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事前評価(平成12年4月)
湖沼における有機炭素の物質収支及び機能・影響の評価に関する研究

  • 更新日:2000年12月1日

1)研究の概要

有機炭素(TOC)を指標として湖(霞ヶ浦)における有機物収支を把握するマクロ的視点と湖水の溶存有機物(DOM)の特性・機能、湖沼微生物群集構造を評価するミクロ的視点の両面より、湖水DOMの特性・起源、湖沼生態系への機能・影響に関する科学的知見を集積し、湖沼において漸増している難分解性DOMの主要発生源をTOC等の物質収支により定量的に明らかにする。湖沼での有機物収支を加算性のあるTOC等により実施する湖沼環境管理の枠組みの構築とともに、難分解性DOMの特性や主要発生源及び湖水DOMのらん藻類の増殖や種組成に及ぼす影響の把握を目指す。

2)研究期間

平成13〜15年度(3年間)

3)研究計画

平成13年度は、湖沼流域における有機炭素ベースの汚濁負荷原単位を求める。同時に流域発生源モデルと湖内モデルの構築に着手する。DOMの特性・機能の評価に関しては、生物利用性を考慮した藻類増殖試験法等の開発、湖沼底泥間隙水中のDOM及び栄養塩等の季節変化の把握、DOMの物理化学的特性(13C/12C比、分子量分布、3次元蛍光特性等)の把握を目指す。平成14年度は、前年度の課題を継続するとともに、湖沼流域でのフィールドデータを取得し、藻類由来DOMの特性評価及び遺伝子工学手法による微生物群集構造の解析を行う。平成15年度は、前年度までに得られた知見及びデータを集積し、実測データとモデル計算値の比較から、湖水中の難分解性DOMの主要発生源を定量的に把握する。同時に、DOMの物理化学的特性に関するデータから、DOMの特性・起源や湖沼生態系に及ぼす影響を総合的に評価する。

4)研究実施の背景

各種流域発生源対策が進んでいるにもかかわらず、湖沼の環境基準達成率は現在約40%にすぎず、その水質は改善されるどころか悪化の傾向すらある。また、琵琶湖で注目された湖水中の難分解性DOM濃度の漸増現象は、その後、十和田湖、霞ヶ浦、印旛沼と遍在的な広がりを見せ、湖沼でのDOM濃度の上昇は、植物プランクトンの増殖・種組成変化を含む湖沼生態系の変化、水道水源水としての湖沼水の健康リスク(発がん物質トリハロメタン)上昇等、湖沼環境に甚大な影響を及ぼすことが危惧されている。

5)評価結果の概要

湖沼環境管理のために、従来の過マンガン酸COD(CODMn)とは異なり、加算性のあるTOCや溶存有機炭素(DOC)を指標として物質収支を図る試みは重要であるとの評価を受けた。一方、DOMの特性・機能及び影響の評価に関する個々のサブテーマの意義は十分認められるものの、分子生物学的手法による微生物群集構造の解析は必要か、可能か、DOMとCODMnとの関係を整理しつつ、DOMとCODMn等を組み合わせた総合的リスク評価を実施すべき、政策提言等を通じて研究成果の意味づけを明確にすべきなどとの指摘を受けた。

6)対処方針

微生物群集構造の解析は、新しい手法によるもので実験にはかなりの困難を伴うものと予測されるが、湖沼で優占するらん藻類の種・増殖状態の把握に必須であり、また藻類由来DOM量は藻類の増殖状態に依存しDOMの物質収支を考察する上で重要であるため、計画通り実施する。DOMとCOD等による総合リスク評価やDOMに対する対策及び改善手法の検討に関しては、指摘事項に十分留意して研究を進展させ、再現性のあるデータの取得・解析により、難分解性DOMの生成プロセスと底泥の関係等、基本的な現象の理解を深めた後の検討課題とする。