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事前評価(平成12年4月)
都市域におけるPM2.5を中心としたSPM(大気浮遊粒子状物質)の動態解明に関する研究

  • 更新日:2000年12月1日

1)研究の概要

都市域におけるSPMによる大気汚染対策に資するよう、リアルワールドでのSPM発生源特性を把握し、SPMによる大気汚染の動態を明らかにするとともに、SPM対策シナリオの策定に資するため、各種予測モデルの精度を高めつつ、都市を中心とした地域における、SPM発生源・環境動態把握及びSPMの予測評価に関する調査・研究を行う。

2)研究期間

平成13〜15年度(3年間)

3)研究計画

平成13年度では、自動車起源のSPM発生量推定のため、SPMの人為・自然発生源に関する調査を行い、都市域におけるSPMの流入量と発生量を把握するとともに、都市SPMの組成・粒径分布の実態把握に関する研究を行う。広域にわたるSPM動態把握のため、VOC研究で開発したモデルを用いて、サルフェート、ナイトレート、無機炭素成分、有機炭素成分の広域・都市域の予測評価を行う。平成14年度では、自動車起源のSPMに関してはDEP(Diesel Exhaust Particles)のEF(Emission Factor)を把握する為のトンネル調査を行うとともに、SPM測定システムを検討し、これにより都市及び周辺地域において通年測定を行う。沿道モデルによるDEPの予測等から沿道SPM曝露量評価の検討を行う。平成15年度では、都市域及び沿道のSPM予測入力情報を確定するとともに、航空機等を用いた集中観測結果を解析しSPMの立体的な環境動態を把握する。数値モデル・風洞モデルの予測等からSPMの対策シナリオに関する検討を行う。

4)研究実施の背景

最近の裁判でも自動車によるSPM汚染と健康影響との因果関係が指摘されているが、SPMの環境濃度は依然改善されていない。SPMの主要構成物であるサルフェート、ナイトレート、無機炭素成分、有機炭素成分の濃度や構成割合は地域や季節で大きく異なり、また窒素酸化物やVOCを含む複雑な光化学反応も関与する為、発生源と環境濃度との因果関係の把握が困難であることなどから、SPMに関する研究は進んでいない。当研究所においては過去20年間に亘り光化学大気汚染の現象解明とモデル評価の研究に取り組み、最近ではVOC研究(平成10年〜12年)によりガス状物質に関してほぼ全研究を終了し、これらの知見を土台にSPM問題への取組みを開始する。

5)評価結果の概要

SPM研究への取組の遅れについて指摘を受けながらも、政策的にも重要な課題であり、実際の大気環境における総合的研究として期待を受けた。一方、PM1.0研究、疫学も含めた健康影響研究の検討や、新しいエンジン技術への対応や政策への反映の観点から関係業界や行政との情報交換・連携の必要性についも指摘を受けた。また、沿道、都市、広域の各スケール間でのインターフェイスの重要性とともに、都市空間の不均質性、モニタリング手法の不完全性、広域スケールに用いる予測モデルCMAQの限界にも留意するよう指摘を受けた。

6)対処方針

我が国におけるSPM研究の遅れを取り戻すべく、所内の健康影響研究を含む研究グループにおいて行政等とも連携・協力して調査・研究を進めるとともに、学会などを通じて幅広い情報共有に努める。PM1.0も含め調査研究を行う予定であり、多くの指摘された内容を踏まえ、それぞれのスケールでのモニタリング結果を基にモデルインターフェースを構築する。また、現在も一部開発途上の米国EPAのModels3/CMAQモデルの独自検証も行いつつ、他の数値モデルや室内実験の併用により予測評価等を行う。