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事前評価(平成11年5月)
中国における都市大気汚染による健康影響と予防対策に関する国際共同研究

  • 更新日:1999年11月19日

1)研究の概要

大気汚染の著しい貴陽市及び大連市と、比較対照として大気汚染の軽度な南京市の三大都市を対象に、都市大気汚染による住民の健康影響を調査研究し、予防対策に関する科学的基礎を確立する。このため、大気汚染の実態の把握、専門医による住民健康診断、自覚症状や栄養摂取量に関する疫学調査、肺機能や免疫・アレルギー疾患の調査を実施し、都市住民の疾病発生と大気汚染の関連について解明し、予防医学的対策を提示する。
具体的には以下の調査研究を実施する。

  1. 都市大気汚染による住民の曝露実態の把握に関する研究:
    大気汚染と住民の曝露実態を測定し、大気汚染の状況と個人曝露との相互関係を明らかにする。
  2. 大気汚染による健康障害に関する総合的影響の調査研究:
    日中共同の症状調査票を用いた住民健康診断と疫学調査を実施し、健康、疾病と大気汚染との関係を研究する。
  3. 大気汚染による肺機能障害に関する調査研究:
    肺機能検査装置を用いて、呼吸機能と大気汚染との関連について解析する。
  4. 都市大気汚染による免疫毒性等毒性発現に関する研究:
    住民の免疫機能やアレルギー疾患に対する大気汚染の影響について解析し、大気汚染の免疫毒性影響について解明する。
  5. 中国の都市大気汚染による健康影響の評価と低減化策に関する研究:
    中国の都市大気汚染と住民の健康、肺機能、免疫・アレルギー疾患への影響を総合的に評価し、汚染低減化と健康影響予防の関連について明らかにする。

2)研究期間

平成12〜16年度(5年間)

3)研究計画

本研究は、国立環境研究所と中国予防医学科学院の間で、日中環境保護協力協定に基づくプロジェクトとして取り組んでいる国際共同研究である。貴陽市と大連市については平成12、13年度に第一次重点調査を実施する。汚染の軽度な南京市を対照都市として、平成14年度に重点調査を実施する。これらの結果を踏まえ、平成15、16年度に貴陽市と大連市について第二次重点調査を実施する。大気汚染対策の進行に伴う貴陽市と大連市の大気汚染影響の推移を経年的に明らかにし、汚染低減化による健康影響の予防に関する科学的基礎を確立する。

4)研究予算額

  • 30,000,000円/年(予定額)

5)研究実施の背景

近代化を進めている中国においては、エネルギーの79%を石炭に依存しているため、都市大気汚染は著しく、住民の健康影響が顕在化している。平成11年日中両国政府は、貴陽市、大連市、重慶市の三大都市の環境改善を日中協力プロジェクトとして取り組むことに合意した。このモデル都市として、今後、大気汚染対策が進む予定の貴陽市と大連市において、大気汚染による健康影響を予測し、汚染対策が健康改善にどのように反映するか明らかにすることが期待されている。本研究所では日中環境保護協力協定に基づき、日中共同研究として取り組む体制が整っている。

6)評価結果の概要

調査対象の各都市の特性を十分把握するためには、継続的な調査の実施と、汚染地区に対し汚染が少ない対照地区との比較検討が必要との指摘を受けた。

7)対処方針

年度毎に対象都市を絞って調査を行うこととしていたが、指摘された内容を踏まえ、住民の曝露実態等については経年調査とし、貴陽市及び大連市における大気汚染対策の効果を的確に把握するため、汚染対策の前後に実施する重点調査と区分した。また、大気汚染の程度による健康影響の比較検討を適正化する観点から、当初予定されていた重度汚染の大原市に代え、軽度汚染の南京市に対象地区を変更した。