事前評価(平成11年5月)
バイオ・エコエンジニアリングを活用した富栄養化抑制型適正水環境改善技術の共同開発に関する研究
- 更新日:1999年11月19日
1)研究の概要
タイ王国、中国を対象に、気候、経済、エネルギー事情等の国情を踏まえ、水環境改善に有用な生物の機能を最大限活用し、生活系排水等の小規模分散型生物処理システムとしてのバイオエンジニアリングと、自然生態系に工学技術を導入した浄化システムとしてのエコエンジニアリングによる循環共生型の社会システム構築を目指す。
具体的には、
- 水質浄化又は有毒藻類等の分解をする微小動物の特性解析と活用手法の開発に関する研究、
- 有用微生物による湖沼の底質改善・ヘドロ資源化への活用手法の開発に関する研究、
- 再資源化可能な水耕栽培植物の探索と効果的導入手法の開発に関する研究、
- 水生植物と水耕栽培植物の最適な組合せによる高度浄化システムの開発に関する研究、
- 高度簡易分散型生活系排水・汚泥処理システムの技術開発に関する研究及び
- 汚濁水域の高度簡易浄化システムの効果的導入手法の開発と改善効果の評価解析に関する研究
を行う。
2)研究期間
平成12〜16年度(5年間)
3)研究計画
平成12年度は、水質汚濁負荷の現状把握及びリサイクル可能な有用生物の探索を行いつつ、現地の排水処理システムの機能等を調査する。
平成13年度は、探索した有用生物について、汚濁物質の分解能力の把握及び水温等の環境条件の違いによる生育の特性の把握と処理システムへの活用手法を検討し、平成14年度は、有用生物の機能を最大限活用する処理システムの設計及び既存施設の改善手法を検討する。
平成15年度は、現地での実証試験に基づく最適な運転管理手法の検討とこれらシステムの普及のための社会条件等の基盤的な情報収集を行う。
最終年度は現地での最適な運転管理のための設計及び運転管理指針の確立を図るとともに、普及、汎用化、面的整備を進めるための行政施策へ反映されるような提案を行い、研究を総括する。
4)研究予算額
- 40,000,000円/年(予定額)
5)研究実施の背景
開発途上国では経済の急激な発展と人口の急増で生活・産業系排水等に由来する水環境の汚染が深刻な状況にある。さらに、有毒アオコの異常増殖により水資源の安全性の確保すら困難な状況が現れ、特に窒素、リンに的を絞った発生源対策と直接浄化対策が求められている。
一方、これら地域のインフラや電力等の事情から先進国の集約型排水処理システムの導入は合理的でない。このため、本研究では、開発途上国の国情を踏まえたバイオエンジニアリング及びエコエンジニアリングの開発並びに両者を有機的に連結した効率的なシステム開発を行うものである。
6)評価結果の概要
開発途上国に限らず、21世紀において人類最大の課題との指摘もある水問題を解決するための指針となる可能性と、国情に応じた地域開発型研究として、アジア全域での水環境改善のあるべき姿を提案しつつ、低コストで開発途上国に定着しうる技術の普及を図るというコンセプトを有しているなどとして、全般的に高い評価を受けた。
また、相手国カウンターパートとの協力関係の強化、処理システムについて技術的にグレードを分けつつ、費用対効果を含めた評価の実施、ODAへの展開も視野に入れた研究の進行など、研究内容の充実とともに、汎用性を有する水環境改善技術の原型作りなどを通じた政策への貢献、国内の湖沼対策へのフィードバックなど、研究成果の活用のあり方について指摘を受けた。
7)対処方針
全般的に高い評価が得られたことから、指摘された内容を踏まえ、基本的に当初計画に従って実施する。
また、真に開発途上国で必要とされる普及可能なシステムの開発と、内外の水環境問題の解決に貢献できることを重要な目標の一つとして、今後とも人的交流を積極的に進め、JICA等のプロジェクトとの連携も積極的に模索しつつ、より一層の研究協力体制の強化・効率化を図る。また、現地のローカルマテリアルの活用等、可能な限り低コストなシステムの構築を目指し、地域住民への啓発に係る研究や技術グレード、費用対効果を含めた評価を行いつつ、開発途上国における水環境改善技術の指針を目指した取りまとめを行う。