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事後評価(平成12年4月)
輸送・循環システムに係る環境負荷の定量化と環境影響の総合評価手法に関する研究

  • 更新日:2000年12月1日

1)研究の概要

今日の社会を特徴づける「人やモノの流れ」を支える技術である自動車交通等の輸送システム及び廃棄物処理・リサイクル等の循環システムを対象とした具体的な事例研究を交えて、環境負荷を体系的に定量化する手法及びこれによる環境影響を総合的に評価する手法の開発を行った。その成果は、製品や技術システムについて、原料採取から生産、使用、廃棄に至る一連の過程における環境への影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)のほか、環境政策における意思決定を支援するための手法としての利用が期待される。

2)研究期間

平成8〜10年度(3年間)

3)研究成果

比較リスク評価手法(米国環境保護庁が開発した、科学的・定量的なリスク評価に価値判断を加味して問題の重要度のランク付けを行う方法)を参考にしたワークショップ形式の討議・投票が、

  1. 優先度の高い環境問題の抽出、
  2. 異なる環境問題カテゴリー間の重みの設定、
  3. 環境評価プロセスへの多様な主体の「参加の手法」

の3つの側面において有効であることを実証した。

発生源と人口分布を考慮に入れて汚染物質の排出量から影響の大きさを推定する実用的な手法として、地理情報を活用した総合的な情報システム及び簡易暴露評価モデルの2種類を構築した。

産出国から日本への資源輸送に伴うNOxやSOxの排出を定量化し、ライフサイクルに占める寄与を明らかにした。

自動車の生産、使用段階でのインベントリー分析の結果、CO2では走行時の排ガスが大半を占めるが、他の汚染物質では排ガス以外に寄与の大きいプロセスがあることが見出された。また、ガソリン車、ディーゼル車、電気自動車の間で、影響項目にどのようなトレードオフ(ある側面ではAがBに優るが、別の側面ではBがAに優るという関係)が生じるかを明らかにした。

ライフサイクルCO2、NOxの比較により、路面電車が自動車よりも有利となる条件を明らかにした。

飲料容器のマテリアルフローの実態調査から「リサイクル率」は定義によってかなり異なることを明らかにした。また、飲料容器のリサイクル促進による環境負荷低減の効果は、容器の材質によってかなり異なるが、エネルギーや汚染物質の削減効果よりも大量生産・消費・廃棄の改善という面での効果が大きいことを明らかにした。

自動車バンパのリサイクルの事例研究では、カスケード方式(他の自動車部品の材料として利用)がバンパtoバンパ方式(バンパ材料として再利用)よりも効果が大きいことを明らかにした。

4)研究予算額

  • 総額約96,000,000円

5)研究実施の背景

環境基本法や環境基本計画において、「環境への負荷」の低減は環境政策の根幹であり、具体的な施策立案にあたって、環境への負荷発生の実態を具体的に明らかにし、これらがどのような影響を与えるかを総合的に評価する手法を整備することが急務であった。また、製品や技術システムについて、原料採取から生産、使用、廃棄に至る一連の過程における環境への影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)手法が、内外で関心を集め、一部の代表的な環境負荷に関する情報整備は進んできたが、負荷の「総合的」な評価をどのような方法で行うかについては、今後の研究に待つべきところが大きかった。

6)評価結果の概要

環境負荷の配分問題や輸送・循環分野のケーススタディなどLCAの技術的側面の研究だけでなく、総合評価への市民参加の試みをはじめ環境政策に直接結びつく研究に取り組み、幅広い成果を得たことについて、高い評価を受けた。本研究は環境政策の支援ツール開発の先導的・萌芽的研究との性格をもち、今後の展開が重要であること、また、本研究自身の成果をどのような場面で環境政策に活かすかをより明確にすることが重要との指摘を受けた。個々の分野、手法開発にとどまることなく、代替的輸送システムのような、社会全体の中での「システム」としての評価にさらなる工夫が望まれること、より多くの評価対象について研究展開が望まれること、さらに環境影響、リスクといった負の側面だけでなく、ベネフィットの面にも目を向け、さらに広い意味での「総合」評価への発展も期待したいとの指摘を受けた。

一方、定量的リスク評価との結合、地域性の高い問題をLCAで扱う場合の問題点など、影響の総合評価手法としてさらに改善を要する部分が残されているとの指摘を受けた。

7)対処方針

現在実施中及び今後実施するリスク評価のための情報システム構築、輸送・循環分野の対策立案・評価手法などの関連分野の研究において、指摘された課題の改善に取り組むとともに、具体的な活用場面を明らかにしながら、環境政策の支援ツールの開発に引き続き取り組んでいく。