間圏にも及ぶことが危惧され、東アジアの環境保全の観点から、その影響評価及び対策・管理手法の確立が必要とされている。

5)評価結果の概要

中国の人為的な水循環の大変革期における広域環境モニタリングと、それに基づき開発する数理モデルによる影響評価研究として全般的に高い評価を受けた。

一方、モデルによる自然資源の劣化予測とその影響評価に当たっての具体的な評価基準を明確にし、研究成果が長江・黄河の流域管理に有効に活用されるよう、科学技術、政策提言の両面において一層の検討が必要との指摘を受けた。

6)対処方針

研究計画全体としては高い評価が得られたことから、指摘された内容を踏まえ、基本的に当初計画に従って実施する。環境影響評価にあたっては流域生態系機能の健全性を示す最も重要な指標とされる純一次生産量の持続性を基準として設定する。このためそれぞれの植生に対する純一次生産量を規定する環境要因の中でも特に重要な土壌水分量、土壌中の栄養塩・有機物・塩分含有量、気温等との関係を明らかにする。

一方、本研究を遂行するために既に中国国家環境保護総局、中国科学院及び中国水利部長江水利委員会と本研究所間で共同研究体制を確立しており、各機関を通じて科学技術的知見が移転され、さらに、日中の政府間会合、APN会合等における政策提言などにこれらの成果が活用されるよう研究に取り組む。