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事後評価(平成12年4月)
自然利用強化型適正水質改善技術の共同開発に関する研究

  • 更新日:2000年12月1日

1)研究の概要

水質汚濁の深刻なタイ王国において、気候、経済、エネルギー事情等の国情を踏まえ、汚濁水域の直接浄化を主な目的に、有用生物の活用により自然の浄化能力を強化・効率化した水環境改善技術の開発研究を行った。
具体的には

  1. 汚濁水域における汚濁物質の質・量の調査、
  2. 直接浄化機能の高い有用生物の検索と培養、
  3. 低濃度汚濁水域の直接浄化手法の開発、
  4. 高濃度汚濁排水の直接処理手法の開発、
  5. 直接浄化・処理システムから発生するバイオマスの資源化・リサイクル、
  6. 汚濁水域の水質改善効果の評価、

に関する研究を実施した。

2)研究期間

平成6〜10年度(5年間)

3)研究成果

人口が密集するバンコクの水路では水質汚濁が進行し、汚濁負荷として生活排水の占める割合の高さ、大腸菌の検出などの衛生上の問題点や、飲料水源として重要な湖沼・貯水池の多くで富栄養化の進行と青酸カリより強力な毒素であるミクロキスチンを含有するアオコの異常増殖を確認した。

また、ヨシやガマなどの水生植物を植栽した人工湿地は、高度で安定した浄化能力を有するが、これら水生植物の定期的な除去が必要であるため、食物源としてリサイクル可能な水耕植物の導入の必要性が明らかになった。

さらに、現地の排水処理施設等から分離した微小動物の浄化能力は、温度の影響を受けやすく、高温域で活性が高まることや、このような特性を考慮した排水処理施設の開発と同時に運転管理の適正化が極めて重要であること、また、合併浄化槽の場合、我が国の構造基準に定められた槽容積の60%程度で対応可能であることが解った。

また、食品工場の排水処理において、グッピーなどの魚類を細菌、菌類、原生動物等の高次捕食者として導入することにより余剰汚泥が減少すること、ナマズ等食用可能な魚類を導入した資源回収型の排水処理システムの開発が必要であることが明らかになった。

4)研究予算額

  • 総額約100,000,000円

5)研究実施の背景

アジアの開発途上国では経済発展及び人口増大に伴い、生活系や産業系排水の水域への未処理放流が増加し、水質汚濁問題が深刻化している。また、排水に由来する窒素、リンの流入により湖沼、内湾等の閉鎖性水域では富栄養化が進行し、藻類の異常増殖による漁業被害、上水の取水障害等の事態も生じている。しかし、我が国の下水道システムの整備と維持管理には多大な費用を必要とし、高度な処理能力を発揮するためには、熟練した技術者による維持管理、エアレーション等に必要な安定した電力供給が前提となっており、開発途上国にそのまま適用することは現実的ではない。このため、開発途上国における生活排水等の処理方法として、多大な施設、エネルギー消費と厳格な維持管理が伴わない、自然の浄化能力を強化・効率化した水処理技術の開発が求められている。

6)評価結果の概要

開発途上国との共同研究、実証的研究として有益な成果が得られていると全体として高い評価を受けた。また、実規模での適用も試みられており、我が国の開発途上国への技術協力専門家や開発途上国の技術者及び研究者にとって有益なガイドブックになり得ると評価された。また、費用対効果の分析、メンテナンスの簡便性及び有害物質の生物濃縮も考慮に入れた食物源としての安全性や、人材交流などによる連携協力体制の強化など、さらに実用化に向けた検討を行うべきとの指摘を受けた。また、開発途上国の地域開発モデルとしてODA等で活用可能なレベルに仕上げていく必要性も強く指摘された。

7)対処方針

平成12年2月の日中韓三カ国環境大臣会合で合意された水質改善プロジェクトを具体化するため、浄化槽、水生植物浄化等の技術開発の核となる本年度竣工予定の「バイオ・エコエンジニアリング研究施設」を活用し、さらに、平成13年度より開始予定の中国太湖の水環境修復に関するJICAプロジェクト方式技術協力等と密接な連携を図りつつ、指摘された内容を踏まえ、基盤的研究、実証的研究を推進する。